おにいちゃん達は語る(リディアナ視点)
「「「おかえりなさいませ、お嬢様」」」
「えぇ、出迎えありがとう」
テッド様の魂の定着と目覚めを確認出来たその日の夜、わたくしは実家に帰って参りました。
本当はテッド様のお側に居たかったのだけれど、テッド様からお役目を頂いたのですもの。きっちりとそれを全うしなくては!
「・・・あの、お嬢様」
何を誰に報告してどう動いてもらうかを頭で考えていると、部屋までの廊下を付き従ってくれている我が家の老執事とメイド長が心配そうに話しかけてきました。
「オルステッド様は・・・」
「その事で皆に動いてもらわねばなりません。お父様にも報告があるのだけど、今どちらに?」
「あと1時間程でご帰宅されると、伝言を預かっております」
「では帰宅次第お話があると伝えて。そしてわたくしの事もすぐに呼びにきてちょうだい。あと・・・」
わたくしは人差し指を唇に当てて殊更小さな声で囁きます。
「テッド様は無事よ、でもまだ内密にね」
「「は、はい!」」
執事とメイド長が涙目になって小さく、けれどハッキリと頷いて仕事に戻っていきました。2人は引退した元『影』のメンバーです、きっとお父様がお戻りになる前に信用のおける者をきちんと選抜しておいてくれるでしょう。
テッド様の葬儀とジークムンド殿下の立太子の儀まで一週間しかありません。迅速に、けれどこちらの動きを察知されない様に慎重に動かなくては。
わたくしはそう考えながらお父様が戻るまで暫しの休息をと部屋に入りました。
ーー直後
『『リディアナ〜〜ーーーーーーーっ!!!!』』
「っ!?!!」
扉開けてすぐぶつかってくる(でもすり抜ける)幽霊が2体。
「る、え、えぇっ!!?」
それはなんと、お亡くなりになったルーカス王太子殿下と、敵対関係になってしまったはずのジークムンド殿下だったのです。
『テッドは!?テッドは無事!?』
『僕のせいでテッドが!!ねぇあの後どこ行ってたんだ!テッドの魂は!!?』
「お、落ち着いてくださいませ!!え、フェルル!?」
「お嬢様、何かいるのですか?」
常にわたくしに付き従っているフェルルが前に出て袖からナイフを取り出します。見えない者に立ち向かうってなかなか出来ることではないと思うのだけど、わたくしは本当に周りに恵まれていますわね。
「ナイフを収めてちょうだい、ルーカス王太子殿下よ。敵意はないですわ。人払いと、あとお父様がご帰宅次第わたくしのお部屋に来てくださる様にしてもらって」
「畏まりました」
わたくしの言葉に嘘が無いと判断したのか、フェルルはお茶の準備だけ手早く済ませてから人払いと伝言を伝えに部屋を出ていきました。
そうして遠ざかる足音が聞こえなくなってからわたくしはお二方にやっと向き合います。
「お待たせ致しましたわ。今外部にことが漏れぬ様に出来るだけ少数で動いておりますの」
『あぁ、その様だね。すまない。それで、テッドは・・・』
「ご無事ですわ」
『『本当っ!!?』』
「えぇ、別の身体ではございますが、無事に魂は定着してお目覚めになりました。今は身体を慣らしていらっしゃるところですわ」
『よ、良かったぁ〜・・・』
『ごめん、ごめんよリディアナ。僕が身体を好き勝手に使われたばっかりに兄上だけじゃなくてテッドまで・・・』
ルーカス殿下は安心したのかへなへなと床に落ちて座り込み、ジークムンド殿下も同じ様に床に座り込んで泣き始めてしまいました。何が何だか訳が分かりませんが、このご様子と魂の感じから、この方は間違いなくジークムンド殿下ご本人で間違いないようです。
ただ、ちょっと聞き捨てならないことをおっしゃいましたわね。
『兄上だけじゃなくてテッドまで』と。
という事はルーカス殿下の死因にジークムンド殿下が関わっているという事でしょうか?
「一体何がありましたのかご説明いただけまして?こちらのジークムンド殿下は本物のようですし、それならテッド様を殺めるよう指示したジークムンド殿下は、一体何者なのです?」
『あぁ、僕も何が何だか・・・とりあえず分かってる事を話すよ』
そうして聞かされた内容にわたくしは驚きを隠せませんでした。
ジークムンド殿下曰く、王立学園に入学してから意識がなくなることが時折あったそうです。しかもそれは時の経過と共に増え、意識が無い時間も並行して増えていったと。相談しようと思ったそうなのですが、何故かその事を口にする事が出来ず、とうとう己で己の体を動かせなくなってしまい。自分では無い者が自分の体を動かしてルーカス殿下を毒殺してしまったというのです!
やはりルーカス殿下の死因は過労ではなくて他殺だったのですね。しかも弟君の手で直接だなんて・・・。
そしてルーカス殿下はその時死んで意識が魂のみになった瞬間、自分の死と同時にジークムンド殿下の身体に2つの魂が入っていて、しかも片方が雁字搦めになって囚われている事に気づいたそうです。
そこで頭の回転が早いというか切り替えが早いというかなのですが、ルーカス殿下は囚われている方が本物のジークムンド殿下で自分の殺害は弟の本意では無い!更に魂同士なら干渉出来るはずだ!!と、お考えになり、囚われていたジークムンド殿下の魂を救い出したそうです。
何というか・・・すごいですわね。普通死んだ直後でそこまで考えられませんわよ?死んだ事ないですけど。
ただ思ったよりも解放に時間がかかってしまい、その間に偽物のジークムンドが更に好き勝手に行動。お父上である陛下を味方につけてテッド様に冤罪をなすりつける準備を整えてしまいました。
それをわたくしに知らせに行こうとした正にその日、テッド様が殺されてしまったそうです。
『兄上は僕なんて放って先にリディアナに相談しに行けば良かったんだ!そうすればテッドが死なずに済んだのにっ!』
『はぁっ!?お前も僕の大事な弟だぞ!!放っておける訳ないだろうが!!』
『でもっ!』
「お黙りあそばせ!」
『『っ!?!』』
「とりあえず状況は理解いたしましたわ。情報提供感謝いたします。おかげでわざわざ城に潜入せずにすみましたわ」
『城に?なんで?』
「テッド様にお願いされましたの。もしかしたらルーカス殿下の魂が城にいらっしゃるのではないか、と。魂は死んだ場所に思いが強く残りやすく、そこに居着いてしまいがちですの。ですからルーカス殿下の魂を見つけてお話を聞いてみてほしい、あの母さん信者が志半ばで死んで速攻天に召される訳がないから、だそうですわ」
『おぉさすがテッド!お兄ちゃんのことよく分かってるぅ〜』
『兄上、褒められてないです。でもさすがテッドだね』
『そういえばテッドは今どこに?別の体なんてそんな都合の良いもの早々あるわ・・・まさか』
『兄上?』
ルーカス殿下がピタっと止まってわたくしを見ました。
どうやらわたくしが魔王の体にテッド様を移した事にお気づきになったようですわね、さすがですわ。
にっこり微笑み返しますと、幽霊ですがルーカス殿下のお顔が引き攣ったのが分かります。
『リディアナ、君とんでもないことしちゃったね』
「他に方法がありまして?」
『確かにそうかもしれないけど、本当に大丈夫だったの?』
「空っぽにしてから入れましたので全く問題ありませんわ」
『えっ?・・・あー・・・テッド、君の婚約者怖すぎだよ』
『あの、兄上。話が見えないのですが?』
『ん?あぁ、僕らの弟が最強になって、その婚約者はもっと最強だってことだよ』
そう話すルーカス殿下にジークムンド殿下は首を傾げるばかり。けれど状況が飲み込め始めたルーカスは遠い目をしながらも最後には
『これは、葬儀と立太子の儀が楽しみだ』
と、言って幼い頃の様に笑っていたのでした。
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