幼少期編:記憶はある日突然に!!・・・なんてことはなく
「健人聞いて〜っ!最高EDいけた〜ーっ!」
「あぁ、おめでとー・・・って、お前試験前に何してんだ」
「テヘペロ」
「野郎がやってもなぁ」
「うるせっ!!いやでもめっちゃ良かったよ!条件厳しくて何度か心折れかけたけど・・・」
「それはそれは、おつかれさん」
「健人もやらね?今回で全クリしたから貸してやれるよ!」
「学校にゲーム持って来んな。あと俺はいいよ、宏哉が事あるごとにゲームイベントの話してくるからやっても新鮮味ないだろうし」
「あー〜、それはごめん。健人話しやすいからつい・・・」
「クラスにもいただろ、やってるやつ。なんでそいつと話さなかったんだ?」」
「前にまだ見てないイベントの話しちゃって怒らせちゃった・・・」
「それはお前が悪い」
「あはは・・・。なぁ健人、一人暮らしいつから?」
「卒業したらすぐだよ。仕事始まる前にいろいろ慣れとかないとな」
「そっかぁ、遊びに行っていいよな?」
「どうしよっかなぁ」
「丸井堂の水風船羊羹持ってくから」
「っ!?いつでも来たまえ」
「やった〜ーーっ!!」
「おい、道で遊ぶーーっ、宏哉危ない!!!!!」
ーーーードンっ!!!!!!
遠くから、宏哉の声と救急車の音が聞こえる。
気の知れた友達との、いつもの会話、いつもの下校。
卒業も秒読みで、もうすぐこの時間も終わる。
あぁ、痛いな、眠いな。
ーー静か・・・だな。
こんな風に終わるなんて、思わなかった。
◆◆◆
「ーーあら、お目覚めですか?」
「ふ、わぁ・・・おはよう、メリー」
「おはようございます。今お目覚めの紅茶を淹れて参りますね」
世話係のメリーを見送って、ぐぅっと体を伸ばす。伸ばした腕を目で追えば、見えるのは上質な絹の寝巻きとふっくらとした小さな手。腕に筋肉はほとんどついてなくて短い、足も同様。
明らかに小さな、子どもの身体。
「ここに転生して、もう5年か」
「何か仰いましたか?」
「うん、紅茶おいしいって言った」
「あらあら、気に入って頂けてなによりですわ。さぁお着替えをして朝食に参りましょう」
現世での今の俺は5歳。
産まれた時から前世の記憶はあったものの意識がぼんやりと浮上しては落ち、浮上しては落ちの繰り返しで。自分でまともに考えて受け答えが出来るようになったのは3歳を過ぎた頃だった。
ただその頃は記憶を持ったまま新しく生まれ変わったんだなぁ、乳母とか世話係とかいるからどこか海外の金持ちの子どもかなぁ、とあまり深く考えず。それよりも宏哉は無事だっただろうかとか、これまで世話になってた叔父さん夫婦に何も恩返しが出来なかった事とかの方が気になって仕方なかった。
でも4歳くらいになってふと、気付く。
ーーあれ?ここって本当に俺の知ってる地球か?ーーって。
中世ヨーロッパのような家。どこにも見当たらない家電類。それなのにずっと灯りが灯り続けているランプ。世話係達の会話から聞こえてくる『魔石』とか『王国』とか言う言葉。
そして極め付けが
「そうですわオルステッド殿下、先程王宮より言伝が参りました。ルーカス王太子殿下とジークムンド殿下がお越しになられるようです。魔法学のお勉強を一緒に見てくださるそうですよ」
「わぁ兄上達きてくれるの?うれしいなぁ!」
この俺や兄弟の名前と魔法!!
クワンドゥルス王国第三王子『オルステッド・フィン・クワンドゥルス』。
それが今の俺。俺は『湊 建人』と言う前世の記憶を持ったまま、あろう事か、本当に何をトチ狂ったのか、宏哉がハマってた攻略系ゲーム『LOVE ROYAL ROAD〜君と紡ぐ王国物語〜』に転生してしまったのだ!!
いや、ないわ。
ほんとマジでないわ。
『LOVE ROYAL ROAD〜君と紡ぐ王国物語〜』でプレイヤーが操作するのは第二王子。
王太子だった第一王子が死んじまったから次の王太子候補に選ばれる。なんで候補かっていうと、腹違いで同じ年齢の第三王子がいるから。
王立学園に入学してから卒業までの三年間で勉学に励みながら国内の行政改革を行い、貴族と国民からの支持率を上げ、高かった方が王太子に、未来の王になれる。
このメインストーリーを軸に恋愛あり、箱庭あり、ダンジョン攻略ありとやり込み要素盛り沢山な仕様。名前こそ微妙だがこの作り込まれたストーリーとゲームシステムが良くて、なかなか人気だったゲームだ。
このゲームの第三王子、つまり主人公の腹違いの弟が今の俺。
事あるごとに主人公を邪魔する悪役王子に転生とか、本当に、どうしてこうなった!!!!!
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