待ちきれない明日を思って(リディアナ視点)
更新が止まっていてすみません!
家族の体調不良が続いて執筆が難しくて・・・。
今月は週一か遅くても隔週更新出来るように頑張ります!
『 世界から色が無くなったようだ 』
そう、わたくしに故人の事で相談をしにくる方々が、よく口にいたします。
今のオルステッド様はまさにそのような状態なのでしょう。
ルーカス王太子殿下の葬儀から、早数ヶ月・・・。
わたくし達が通う王立学園の卒業式を間近に控える時期となりましたが、オルステッド様は今も学園に戻らずにいらっしゃいます。
メリーさんたちのお話では学園の寮は勿論、離宮にもお戻りになっておらず、ガリオ様とペスター様の工房でただ黙々と魔道具の製作に取り組んでおられるそうですわ。
最初の頃は食事も睡眠も、周りがしつこく促さないと取らない状態だったとか・・・。今はなんとか自主的に取られるようになったそうですが、やはり心配です。
本当はわたくしも学園など放っておいてテッド様のお側に居たい・・・。
けれども、お父様に
『何か王城の空気がおかしい。オルステッド殿下の為にもお前は今まで通り学園に通って周囲に目を向けていてくれ』
と、お願いされてしまいました。
なので泣く泣く、我慢に我慢を重ねて、学園にいる次第です。
「ルーカス殿下・・・。何故、お亡くなりになってしまわれたのですか・・・」
ルーカス殿下の死因は過労死と言われています。
それがまた、テッド様を追い詰める原因となりました。
知らせが来た時も、葬儀中も、テッド様はご自分を責めておられましたわ。
自分が主要貿易路を整備させたから、他国とのやりとりが活発になって忙しくさせてしまったんだ、と。
でも、わたくしは本当に過労死だったのかと疑っています。
テッド様のお母様であるソフィア様も、秘されていますが実は過労でお亡くなりになられたのだと、お父様から聞かされました。それをご存知のルーカス殿下が気をつけない訳がないのです。
だってあの方は誰よりも、テッド様とジークムンド殿下のお2人を大切に思っていらっしゃったのだから。
お父様もやはり疑っておいででしたわ。
でもルーカス殿下が亡き今、荒れる前王妃派を束ねるのに追われていらっしゃる。勿論、調べておられるようですけれど、『影』と呼ばれる我が家の密偵たちを分散させている現状、調査の進みは悪い・・・。
少数精鋭も少数過ぎるとこう言った時に困るものなのですね。だからといってただ増やせば良いものでもないのだから難しいですわ。我が家は特に封印の事があって条件が厳しいし・・・。
『ごめん、ごめんなさい兄上・・・ごめんなさいっ』
あぁ・・・幼子のようなテッド様の泣き声が、今も鮮明に耳に響く。
「テッド様・・・貴方のせいではないわ、絶対に」
兄であり、ある意味親でもあったルーカス殿下は、やはりテッド様にとって特別だったのですね。
「それにしても・・・お父様とテッド様にどうご報告すべきかしら」
ここ最近、ジークムンド殿下がおかしい、と言う事を。
元々の穏やかなお人柄からか交友関係がお広く、男女問わず人気のあるお方でしたが・・・最近お側にいるのは女性ばかり。何というか、だらしないのです。
最初はルーカス殿下の死のショックの裏返し、もしくは塞ぎ込むテッド様に代わって自分が明るくしていなくては、という思いからかと思っていましたが。
「ちょっと、侍らし過ぎではないかしら」
ついため息と一緒に声が出てしまうほど、今のジークムンド殿下はらしくないのです。だって中には婚約者がいる方もいらっしゃるのですよ?
それにジークムンド殿下の婚約者で在らせられるマーガレット様がそれを注意しないどころか他の方と一緒にお側にいらっしゃるのもまた不可解ですわ。
ジークムンド殿下とマーガレット様はテッド様とわたくしの様な恋仲ではございません。
けれどお2人の仲は良好で、互いを尊重し、尊敬し、人生の良きパートナーとして支え合って生きて行こう。そういうお気持ちは十分にあるのだと、以前お茶会で言っておられました。
そんな彼女は公爵令嬢としての矜持を持ったお方。学生と言えどもお付き合いのマナーは厳しい目で見られる方だった筈ですのに。
「本当・・・お父様の言う通り、何か変ですわ・・・」
何よりおかしいのはわたくし自身です。
ジークムンド殿下が近くにいらっしゃると、何故か胸がざわつくのです。
そう、とても嫌な感じ。
ドロリとした底の見えない泥の中を、得体の知れない何かが蠢いていて、溢れそうになっている・・・そんな感覚。
現在わたくし付きの『影』に調べさせているのですが、杞憂であって欲しいものです。
ジークムンド殿下はテッド様の大切なご兄弟ですもの。
この様に疑って調べさせるなど、本当はしたくありません。
何もない事を祈るばかりですわ。
すっかり冷めてしまったお茶を口にして、わたくしは窓の外に目を向けます。
今は冬の最中。外では星の代わりにチラチラと雪が降って輝いています。
静かで、幻想的な風景。
出来ることなら、テッド様と一緒に見たかったですわ。
「はぁ・・・テッド様にお会いしたい・・・」
ーバタバタ、コンコンッ!
「どうz「お嬢様っ!」
「フェルル?そんなに慌ててどうしたのです?」
学園の寮まで着いてきてくれている侍女のフェルルがわたくしの返事を最後まで聞かずに部屋に入ってきました。普段なら絶対にそんな事はしないというのに、一体どうしたのかしら。
「オルステッド殿下付きの影からお手紙をお預かりいたしました!」
「なんですって!?早く見せてくださいな!!」
喜色満開の顔のフェルルから手紙を受け取り、早る気持ちを抑えながら手紙の封を開けます。
この状況になってから手紙はわたくしから送るだけで返事が来たことはありません。影やメリーさん達からの手紙はあったのでテッド様のご様子は分かっていたのですが、まさかご本人から頂けるなんて!
ドキドキしながら開くとほんのり香る工房特有の木と鉄を燻した香り。
お香の美しい香りではないのがまたテッド様らしくて思わず笑みが溢れます。
久々に見る斜め上がりの癖字がわたくしの名を綴ってくれているだけで嬉しい。続く文章は謝罪とお礼、それと作った作品達の簡単(?)な説明。
わたくしの知性ではキチンと理解出来ませんが、それでもまたすごい物がいくつも出来た様です。さすがテッド様ですわ。
そして最後に綴られた『明日』の文字。
「・・・フェルル、どうしましょう・・・明日、テッド様が学園にお戻りになられるわ!!」
「まぁ!良かったですねお嬢様!」
「えぇ!!」
嬉しくて嬉しくて思わず手紙を持ってくるくる踊ってしまいます。はしたないと分かっていても止まりません。
やっと、やっとお会いできるのですね。
テッド様のお顔を見て、お声を交わせるのですね!
「あぁ!明日が待ち遠しい・・・早くお会いしたいですわ、テッド様」
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