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おにいちゃんはおとうとたちをまもりたい(ルーカス視点)



「ルーカス王太子殿下、少しだけお時間頂いてもよろしいでしょうか?」


 魔法の簡単な説明と実技を終え、離宮の門でテッドに挨拶をしようとしたところでフリッドが僕に声をかけて来た。

 恐らくテッドの教師や護衛の件だろうな。


「分かった。ジーク、すまないがベルトと先に戻っててくれるかい?」

「うん、分かった。じゃぁね、テッド」

「またね、ジーク!兄上もありがとうございました」


 弟達は手を振ってそれぞれ王宮と離宮へ戻っていく。

 ここで「いっしょに聞いてちゃダメなの?」とか、「まってる!」とか言わないのがすごい。フリッドが声をかけた時点で2人とも「あ、これ大人の話だ」と察していたようだ。

 5歳児がここまで空気読めるって本当にすごくない?

 僕の弟達は天才かな。



「--ふ、ふふ・・・」



 そんな風に考えていたら弟達が見えなくなった辺りで誰かが笑い出した。

 いや、『誰か』、は語弊だね。



「「「あははははははははは!!!」」」



 ここに居る3人、全員だ。



「驚いた!本当驚いた!!何あれソフィア様そっくりじゃないか!!」

「いやぁ全くだ、ソフィア先生の授業を聞いているかのようだったぜ」

「今までもたまに幼い頃のお嬢様を見ているようだと思うことはありましたが、まさかここまでとは!」

「あぁもう、泣きたいような笑いたいような・・・、ふふっ。ねぇ僕変な顔してなかったかい?」

「久しぶりに年相応の顔をしてたぞ」

「えー、困ったなぁ。弟達の前ではカッコいいお兄ちゃんでいたいのにぃ」


 カールは騎士団で行われた授業を。

 フリッドはソフィア様の生家でまだ執事見習いだった頃を。

 そして僕は、育児を完全に放棄した両親の代わりに育ててくれた時を。



 懐かしい、本当に懐かしい。

 きっと今頃ベルトも思い出し笑いで変な顔をしててジークに笑われてるに違いない。(ほっといてくださいよ!!byベルト)



「いやぁ〜〜笑った笑った。さてフリッド、君の話はテッドの教師と護衛の件だろう?あとで僕の使っていた教科書類をこちらに運ばせるからテッドに渡してあげて。ソフィア様のメモ付きだ、下手な教師が付けられるより良いだろう。護衛も何とかして手を回すから少し待ってて」

「なんと、それはありがたい!!」

「でも良いのかルーカス?あの本達はソフィア様との思い出の品じゃないか・・・」

「僕は既にたくさんの思い出をもらってるから。本来ならテッドが持つべき思い出を、ね」

「王太子殿下・・・」

「やめてよ、テッドにまともな教師や護衛をつけてあげられない時点で、王太子なんてまだまだ名ばかりさ。3年後の国内外の重鎮が集まる任命式の後じゃなきゃ内政にも殆ど口出し出来ないみたいだしね」


 あぁ本当に腹立たしい。

 ソフィア様の功績に胡座をかいた無能どもが。今すぐ追い出してしまいたい!!


「おーい、思考がダダ漏れだぞルーカス。まぁ気持ちは分かるがな。でもまだ色々準備が足りねぇ、今は我慢だ」

「分かってるよ。だからこそ出来る事からやっていかないとね。その為にも・・・再来月に僕が開く茶会にテッドも招待するから礼儀作法を教えといてくれる?」

「おぉ!ついにオルステッド殿下をお披露目か!」

「ですが、陛下のお許しがありませんぞ。大丈夫でしょうか?」

「ジークも呼ぶし、僕個人が開く茶会なんて父上達も招待客まで把握してないよ。それに小規模なものだ、もしバレてもお披露目なんかには遠く及ばないから問題ないさ。・・・本当は盛大に誕生日パーティーだってしてあげたかったのにっ!あぁもぉ腹立たしい!!」

「オルステッド様は、お気持ちだけで十分だと言われましょう」

「そうだろうね、優しい子だから・・・。でも、だからこそあの子の有用性がバレた時に危険だ」


 現在、王宮は『国王派』と『前王妃(ソフィア)派』、そしてどちらにもつかない『中立派』の3つに別れている。

 前王妃派は身分が低い若者が多いが、ソフィア様が見い出して育てた教え子達ばかりだから優秀揃い。彼らが居るおかげでこの国は保たれていると言っても過言じゃない。

 上層部は汚職で腐りまくっているからね。


 そんな中で前王妃派が大した反発もせず、今の現状を受け入れてくれているのは前王妃派の筆頭が『僕』だと分かっているからだ。


 これは国王派にはまだバレていない。

 そしてこのまま順当にいけば、僕が王になった時に両親と汚職まみれの連中をまとめて排除出来る。


 けど、懸念が一つ。



 『ジークムンド』と『オルステッド』の存在だ。



 ジークはどうにか中立の公爵家の令嬢との婚約を勧める事が出来た。

 だがここでオルステッドが国王派の家の婚約者をあてがわれてしまったら?容姿も知性もソフィア様そっくりのオルステッドが国王派に付けば、前王妃派は強く出られない。

 そうなれば中立の公爵が国王派に乗り換える可能性が出てくる。


 僕からすれば、そんなのは可愛い弟達を人質に取られた様なものだ。


 最悪、国王派の人間を全く排除出来ず、こちらが傀儡となっている現状が続く未来しか無くなる。


「・・・くくく、そうはさせるか。まだ僕らが幼いからと向こうが侮っているこの隙に、こちらの基盤を磐石なモノに!付け入る隙などない状態で全員放り出してくれるわ!!」

「わぁルーカス顔怖っ。15歳がしていい顔じゃないって」

「オルステッド様やジークムンド殿下が見たら泣き出しそうですなぁ」

「2人には絶対見せないもーん」



 そう、僕は絶対にジークムンドとオルステッドをドロドロした政治に巻き込ませない。


 2人が成人する前に膿は全て排除して、なりたいものになれるように、好きなところに好きな時に行けるように。

 ソフィア様が見られなかった世界を、得られなかった自由を彼らに!!






ここまで読んでくださってありがとうございます。

ブラコンお兄ちゃん書くの楽しいです♫


誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。


少しでも面白いと思っていただけたら↓から評価、感想コメントなどをいただけると嬉しいです。

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