番外編6:これから語られる御伽噺・そのご
「ー・・・これまた綺麗なお椀だね」
そんな訳でただいまドラゴンの姿になって上空からユグラシアを観察中なんだけど・・・丸い、本当に、丸い。
ユグラシアは大きな島国だ。綺麗な円形をしていて周囲は海、島の外周はほとんど山と森に囲まれていて中心部分が抉れて中がほぼ平面、そこに町や村が点在している。
多分これ、超巨大な海底火山の頂上が出てきた感じなんだろうな。すり鉢地形とは違うしなんて言うんだっけ?地理は苦手分野だったからわかんね〜。
まぁとりあえず丸くて周りは山に囲まれてるから水が溜まりやすい。米とかの水田が発達するのは必然ってやつだ。
「・・・水が溜まりやすいのと同じ要領なんだろうなぁ」
『何か視えるかい?』
「うん、人型はどうしても魔力を押さえてるから気づかなかったけど、ドラゴンの姿ならこの国の魔力の流れがよく視えるよ」
そう、わざわざドラゴンになって地上を見下ろしているのはそれを確認するため。
俺が魔道具説明した村の更に上から川みたいに魔力が流れてきてそれが丸い地形に溜まっていく。国民はその溜まった魔力を知らず知らずに体に溜め込んで従来よりも優れた魔法を使ってたわけだ。
だけど、今は違う。
「逆流してる」
『逆流?』
「魔力はあの1番高い山から流れてきたんだと思うんだけど、今は逆流してる。魔力の波が山を登っていってるよ」
『ではその魔力の波の行き着く先が原因と言うことだね』
「多分」
『では皆と合流してその場所に行ってみよう』
で、合流したみんなとその場所に行ってみたらどエラいものがありまして。こりゃ見てもらった方が早い!ってことで
「まさか甥の背に乗れるとは、私も歳を取ったものだな」
「いや実に素晴らしい体験だった!感謝致しますぞオルステッド殿下!」
「いえ、何というか、落ちなくて良かったです。本当に、はい」
来てもらいました、叔父上とユグラシア国の王様に!!
いやもう、叔父上は知ってたけどユグラシア王もフットワーク軽くてびっくりだわ。
だってクワンドゥルス王国新王の甥がドラゴンだっていうのは各国周知の事実だけど!何の抵抗もなく俺の背に乗って移動した方が早くね?って提案しないでくれ!周りが!御付きの方々の反応がもうさ!!俺が4人ぐらいなら大丈夫ですって言わなかったら絶対御付き無しで行こうとしたよね?青ざめて止める人たちを王命で黙らせてさ!
しかも年甲斐もなく2人揃って俺の背中で大はしゃぎだし!見た目某魔法学校の校長みたいなおじいちゃんがおじさまとキャッキャしないでくれよ!何度落ちるからやめて〜っ!?て叫んだことか!!
・・・頼むから帰りは大人しくしててくださいマジで。
「して、これがそうなのか?」
「はい、この大樹がユグラシアの魔法力の源であり、現在の魔法力低下の原因です」
「なんと見事な大樹だろうか」
「まさに『世界樹』と言ったところか、圧巻だね」
2人を連れて来たのはユグラシアの北にある霊峰『ユーラス』。そこの中腹辺りに隠れるようにひっそりとあった大きな泉だ。
そして泉の中心には樹齢数千年はいっていると思われる巨大な大樹。
この木から光合成の要領で魔力が大量に生み出されていたようで、ユグラシアは魔法が他の国よりも発展していた。
でもさすがに木の寿命が来たのか、根元に大きな洞が出来ている。その洞の中には新しい若芽。こいつが、自分を成長させる為に魔力を吸い上げていっているのだ。
「こんな樹木が存在しようとは」
「オルステッド殿下、我々はこの樹をどうすれば良い?今まで我が国を支えてきてくれたものだ、どうにか残すことは出来ぬだろうか?」
「それについてですが、今この樹は魔力を放出するどころか若芽を育てる為に魔力を吸収しております。今のところは土地に残っている魔力で事足りていますが、恐らく数年以内に枯渇するでしょう」
「なんと・・・」
「では切るしか無いのか」
「いえ、それもやめた方が良いかと。これだけの大木ですから根も相当深い。一部でも根が残っていればまた何処かで新芽を出しかねませんし、何より地中の魔力を吸い始めれば作物に影響が出る可能性があります」
俺は言いながら大樹から少し離れた場所に目を向ける。水源豊富な場所なのに枯れ木が目立つ。季節で言えば春なのに、だ。これがこの国全土に広がるのは時間の問題と言っていい。
「確かにそうか。では一体どうすれば・・・」
「一つだけ、方法があります」
だからこそ
「俺の魔力を吸わせるんです。そうすれば、恐らく十数年ほどで木がある程度成長し、吸収する魔力より放出する魔力の方が上回るでしょう」
残された方法はこれしかない。
「却下だ」
「うむ、我もクワンドゥルス王と同じだ。そなたにそこまでしてもらうことは出来ぬ」
叔父上は分かってた反応だがユグラシア王も反対してきたか。王としてこれ以上の借りは作れないってことか?
でも兄上達とも話したんだけど、先の事を考えると受け入れてもらいたいんだよね。
「御二方の御心に感謝申し上げます。ですが受け入れて頂きたい。ユグラシア王、この樹の魔力放出量が国一つを発展させていたほどであるなら、吸収量も同じであると考えられませんか?」
「「ーっ!?」」
「このままにしておけば数年後には作物に影響が出るでしょう。最悪この土地を去ることも視野に入れなくてはならなくなります。国一つ分の国民の大移動、それを受け入れてくれる国があるとお思いですか?」
「「・・・・・」」
そうなれば戦争になる。
国民共々餓死するか、多大な犠牲を払って土地を得るか。何もしなければ待っているのはそんな未来なんだ。
「何も俺が此処にずっと縛られる訳じゃありません。泉の周り程度なら離れても問題なく魔力は渡せますから。ちなみに普通の人間だと30分が限界かと、ドラゴンである俺だから大丈夫だってことをお忘れなく。・・・どうでしょうか?」
今以上に人と土地に影響が出ないようにする為に、許可して欲しい。
「・・・ユグラシア王、オルステッドと妻リディアナ、それから彼らの従者達の衣食住の保障、此処までの道のりの整備、あと魔道具の輸入時の関税の撤廃。最低限これくらいは受け入れてもらう」
「当然だ。あと茶葉の輸出量の増加と金額の2割引きもつけよう」
「帝様!?さすがにそれは!」
「そうです!せめて調査をして信憑性を確認してからでも!」
王様2人の簡潔な、でもすんごい規模の外交に待ったをかける御付きさん達。ですよね。
「これは我が国を存続させる為に必要な処置だ、反論は許さぬ。それに殿下が嘘をついていると思うか?こんな周りくどいことをして何の意味がある?そなたらも背に乗って感じただろう。我が国など簡単に吹き飛ばせるほどの力をお持ちだとな。外交を有利にしたいだけなら力で脅せば良いだけだ」
「「・・・」」
いや、しないけどね、そんな遺恨残すだけの脳筋なこと。でも実際やろうと思えば出来る身体だからなぁ、・・・しないけどね!
「それにカンカから信頼出来る御仁だとお墨付きをもらっておる。調査はするにしても道や住居の整備も同時進行で始めよ」
「なんと元宰相様から!?」
「あの厳しいカンカ様がお認めに・・・承知いたしました」
「「全ては帝の御心のままに」」
カンカって村長のことだよね?出来る人だと思ってたけど宰相だったのか。普通に人の良さそうなおじいちゃんだったけど現役時代は違ったのかな?
なんて、俺がすっとぼけたことを考えてるうちに話し合いは進み。一年以内に此処までの道の整備と住居を建てて俺が不自由なく暮らせるようにすると約束してくれた。
そして
「出来るの早くない!?」
10ヵ月後、俺たちの住居が完成した。
『テッド考案の[ロープウェイ]が大活躍だったね』
「本当にな」
泉がある此処は割と平坦なのだが、此処まで来るのがかなり大変で。場所によってはロッククライミング並みの急斜面だったりするのだ。まぁそれもあって今までこの場所に誰も来たことがなかったんだろうけどね。
だからロープウェイを提案してみたんだが、うちの国じゃここまで勾配ある山がないから設計含めて一発勝負。上手く行って良かった。
「テッド様、それだけじゃありませんわよ」
「え?これは?」
出来たばかりの家のベランダから家の裏手を見れば家より一回り小さな小屋一軒。アリトさん達のお家は他にあったし、何の為の家だ?
「こちら、テッド様専用の工房だそうですわ」
「工房!?!!」
「必要な物が有ればすぐにこちらで準備するとカンカ様より言伝を預かっております」
「マジか!!よし、みんなが楽しく過ごせるように色々作るぞ〜!」
自分だけの工房とか地味に初めてかも!いつもは親方やぺスターさんに部屋借りてたからな。
うわー、嬉しい!!何作ろう!!
『テッドを見てるだけで飽きないけどね〜』
『ふふ、全くだ』
大はしゃぎする俺を横目にみんながそんなことを言っていたのに気付かず、俺は早速工房を見に走る。
そして、俺が『想像の神竜』と呼ばれるようになるのは更に数年後のこと・・・。
END
これにて『冤罪で殺された第三王子はドラゴンに転生しました!』は完結です!
本当にここまで読んでくださってありがとうございました!!
『夜想曲』と言うファンタジー小説も書いておりますので、そちらも読みに来てくださればと思います。
誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。
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何卒よろしくお願いします!!!
完結まで書けたのは読者の皆様のおかげです!本当にありがとうございました♪




