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素晴らしきかな円形様!!



「さぁ、この水晶玉を力を込めるようにギュッと握りしめてごらん。そうすれば自分の魔法がどの属性か分かるからね」


 ルーカス兄上がそう言って俺とジークの手のひらに一つずつ水晶玉を置く。キラキラと太陽の光を反射するそれを俺はただ黙って見つめた。


「わわっ!?光った!!光ったよ兄上!!」

「ふふふ、落ち着いてジーク。水晶玉が君の魔力に反応したんだよ。ほら、水晶玉を見てごらん」

「わぁ・・・すごい、真っ赤な火です!ぐるぐるの渦をまいてる!!」

「ほぉこれは素晴らしい。ジークムンド殿下は炎と風の使い手のようですな」

「すごいじゃないかジーク、しかも風は僕とお揃いだよ」

「えへへ、やった〜っ!!」

「テッドはどうだった?・・・テッド?」

「オルステッド様?」


 みんなが声をかけてくるけど俺はそれどころじゃない。


 無色透明、どこにも欠けも歪みもない見事な球体。


 なんて、なんて美しい!!



 あぁ光の屈折がいい!景色が逆さまに映ってる!!綺麗な球体ならではの神秘だよなぁ!

 あ、これだけ綺麗な球体が作れるならレンズの微妙な凹凸もいけるよね!てことは望遠鏡とか顕微鏡もきっとあるはず!今は無理でもいつかお金を稼げたら買いたい!!無いなら作りたい!!その為にもやっぱりお金を稼ぐ手段をかんが


「テッド!テッドってば!!」

「ほわっ!?」

「やっとこっち向いた!何してんの?魔法分かった?」

「あ、あはは、ごめん。すごくキレイな球体だったから・・・つい遊んじゃった」


 しまった、久々の美しい円形様にすっかり魅入っちゃった。魔法属性を調べるはずだったのに何してんだか。


「あぁ、そういえばオルステッド様は円形がお好きでしたね。朝食のスープも丸いお野菜に喜んでおりましたし。あとバスルームの壁も丸い形のモザイクタイルなのですが、いつも眺めてらっしゃるとか。サリナがその所為で湯船から出てくれないと嘆いておりましたよ」

「あわわっごめん!!」


 風呂場のモザイクタイルは緑から青、青から紫へとグラデーションになった大輪の花が描かれてて、これがまた綺麗なんだよ。点描画を丸いタイルで表現してるんだが、場所によってタイルの丸の大きさが違ってるから本当に見てて飽きなくて・・・それで何回かのぼせてるんだよな、気をつけよ。


「ふふふ、そうかそうか。テッドはそんなに丸が好きなんだね、知らなかったよ。ちなみにどうして丸が好きなんだい?」


 兄上聞いちゃう!?それ聞いちゃってくれる!!?


「それはもちろんこの形が数多の意味で美しいからです!!円形は機能美の結晶なんですよ!!馬車の車輪も水車も粉挽きも!全部丸いですよね!あれは最も摩擦や抵抗が少なく、小さな力でも物を動かす事が出来る最高の形だからなんです!!例えば樽が丸いのも、中に物を入れて重くなっても少ない人数で転がして運ぶ事が出来るからなんです!同じ重さの木箱を運ぼうとしたら摩擦の所為で樽を運ぶ時の倍以上の力が必要になるんですよ!!あと果物も丸い形が多いですよね!あれもちゃんと理由があって中の水分を保ったまま大きくなるには球体の形が1番良いからなんです!別の形だとどこかに水分が集中してしまって破裂しかねない!中からかかる圧力を綺麗に分散して形を保つのは球体が1番適しているんです!だから水分の多い果物は特に丸い形の物が多いんですよ!!桶とかヤカンとか水を入れる物に丸が多いのも似たような理由からなんです!丸くした方が少ない材料で大きな容量を稼ぐことができて、しかも丈夫になるですよ!すごいですよね!!他にも球体にはすごい・・・っ!!?」



「「「「・・・・・・・・」」」」



 ルーカス兄上が、ジークが、フリッドが、ちょっと離れた所で給仕をしていたメリーが、兄上の護衛騎士のカールとベルトが、ぽかー〜んと目と口を開いて俺を凝視している。



 や、やらかした〜ーーーーっ!!


 普通5歳児がこんな円形についてマシンガントークしないよ、本当にやらかした!!どアホか俺は!!

 久々の美しい球体に加えて兄上に『丸のどこが好き?』なんて聞かれちゃったから子どもらしくいなきゃって思いが完全に頭からすっぽ抜けた!!


「テッド・・・君は・・・」

「っ!!?」


 どうしようどうしようどうしよう!!絶対変な子どもだって思われたよな?!気味が悪いって言われちゃうか?



「なんてソフィア様にそっくりなんだ」



 ーーはぃ?



「本当に、左様でございますね。利発な方だと思っておりましたが、まさかここまでとは・・・。ソフィアお嬢様を見ているかの様でございます」


 胸元からハンカチを出して目頭を押さえるフリッド。よく見ればメリーも、まさかのカールとベルトまで同じように目頭を押さえたり後ろ向いて背中を震わせてたりしている。おい、主人から目を離して良いのか護衛だろ!


 みんなの様子に訳が分からず、今度は俺の方がぽかー〜ん、だ。

 あ、ジークもか。


「あぁ、ごめんね2人とも・・・。実はここに居る者達はね、みんなテッドの母上であるソフィア様の教え子なんだよ」


 教え子って、つまり生徒ってこと?え、俺の母さん先生なの?王妃様じゃなかったっけ、どういう事?


「オルステッド殿下、ソフィア様はクワンドゥルス王国史上初の女性での王立学園首席卒業生で、更に隣国の大学に留学してそこでも首席になられたという才女なのですわ!」

「特に語学と他国の歴史に精通しておりまして、我ら騎士にも授業をしてくださっていたのです。他国の知識は必ず力になるから、と」

「ただ歴史の話となると、先ほどのオルステッド殿下の様にお言葉が止まらなくなっていましたね。本当に懐かしいです」


 俺の困惑した表情を見てメリーだけでなくカール達まで母さんの説明をしてくれる。

 王妃だったって事しか知らなかったんだけど、もしかして俺の母さんすごい人だった?


「だけどその溢れる知性に僕らのお祖父様、先代国王が目をつけてね・・・。子爵家の出身でありながら父上の正妃に抜擢されてしまった・・・」

「・・・兄上?」

「っ!その、王妃になられたソフィア様は人材育成に特に力を入れられてね!内政や外交をしながら、時間を作っては城内で授業を行っていたんだ。おかげでたくさんの優秀な人材が育っていって、今もこの国が他国と渡り合えているのはソフィア様の功績に他ならないって事なのさ」


 俺の母さんバリバリのキャリアウーマンどころの話じゃなかった!!内政と外交しながらって、本来それらは親父の仕事の筈では?兄上の話し方だと思いっきりメインでやってましたって感じだぞ。

 え、これもしかして親父が母さんに丸投げしてた可能性有り?兄上が途中ちょっと暗い表情をしたのもそれが理由か。


 とりあえず頭の片隅に置いておいた『親父はクズらしい』という言葉を『親父はクズで無能らしい』に変更しておこう。





 そのあと改めて俺の魔法属性を調べて、それぞれ魔力を感じる練習をしたり、兄上や他のみんなの魔法を見せてもらったりして授業は終わった。


 ちなみに俺の魔法属性は水と木の2つ。

 王族は結構2つ属性持ちが出やすいらしい。兄上も雷と風の2つ属性持ちで、手のひらに雷をまとった小さな竜巻を作って見せてくれた!


 それにしても木と水か。これ結構当たりじゃないか?

 だって木魔法で木材確保して、水魔法でウォーターカッターが出来るようになれば加工も自分で出来るって事じゃん!


 よし、早速明日から魔法の練習だ!!





ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。


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