番外編5:小さい兄の夢語り・前編
お待たせいたしました。執筆再開していきます。
今回はオルステッドの同い年の兄、ジークムンドが主役です。
どうぞお楽しみください!
僕がオルステッドに初めて会ったのは4歳の時。
いや、あれは会ったとは言わない。僕が一方的に見つけただけだ。
当時の僕は城の敷地内を探検するのが趣味で、夕飯時に探検した場所や発見したことを家族に話すのが日課だった。
その日向かったのは城のみんなが近付かない北側の離れ。行こうとすると何故か止められるから、かくれんぼをすると言って護衛を撒いて、1人で向かった。
そこで、僕はオルステッドを見つけた。
白亜の城とは真逆の、黒みがかった煉瓦が特徴的な小さな離宮。
その小さな庭でテッドは1人で遊んでいた。
もちろんその頃からテッドはテッドだったから、1人で寂しそう、なぁんてことは全くなくて。生き生きと丸い石集めてそれを積み重ねたり、地面に綺麗に並べて眺めたりしていた。
キラキラと輝く瞳が、自分と同じ紺碧なのだと気付いたのはその時で。
でも髪色が違うその子は一体誰なのか、と。純粋に湧き出た疑問を一番最初にぶつけたのが目の前にいたテッドでもなく、親でもなく、ルーカス兄上だったのは今でも英断だったと思っている。
「あにうえ、きたのおにわにしらないおうちとおとこのこがいまちた!」
「!?ジーク、離宮に行ったの?というかなんで1人?メイドや護衛は?」
「じーくはもうおっきいからひとりでらいじょぶなのです!」
「・・・つまり撒いた、ということですね」
「おいおい、4歳児に撒かれんなよ王宮騎士だろう?」
「いや、その4歳児に撒かれたというネタ、利用させてもらおう。無能なメイドと護衛は解雇だ。こちらの側の者を推薦してジークにつけさせる。後は・・・」
ベルトとカールと良く分からない会話をしていた兄上が急に僕を抱き上げ、今までに見たことないほど真剣な顔で問うてくる。
「一番最初に僕に聞きに来てくれてありがとう。今から話すことを他の人に喋っては駄目だ、父上と母上にも秘密だよ?約束できるかい?」
何故、そんなことを言われるのか理解が出来なかった。
けれどあの離宮の子が誰なのか知りたかったし、両親に秘密だというのも魅力的で、僕はよく考えもせずに頷いた。
僕の心情を、兄上は正確に読み取っていたんだろう。
「秘密にしていてくれたら、今度会わせてあげるからね」
そんなご褒美をチラつかせて僕が父上達に喋らないように徹底させた。
「わ、わかりまちた!じぇったいしゃべりましぇん!」
「うん、良い子だ」
そうして僕はあの離れの子どもが『同い年の弟』で、理由があって一緒に暮らせず、離宮で数少ない使用人と暮らしていると聞かされた。
何故、兄弟なのに一緒に暮らせないのか?
何故、兄弟なのに髪色が違うのか?
何故、兄弟なのに自分は今まで教えてもらえなかったのか?
疑問が出てきて止まらない。口にも出して兄上に問うた。
でも兄上の答えはなく、寂しそうに笑うだけだった。
数日後、僕のメイドと護衛は一新された。
当時の僕は知らなかったことだが、新しくついた者たちは全員『前王妃派』で。彼らに代わったから兄上は安心して僕とテッドを会わせられたんだそうだ。
そうして、月に2、3回。兄上との勉強会と称して僕は兄上と一緒にテッドに会いに行った。城には同い年の、ましてや子どもなどいなかったからテッドは弟というよりも友達という感覚で。だけど家族でもあるのに何故一緒に暮らせないのか、その思いは日に日に増していった。
そうしてテッドと初めて会ってから2年後、僕とテッドが6歳になった頃。
何故、テッドが一緒に暮らせないのか、会っている事を秘密にしなきゃいけないのかを知る出来事が起きた。
「父上!!やめて、やめてください!!母上、おねがいです父上を止めて!!」
僕は目の前で起きていることが理解出来なかった。
その日はとても寒い日だった。部屋の暖炉の中で薪が真っ赤に燃えていて、僕はそこで自室から持ってきた本を読み耽っていた。
だから、反応が遅れた。いや、家族共有の談話室で『その本』を読んでいた僕が悪いんだろう。
でも、それでも、こんなことになるなんて、誰が考えられるだろうか。
揃って談話室に入ってきた父上と母上は僕の読んでいた本を見るなり取り上げて、ビリビリに破いた。そしてあろうことか、暖炉に放り込んで燃やした。
訳が分からなかった。何故そんなことをされるのか。いつもなら本を読んでいれば褒めてくれるのに!
泣き叫んで懇願しても両親はやめてくれず、騒ぎを聞きつけて兄上が部屋に駆け込んでくる頃には本は全て焼かれてしまった。
「ジーク!?父上、何があったのです?」
「奴の本をジークムンドに渡したのはお前だな」
「え?」
「あの女の物をジークムンドに見せたな!?」
「・・・最近歴史に興味を持ち始めたので貸しました。あの方の本は幼な子にも分かりやすい言葉で「必要ありませんわ」
「母上・・・」
「ジークムンドにあの方の知識・思考、一切必要ありません。そんなモノがなくともこの子は陛下とわたくしの子、賢く立派に育つことでしょう」
「アルジュリーネの言う通りだ。余計なことはするな」
「・・・・申し訳ございませんでした」
頭を下げる兄上が目配せでベルトと僕のメイドに指示を出す。それを正確に読み取った2人は僕を談話室から自室の寝室へと連れ出してくれた。
そしてそこで、僕は今回の騒動の原因とテッドが一緒に暮らせない理由を教えてもらった。
『前王妃ソフィア』。
父上の正妃であり、テッドの実の母親。
今は亡き僕らのお祖父様、前国王が無能な息子を補佐して欲しいという理由で無理矢理王家に嫁がされた不運な天才。
その頭脳と手腕で数多の功績を残し、それに嫉妬した父上に全ての仕事を押し付けられて過労で亡くなったという王家の被害者。
父上は、いや母上も、ソフィア様が大嫌いだった。
勝手に婚約者として決められて、その相手が自分より年下で、なのに自分より頭が良くて、周囲からの信頼も厚くて、国民からも人気があって・・・。他にも色々あるらしいけれど、とにかく両親の憎悪は全てソフィア様に向けられていて。居なくなった今は、ソフィア様の息子であるオルステッドに向けられているらしい。
なんて、なんて馬鹿馬鹿しいんだと思った。
そんな理由で、テッドは離宮に閉じ込められ、本来自分の家であるはずの城の中を自由に歩き回れないというのか。
そしてテッドと同い年の僕も、両親にとって本来どうでも良いモノなんだと理解した。
だって両親は、あの人達は、僕を褒めてくれる、甘やかしてくれる。でもそれはいつも『他人』がいる時だけだった。
ソフィア様に兄上の世話を任せておきながら、いざその兄上が優秀に育つと自分達も出来ると意地を張って。テッドは放置して、僕には最高の家庭教師をつけて差をつけて、いかにも自分たちの血が優れているんだと周りに印象付けさせたいんだ。
馬鹿馬鹿しい、本当に馬鹿馬鹿しい。
でも、一番の馬鹿はきっと僕だ。
あんなに、兄上は秘密だと言っていたのに。バレなかったけれど、代わりに何も悪くない兄上が怒られてしまった。
あの本は兄上に借りたんじゃない。テッドから借りたんだ。
僕の馬鹿な行動の所為で兄上が怒られて、テッドの母親の品を一つ、永久に失わせてしまったんだ。
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