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君の声を聴いた気がした



無駄だった

無駄だった無駄だった

無駄だった無駄だった無駄だった

無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だった無駄だったーーー・・・






 ルーカス兄上が、死んだ。


 俺が道整備なんてしなければ。でもそれをしてなきゃ事故で死んでたかもしれない。

 何をしても兄上は死ぬ運命だったの?


 どうすれば良かったんだろう。

 どうすれば・・・どうすれば・・・。


 頭がごちゃごちゃする中で俺はそれを振り払う様に魔道具を作り続けた。食事や睡眠は周りで何か言われてとっていたと思う。


 壊れた人形みたいに無駄に同じ事を繰り返す日常。


 そこから掬い上げてくれたのは、やっぱりリディアナだった。



 机の上に置かれた彼女の手紙から香る、ブルーベリーの香り。綺麗に整った文字で綴られた内容は俺の体を気遣う言葉と自分の近況、そして兄上との思い出話。



 あぁ、小さい頃に作ったカフスボタンをリディのぬいぐるみに使った時、兄上すっごくショック受けてたな。リディはめちゃくちゃ喜んでくれたけど。その後改めて作って、ジャムと一緒に渡したら泣いて喜んでくれた。


 ボウリングを作った時はすごい盛り上がった。

 何でもそつなく器用にこなす兄上がこれだけはすっごい下手くそでいじけちゃって。それをカール達に笑われて、最後は追いかけっこになった。俺とジークを人質にして走るカールとベルトを本気で追いかけてくる兄上はちょっと怖かったけど、面白かったな。


 そうだ、花火も楽しかった。

 ジークの火魔法を俺が理科の実験みたいに炎色反応させて色を変えて。それを見た兄上とガーディア侯爵がその場でガリオ親方を呼びつけてたっけ。あの時は畑違いなのに呼び出されちゃった親方がちっさくなってて笑ってしまった。



 他にもいっぱい・・・いっぱい。


 思い出すと悲しくて、でも楽しくておかしくて、笑ってしまう兄上との思い出。


 そっか、リディアナはいつもこうして、みんなの気持ちを少しずつ落ち着かせてたんだな。

 やっぱり、俺の婚約者は最高だ。



「ーーテッド、入るぞって・・・今日は顔色良いな」

「そう?・・・うん、ちょっと前が見える様になったかもしれない」

「そうか・・・」

「ごめんね、カールだって辛いのに俺の世話させちゃって」


 部屋に入ってきたカールの顔を見る。

 いつもの飄々とした感じはなくて、ちょっとだけやつれただろうか。


「そんなの気にすんな。俺だってお前の世話だけに集中出来たおかげで落ち込まずにいられたんだ。だから、お互い様ってやつさ」

「・・・そっか」

「嬢ちゃんとジーク殿下とエドモンド大公閣下、他にもたくさん手紙来てるぞ。殿下の分は急ぎ返事をくれだとさ」

「あー〜、ここ数ヶ月全部丸投げ状態だったもんな。悪いことしちゃった・・・ジークは大丈夫?」

「あぁ、元気にされてるぞ。ちょっと気持ち悪いくらい」

「から元気ってこと?大丈夫かな・・・あーもう、俺ってば自分のことばっかで本当情けないっ!あ、叔父上のとこのベルトは?」


 頭が回る様になったからか色んな事が気になり出した。本当、どれだけ放り出して篭ってたんだ俺は。


「相変わらず大公閣下に噛み付いてるってよ。ルーカスのことはもちろんだけど、こんな時にジーク殿下の側にいれないのが相当悔しいみたいだな」


 兄上付きからジークの護衛騎士になっていたベルトは今、叔父上の側に居る。

 実はベルトは叔父上が治めている辺境領を元々治めていた伯爵家の嫡男なのだ。


 子どものいない叔父上の後継ぎとして、成人した段階で叔父上の居る辺境領に戻って勉強をしなきゃいけない筈だった。でも、まだ幼いジークに付いていたから自分の後を任せられる騎士が見つかるまで待ってもらってて、ジークが13歳になった年に辺境領に戻った・・・というか無理矢理戻された。


 ベルトがやっぱりジーク殿下が学園を卒業するまで!と駄々を捏ねたからだ。

 さすがにそれは許されず、ベルトは泣く泣く辺境領に戻ったのだが。今はその所為で兄上を守れなかった、ジークの側にも居られない!と相当怒っているらしい。


「この叔父上からの手紙って、ベルトを宥めてくれって言うお願いかなぁ・・・」

「さすがにお前宛てにそれは書かねぇだろ。・・・俺への手紙には書いてるけど」

「おぉぅ・・・」

「それより元気になったなら返事書いてやれ。ジーク殿下は急ぎだしな」

「分かった」


 手紙に目を通すと、リディアナと叔父上は俺の体調の心配と近況報告。ジークは短くて、話がしたいから学園の寮に来てくれと言うもの。


「何かあったのか?・・・カール、明日学園に行くよ」

「お、戻るのか?」

「授業には出ないけどね、卒業単位はもう取れてるし」

「了解、準備しとくよ」


 返事を書いた手紙を受け取ったカールはそう言って部屋を出て行った。


「とりあえずジークに謝って話聞かないと。あとリディにもお礼言わなきゃな・・・」


 薄暗い部屋を見渡してカーテンを開ける。

 いつの間にか季節は冬。外では星の代わりにチラチラと雪が降って輝いていた。


 静かで、幻想的な風景だ。

 出来てばリディアナと一緒に見たかったな。




◆◆◆



 翌日、俺は生徒達が授業中の時間を見計らって学園の寮に戻った。


「あれ、なんか綺麗だね?埃とか全然無い・・・」

「そりゃお前がいつ戻っても大丈夫な様にメリーが掃除してたんだろう」

「ぅぁ・・・離宮にも顔出してお礼言わないと」

「そうしろそうしろ。じゃぁ俺はジーク殿下に知らせて来るから、大人しくしてろよ」

「了解」


 カールが出ていくのを見送って、俺はソファに座って待とうと足を進める。でもその前に


「アリトさん、居るよね」


ガーディア侯爵から俺付きとして仕えてくれているアリトさんに声をかけた。

 音もなく隣に降り立つその姿は全身黒服で正に忍者って感じ、カッコいい!


「お呼びでしょうか、殿下」

「リディに帰ったよ、って知らせて来てくれる?」

「え、ですが貴方様をお一人にする訳には」

「ちょっとぐらい平気だって。学園内だし、俺もこの部屋からは出ないからさ」

「しかし・・・」

「早くリディを安心させてあげたいんだ、ね?」

「・・・・・・・承知、致しました」

「うん、ありがとう」


 渋々といった感じでアリトさんは消える。

 毎回思うんだけど、どうやって移動してるのか全く分からん。カールにそこそこ鍛えてもらった筈なんだけど、その程度じゃ追いつけない高みにいるんだろう。

 全員このレベルで構成されている『影』って本当凄いよ。



 ソファに座って少し休む。

 そうしていると扉の向こうから数人分の人の気配が近付いて来ているのに気付いた。

 カールが帰って来るにしてはちょっと早い様な?


 そう思って立ち上がると、ちょうど扉が叩かれて騎士が3人入って来た。返事してないんだけど、せっかちだなおい。


「オルステッド殿下、ジークムンド殿下がお呼びです。ご同行願えますか?」

「あぁ。って、アレ・・・カールは?」


 なんで、呼びに行ったカールが一緒に居ないんだ?




「「「・・・」」」




 あ、これヤバい。


 と思って後ろに飛んだのと、相手が剣を薙ぎ払ったのはほぼ同時。


「ぁぐっ!!?」


 相手が狙ったのが上半身ではなく足。避けきれず、俺は無様に倒れた。


 手元に剣は、無い。

 入り口は塞がれて、窓までも距離がある。何よりこの足で逃げるのは不可能だ。

 声を出して助けを呼ぼうにも今は授業中で寮には誰もいない。コイツもそれが分かってるから太ももなんてところを一閃して来やがった。

 反撃の魔法、間に合うか!?



「オルステッド殿下。新たな治世の為、今この場で死んでいただく!!」


 あぁ、ダメか・・・。

 俺が魔法を発動させる前に、騎士が振り下ろした剣が胸を貫く。



 冷たい鉄が体を通っていく感覚。

 舞う鮮血。

 冷たい鉄と違って、温かい。


 手のひらに集めた魔力が霧散して、意識が。


 ・・・懐かしい感覚だ。

 前世もこうして、世界が閉じていったんだ。




 そんな中で






「テッド様ぁぁぁぁああああーーーーーーっ!!!!!!」






リディの声を、聴いた気がした。



ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。


交互になりますが、次回はまたリディアナ視点になります。


少しでも面白いと思っていただけたら↓から評価、感想コメントなどをいただけると嬉しいです。

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