新たな円形様を求めて
少しばかり残酷な描写が入りますのでお気をつけください。
ーー1週間後
葬儀と立太子の儀は城に隣接する大聖堂で厳かに行われる。大量の嘆願書の事もあってか、俺の葬儀はそこそこに豪華なものだった。
ま、王太子だったルーカス兄上の葬儀とは比べるのも烏滸がましい、というか王族の葬儀としてもかなり簡略化されたものだったが。
そこに親父の俺への思いが如実に表れているんだが、そんなの今更ってやつで。むしろ最前列なのを良いことに嬉しそうな顔を隠そうともしない親父と王妃アルジュリーネ、そして偽ジークムンドに腹が立つ。
「立太子の儀が始まるな。心の準備はいいか、リディ」
「いつでも大丈夫ですわ、テッド様」
「よし、行くぞ!!」
上空にいた俺はリディアナをお姫様抱っこした状態で急降下。大聖堂の天井を蹴りでぶち壊す。
建築職人さんごめんなさい!でも人型になれたおかげで穴は小さめです!許して!!
それはさておき、急に上から飛び込んできた俺たちに会場は混乱混乱大混乱。今まさに葬式したはずのやつが翼生やした状態で乱入してくればそりゃ驚くよね。
そんな中、偽物野郎。
お前だけは嬉しそうだな。
「オルステッド!!君、生きていたのか?いやでもその翼は・・・もしやドラゴンに?」
おいおい、演技力ねぇな。セリフは言えてても棒読みな上に顔がニヤついてるのが隠しきれてないぜ?
というか、この反応からして俺がドラゴンに転生するのはゲームのシナリオ通りってことか。でもそうじゃなきゃ葬式兼立太子の儀でそんなゴツい鎧やら剣やら身につけてるのはおかしいもんね。
「ドラゴンになってまで王位が欲しいのかい?そこまで君は堕ちてしまったのか!?」
ゲームではここでドラゴンになった俺を倒してハッピーエンドってところか?最初から最後まで力攻めだなぁおい。
ま、俺は文明人ならぬ文明ドラゴンですから?
そんな脳筋な事しませんけどね!
「一度捨ててんだぞ?興味なんてあるかよ。むしろ欲しがってんのはお前だろ。こんなことまでしてさ!」
俺はリディアナに渡してもらった物をブワっと勢いよくばら撒いた。
「な、なんだ?」
「コレって書類、か?」
「なんの書類でしょう・・・まぁっ!?」
「え、嘘だろ?」
「わぁぁっ!!見るな!!見るな〜っ!!」
「なんだコレ・・・うちの領地が買収されてーー」
「貴公の領地で水害はない筈、なのに災害給付金がーー」
「返せっ!返せ〜〜っ!」
「見て、禁止薬や毒物の購入記録ですわ!!他にもーー」
「財政官!説明を!!」
「陛下!どうなっているのですか!?」
「知らない!私は何も知らない!!」
わぁ、あっちこっちで阿鼻叫喚。ですよね〜。
だってこの紙、偽ジークムンドと親父(ちょっとだけ王妃)が行った有力貴族の買収偽造、内政問題や予算の改竄・隠蔽・横領、俺の暗殺計画に禁止薬の購入・使用の証拠たちだもん。
今日の為にアリトさんたち影のみんなが本当に、本当に頑張って集めてくれた。心配かけた上にこんなに動いてもらってマジ感謝です!
そのみんなの努力の結晶、のコピーを俺は空中からばら撒きまくる。だってコピーだからね、まだまだあるよ〜、ほれほれー。
リディアナも一緒になってばら撒いてるから上から見ると紙吹雪が舞ってるみたい。内容は完全にアウトなもんばっかりだから綺麗とは程遠いけどね。
「み、皆さん、落ち着いて!!これは出鱈目です!全部オルステッドがっ!」
「ずいぶんおかしな事をおっしゃいますわねジークムンド殿下?」
数枚の書類を扇のようにして持つリディアナが偽ジークを見下ろしてコロコロ笑う。
俺から見たら只々可愛いだけなんだけど、見下ろされてる側はとぉっても怖いだろうな。
「これらの書類、見て分かりませんかしら?陛下や殿下の魔術印がありますわよね。太陽の王冠に炎を纏う鷲・・・何とも勇ましい印はあなた様方以外にいらっしゃらないと思いますが?」
「ぐっ、き、君達が捏造したんだ!!僕はこんなもの知らない!」
そりゃ否定するよね、シッテター。
でも残念、逃してやらない。ここからは俺たちの、いや、俺の嫁リディアナのターンだ!!
「まぁまぁ、魔術印の捏造!しかも王家の方の物を捏造なんて国家反逆罪で死罪ですわね、恐ろしい!ではこれが捏造した物だという証拠をくださいませ」
「しょ、証拠?」
「えぇ証拠です。殿下の魔力を翳して頂くか、血を一滴頂くだけで結構ですわ。魔術印はその名の通り魔術の印。誰1人として同じ形はなく、本人の魔力のみに反応するものです。ならこちらの原本に押された印が殿下の魔力に反応しなければ偽物という事で、わたくし喜んで罪を償いましてよ?」
ノリノリだな、楽しそうで何よりだ。
と、思ってたら勢いよく火魔法が飛んできてリディアナの手にある書類を燃やそうとした。
届く前に俺が素手で弾き飛ばしたけど何してくれてんだこのやろう!
「リディ、大丈夫?」
「えぇ、テッド様ありがとうございます。あとジークムンド殿下もありがとうございます、おかげで・・・」
とっても綺麗な笑顔と策士の目を混同させてリディアナが微笑む。
手に持った書類の真ん中、今までは薄っすらとしか見えなかった魔術印がジークの火魔法に反応して赤く赤く輝き出した。
「こちらの魔術印が全て本物だと証明されましたわ!」
「く、くそったれぇぇぇえええ!!」
もう言い逃れが出来なくなった偽ジークがキレて加減無しの魔法を連発。四方八方から炎の鞭や風の刃が俺たちに襲いかかって来た。
「なんで思い通りにならねぇんだよ!?ここはラブロ(LOVE ROYAL ROADの略称)だろっ?俺が主人公で、だからっ!全部思い通りにならないのおかしいだろ、ぎゃッ?!!」
「てめぇのそのふざけた思考の所為で、ルーカス兄上が、ジークが犠牲になった・・・」
向かって来た魔法を俺は全て水魔法で浮かべた水球達に閉じ込め、消火・消失させる。そして同時に喚き散らす偽ジークを木魔法で出した太い蔓で雁字搦めにした。
「楽に、死ねると思うなよ?」
薬で偽ジークに惚れ込んだ女の子達が助けようと群がるがどうにも出来ない。魔王であるドラゴンの体を手に入れたからか、俺の魔法レベルはリディアナと同じグランドマスターだ。偽ジークを傷つけないように、なんて手加減した状態じゃ解く事は不可能。
俺が地上に降り立ち、偽ジークに向かって手を伸ばす。
その時
「そこまでだ!!」
今まで沈黙を貫いていたエドモンド叔父上が立ち上がって声を張り上げた。
辺境で国を守り続ける知将の登場に聖堂に居たみんながいやでも注目する。
「お、おぉっ!エドモンド助けてくれ!!あやつを、今度こそ亡きも、ヒィぃっ!?」
「どこまで愚かですね、兄上・・・」
天の助けとばかりに叔父上に縋りつこうとした親父は抜身の剣を向けられて尻餅をついた。うわ、情けな。というか叔父上の目が超冷たい、こわぁ。
「皆の者聞けっ!!ここにある書類は全て本物だ、既に証明されたことだが我が名においても保証しよう。その上で聞く、この者達を王と次代の王として支えられるか!?国法で裁けば王族であろうと罪人、それを揉み消してまでこの者達に支える気概はあるか!私は、無い!!このような輩が我が国の、ソフィア様が愛したこの国の王などと断じて認めぬ!!この私の考えに賛同する者はこの場から一歩足りとて動くな!これより我が私兵が罪人を拘束する、邪魔だてする者は容赦せぬと心得よ!!」
叔父上の宣言と同時に、何処に隠れてたんだと言わんばかりの人数の兵士達が聖堂内に入ってくる。
阿鼻叫喚Part2となったがさっき程ではない。大体が叔父上の言う通り動かず待機で、偽ジークや親父と色々やらかした連中が逃げ回ってるだけだ。ま、すぐ捕まってるけどね。
ちなみに親父と王妃は俺が先んじて偽ジーク同様捕まえておきました!だってこの期に及んで逃げようとしてんだもん。逃すかってんだ。
「オルステッド」
「はい、叔父上」
「私個人としては君に対して何も言う事はない。だが、この国の王族として聞かせてくれ。君はこの国を支配したいかい?」
「いいえ」
しないよ、面倒くさい。
「ふふ、即答か」
「当たり前でしょ」
「では君の望みはなんだい?」
叔父上に聞かれ、俺は考えるまでもなく偽ジークを指差す。
「コレの始末」
まだ傍にいた女の子達は危ないので叔父上の私兵に保護してもらいました。後で魅惑の薬の解毒薬を渡してあげないとね。
「・・・本来なら更なる調査の上で国法にて裁きにかけたいところだが、君がこの国に危害を加えないと契約してくれるならば許そう」
「それで構いません」
「では後で契約だ」
そう言って叔父上はどうぞ、と手を向けた。俺はそれに軽く頭を下がるとパチン、と指を鳴らす。
「ーーぎゃぁぁぁあああぁぁぁっ!!!!!!?!?」
偽ジークの真下から炎の柱が勢いよく上がる。これは本物のジークムンドの魔力で作ったものだ。そして焼き死ぬ前に回復が入り、その後水責め、回復、最後にルーカス兄上の魔力からの雷落とし。
更にこれで終わらず、回復が入った後にまた火責めからの繰り返しだ。とりあえずこれが2人から貰った魔力が尽きるまで続くから、こいつが死ねるのは数時間後の事だろう。
あまりの事に聖堂にいる者達はドン引き状態。親父達に至っては自分達もああなるのかと考えちゃったのか、恐怖で気絶していた。
「・・・怖い?リディ」
「いえ、殿下方の無念を思えば足りぬくらいですわ。それに、今後を考えるに良いパフォーマンスかと」
そう言って真っ直ぐ見てくれるリディに俺は頬をかく。さすが全部お見通しか。
これは俺が本当に『ドラゴン』という恐怖の対象になったことを周囲に印象付けるパフォーマンスだ。それはつまり、この国の新しい王となる叔父上には俺と契約を果たして被害を最小限に抑えたという功績と、何かあれば俺が出てくるという印象付けにも繋がる。
今後荒れるであろうこの国の面倒事を全て押し付ける形になるんだ。これくらいはやらないとね。でも
「リディに怖がられなくて良かったよ」
「あら、怖がったりしませんわ。だってテッド様ですもの」
気持ち良いほどに言い切ってくれるリディに、俺はもう笑うしかなかった。
で、叔父上と契約をして大聖堂からおさらばした俺たちはーー
「リディ!新婚旅行も兼ねて世界中回ってみない?」
「まぁ良い考えですわ!わたくし海が見てみたいです!!」
「よし、じゃぁまずは海に行って美味しい物食べよう!」
誰にも邪魔されず、空の旅に出発したのだった。
それから数十年後、各地で色々開発したりなんやした結果、俺は創造の神竜と呼ばれ崇められるようになり。リディアナは神竜の巫女として常に俺の傍にいて、子宝にも恵まれ幸せな余生を過ごす事となる。
ちなみに俺の信仰を示す旗印は円を描いた竜なんだとか。
「あ、海でたこ見つかるかな?たこ焼き作りたーい!」
「タコヤキ?ってなんですのテッド様〜」
END
本編はこれにて完結です!
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!
次回は少し間をいただいて、4月頃から番外編を書いて行こうと思います。
現状予定している番外編は
・叔父上達の裏話
・ガーディア家の『影』から見たオルステッドの話
・テッドとリディの新婚旅行話
・ジークムンドのテッドへの思い話
・ジークムンドの婚約者マーガレットの恋物語
・職人達の語らい話
などを予定しております。
順番は上記の通りにはならないと思いますので、そこはご了承ください。
誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。
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