番外編2:公爵令嬢の恋物語
お待たせ致しました、番外編第二話です!
今回は名前だけは出ていたとある公爵令嬢のお話です。
どうぞお楽しみください!
「こうしてお顔を拝見しながらお茶を致しますのは本当に久しゅうございますわね。お体の方はもう宜しいのですか?」
「えぇ、おかげさまで・・・。皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました」
「そんな!貴女は被害者ではございませんか!お顔をお上げください」
あ、今1人はリディアナだろうけどもう1人は誰だよ?って思いましたわね。
えぇそうでしょうそうでしょう。
まさか私も、自分が主軸となる物語があるだなんて思いもしませんでしたわ。
「ね、マーガレット様」
改めまして、皆様お初にお目にかかりますわ。
私の名は『マーガレット・フォン・グレスガーラ』。グレスガーラ公爵家の長女にして、ジークムンド殿下の婚約者でございます。
まぁ、『元』ですけれどもね。
「ありがとうございますリディアナ様。それからオルステッド様、解毒薬の量産に多大なご協力をして頂いたとお聞きました。重ねてお礼を申し上げますわ」
「気にしないでくれ。マーガレットが元気になって良かったよ。なぁジーク」
オルステッド様の横に座ってにっこりと微笑むジークムンド様、私の婚約者だった人。
「このような形でお会いすることになるだなんて・・・気付けずにいたこと、申し訳ありませんジーク様」
『君が謝まる必要はないよマリー。むしろ偽者とはいえ僕のせいで君に薬が盛られたんだ、謝るのは僕の方だよ』
マリーと、愛称で呼ばれて鼻の奥がツンと痛みます。私が薬を盛られる前に偽者のジークムンドによって殺されていたと、今目の前にいるのはリディアナ様のおかげで保っている魂だけの存在。
「いいえ、公爵家の者として、そして王家に嫁ぐ者として様々な訓練を受けていたというのにこの体たらくっ!私は自分が許せそうにありません!」
向こうが透けて見える状態に嫌でもこの方の死を理解するしかなくて。だからこそ余計に偽者に気づけなかった自分に嫌気がさします。
「けれどもその訓練をされていたおかげで1番薬を飲まされていたにも関わらず1番回復が早かったとお聞きしましたわ」
「それは・・・まぁそうなのですが」
死にそうな思いをしてやっていた訓練の成果がその程度って、ちょっと悲しくありません?
でもこの考えは今も解毒で苦しんでいる方々に失礼ですね。
『それにこれだけの訓練を受けてる淑女なんてなかなかいないんだから、利用しないと』
「利用、ですか?」
ジーク様に言われた事の意味が分からず首を傾げます。オルステッド様もリディアナ様も見当がつかないのか私と同様に首を傾げていました。
『え、そんなの決まってるじゃない。王妃になる為に、だよ』
「「「え!?」」」
『え、って・・・マリーはエドモンド叔父上の事好きでしょ?』
なんでご存じなのですかジーク様!!!?
◆◆◆オルステッド視点
ジークの言葉に言った本人以外目が点になる。どうやらリディも知らなかったみたいで驚愕のあまり淑女の必須アイテム扇子が手からポロリと落ちていた。
いやでもこれはさすがにビックリだよ!マーガレットが叔父上を好きだったなんて!!
え、待て。これいくつ離れてるんだ?
マーガレットは俺たちと同じ18歳。で、叔父上は確か今年で38歳だから・・・ちょうど20歳差!?わぉ!!
「な、ななななにをいっておりますの!?確かにエドモンド王弟殿下は、あ、いえ国王陛下は素晴らしい方ですわ!!ですがそんな邪な思いなどっ」
『邪って、別に思ってただけなんだから悪いものじゃないよね?』
「いえですから何故そのような思考に!?」
『え、だってマリーの好みって文武両道で身体ががっしりしてる年上の人でしょう?』
「!!?!?」
おぉっと、ここにきてマーガレットの好みが大暴露!!
確かにそれでいくとジークは好みから外れるな。同い年だし、文武両道だけど筋肉がつきにくい体質なのか俺と一緒で細いし。
て、そんなこと考えてたら目の前のマーガレットがプルプル震えてるのが見えて・・・あ、ジーク、お前そろそろ黙った方が良いかも。
「な・・・なぜ、それを・・・」
『だってお父上にねだって良く騎士団の訓練見学に行ってたよね?それからたまにしか帰って来ない叔父上が帰って来てた時はちょっとでも顔が見れないかって急にお茶のお誘いしてきたし。叔父上が良く行く王城の図書館に入り浸ったりしてたし。あと』
「ジーク、ストップストップ」
『ほぇ?』
「それ以上話しますと、マーガレット様が恥ずか死してしまいそうですわ」
『ぁ』
マーガレット、撃沈。完全にテーブルに突っ伏した。
漫画的表現で言うなら全身真っ赤で頭から湯気出てんなこれ、実際ちらっと見えてる耳は真っ赤。ごめんよ、空気読めない兄貴で。
それにしても年上の文武両道でがっしり体型って、そりゃ確かに叔父上はドンピシャだ。
政治家として、軍師として、更に軍を鼓舞するために時には最前線に出て剣を奮っていた叔父上。ぶよぶよ狸だったダメ親父と本当に兄弟?って思うくらいに見た目も性格も違う。同じなのは王家血族のみが受け継いできた紺碧の瞳くらいだ。
そんな叔父上は未だ独身。学生時代に婚約者はいたらしいが、辺境に飛ばされると決まった時に破棄したらしい。まだ戦が絶えない時期だったからってのもあるが、多分本当の理由は俺の母さんだろう。
直接聞いた訳じゃ無いが、墓参りの時の様子とか母さんの話をしてる時の様子を見ると、ね。
・・・ん、待てよ?
「あれ、もしかして叔父上の好みって知的美人か?」
「え!?」
「あ、いや確証はないよ?でも俺の母さんの事は言わずもがなで、あと話の通じない馬鹿は嫌いだって豪語してたし、まぁこれはダメ親父達の事だろうけど。でも討論会になってる俺たち兄弟やリディとの会話は楽しいって言ってたし」
「リディアナ様そうなのですか!?」
「え、えぇ。確かに今思えば研究者の会話のようでしたが楽しんでおられましたわね」
食い気味にくるマーガレットにおされながらリディも頷く。うん、やっぱり頭の良い人が好きなのは間違いじゃない。
となると、マーガレットは当てはまる。
だって彼女は母さんの再来か!と言われるほど頭が良い。学園での成績はもちろんトップで、卒業後はジークと一緒に隣国へ留学予定だった。その頭の良さを警戒されて偽ジークに真っ先に薬を盛られちゃったけど・・・。
「これは、もしやワンチャンある、か?」
「ほ、本当ですか!?」
「いや分かんないよ?分かんないけど、嫌いなタイプじゃないのは確かかと・・・」
「ではオルステッド様!陛下に私を紹介してくださいませ!!」
「うぇ!?そんな真っ向から行くの!?」
「は?違います、仕事の補佐としてです。今陛下はとてもお忙しくて猫の手も借りたいほどの筈。そこに増援の人員として入り込めば、私の有能さを直接見ていただけます!!」
「お、おぉ」
「それに仕事はもちろんですが女性避けにもなって陛下は大変助かるかと!」
『そういえばあっちこっちからお見合いの書状が届いてるって叔父上嘆いてたもんね』
「けれどそれも公爵家の令嬢で、有能なマーガレット様を押しのけて来る方はそういませんわ。そしてその隙に陛下にご自身を売り込む、と言うわけですわね!」
「そういうことです!やりますわよ〜ッ!」
そう言って淑女らしからぬ燃えた目をしたマーガレットをジークは満足気に見ていた。俺の視線に気付くと人差し指を口に当てて・・・コイツ、わざとこの話を出して煽ったな。
ジーク、恐ろしい子!!
それから2年後。
新王エドモンドの結婚式が盛大に行われた。
歳離れた夫婦だったが、周りが羨むほど仲が良く、王の執務室にはわざわざ王妃の机が置かれたと言う。
そして次の年には第一子である王女が誕生。
王女は後にクワンドゥルス王国初の女王となり、父王に続き、国を更に発展させた賢王として歴史に名を残すこととなるのだが・・・それはまだずっとずっと先の未来の話である。
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