青年期編:そしてゲームは動き出す
ルーカス兄上の立太子パーティーからそろそろ10年。
俺も今年で18歳。
王立学園、卒業の年・・・つまりゲーム『LOVE ROYAL ROAD〜君と紡ぐ王国物語〜』のEDの年です!
「・・・ついにここまできたか・・・」
「ん?テッド、何か言った?」
「いや、ちょっと独り言」
隣を歩くジークムンドを横目に俺はこれまでの10年を振り返った。
初めての外交を約半年かけて行って帰って来たルーカス兄上は、それはそれは大量の馬車とマッサージ器(なんで!?)の注文書を持って帰って来てくれた。
あ、もちろん一度にまとめてではなく、その都度送ってくれてはいたけどね。それでもすごい量だった。
俺に対する嫌がらせを考えて準備していたであろう親父はそれを見て何も出来ず(だって兄上が外交を大成功させた証だし)。更にパーティーで王位継承権放棄を宣言したのも効いて俺の周りはいたって平和そのものだった。
マジありがたい!母さん、侯爵、本当にありがとう!!
にしてもベアリングとサスペンションは他の工房に作り方広めておいて本当に正解だったな。ガリオ工房だけだったらみんなの過労死待ったなしだったよ。
ま、それでもそんな怒涛は割と一時的な物で。今は広めた工房同士で切磋琢磨しながらどんどん新しい物が出来上がって来ているらしい。一個物が出来れば派生していくもんだよね。やっぱり技術は広めないとな!
毎回工房に行くのが楽しみでしょうがない!
ちなみに俺は14歳で魔道具師の国家資格を取った。
ペスターさんは13!13!!ってうるさかったけど、目立ちたくないんですよ俺は。つか14歳でも学園でザワつかれて十分困ったっての!
でも俺以上に学園をザワつかせたのはリディアナだった。
王立学園は一定以上の魔力を持った者が貴族平民問わずに入れる仕組みなんだが、リディアナはその中でも魔力量が歴代トップ!しかもレベルも既に92と、80以上がマスターランクだと言われる中でそれを大幅に超えていたのも要因となった。
冥属性だからと色々言われるのは避けられなかったが、そこは彼女自身強くなったというか、高いレベル自体が自信に繋がったらしい。
陰口なんてなんのその!上手く立ち回ったようで今では亡くなった家族やペットを一目見る事が出来るとか、学園に憑いた過去の教員や歴史家の話が聞けるなど。冥属性ならではの魔法運用でちょっとした人気者になっている。更に成績も上位5位以内と優秀だから、もう何処にもリディアナを悪く言う者はいない。
可愛くて頭良くて天使で人気者で性格も良いとか、俺の婚約者は完璧過ぎるでしょ!?
俺も負けてられないなぁ、ってなって魔道具を色々製作。せっかくだからリディアナが喜ぶものをと思って生クリームを簡単に作れる遠心分離機を作った。構造は割と簡単だしね、円形様万歳!
でもそれを見たペスターさんが
「アンタこれ・・・洗濯物の水絞りにもなるんじゃないの!?」
と、叫んだから、途中から脱水機も同時進行で製作。
すんごい偏見だって分かってるんだけど、あの見た目とあの性格で超家庭的な発想が出て来たのにすんごい驚いてしまった。・・・内緒だけどね!
他にも色々作ったけど、1番力を入れたのは道路整備用の魔道具。
元々道の整備は魔法か人の手で行っていた。でもどちらでやってもすごい肉体労働で時間がかかる。
だからちょっとでも楽になるように作りましたよ。某漫画でも有名な働く車『ロードローラー』!!
て言っても、もどきだけどね。
先ずどうしたって自動車が厳しいし。現代にあるやつみたいな円形の巨大な鉄の塊なんて流石に作れないから。
だから俺が作ったのは鉄の筒に水と大地と風の魔石を組み合わせた超簡易ロードローラー、というか巨大なローラー。
手順としては先ず道にする場所を大地属性使いに軽く整備してもらう。
次にロードローラーの大地属性魔石で大きさの違う砕石→砂利→煉瓦を順に生成して、都度ローラーで圧力とシャワー機能をつけた水属性魔石で水締めしながら押し均す。
ロードローラーの鉄筒の中は別の水属性魔石で水をめいいっぱい入れて重くし、それを風属性魔石で押して進めて行くって寸法だ。
ヨーロッパとかで良く見かける石畳の道がこれで完成。
同じ幅で均一に、平坦に均すって大変だもんね。あと終わったら水抜けば軽くなるから持ち運びも少人数でオッケーなのがミソ!
これでクワンドゥルス王国から他国への貿易路を粗方整備出来た。
ちなみにコレ、ルーカス兄上とジークムンドと俺、兄弟3人でやった初の国家事業!!
俺が物作って、ジークが人手集めて、兄上が他国と交渉。みんなそれぞれ得意分野で動いて一つの事をやり遂げた。
兄上とジークはこれで人の往来と物流がスムーズになるとか、俺たちの仲の良さがアピール出来たとか喜んでたけど、残念ながら俺の目的は違う。
俺の目的はただ一つ、『第一王子の死』の回避だ。
王立学園に入学を控えた14歳の時に思い出した。
むしろなんで忘れてたと自分を殴りたくなった。
ゲームの始まり、それは王太子である第一王子が死んだ事で勃発する王位継承争い!!
俺は確かに王位継承権は放棄した、だから争いは起きない。
でも兄上のことはどうだ?
結局俺は親父から放置され続けたし、リディアナも、俺の意思ではあったがゲーム通り婚約者だ。どこで、どんな形で、ゲームの強制力が働くか分からない。
怖くなった俺は大昔にゲーム内容をメモしたノートを引っ張り出した。兄上の死因は、外交中の事故死!
本来なら俺たちの入学前に亡くなってる兄上、でも今は生きてる、生きてるんだ。
なら、死になる要因を、徹底的に排除するのみ!!
俺はそれまでのらりくらりと先延ばしにしていた魔道具師の資格試験勉強に取り組んだ。実技は問題ないから筆記試験対策だけすれば良い。
ペスターさんのどギツい指導もあって、試験は一発合格。更に実技試験で見せた魔道具を即実用化してもらう為に兄上に掛け合った。それが、ロードローラー。
このゲームの時代背景的に事故として1番多いのは馬車。
そういう意味でサスペンションとベアリングはまさにグッジョブ8歳の俺!って感じなんだが、問題は道だ。
郊外になると重要な貿易路でも簡易に整備されただけの土道が殆ど。雨が続けば当然のようにぬかるむし、道がボコボコになって転倒しやすくなる。
だからせめて兄上が外交でよく使う貿易路だけでも整備を!工事期間を短くする魔道具も作ったから!
その俺の訴えを聞いて兄上はすぐに国家事業として他国と交渉してくれた。交渉には率先して叔父上も協力してくれ、更にジークも王族として行っていた慈善事業の伝手を使って人手を集めてくれた。
こうして兄弟3人と他国との共同で工事は行われ、俺たちの入学直前に終了した。
ルーカス兄上は、生きていた。
みんなと笑って、完成を祝った。
それから2年・・・今も、兄上は生きている。
「失礼しますルーカス兄上。書類届けてきましたよ」
「あぁ、ありがとうジーク、テッド」
「休憩入れませんか?今市井で人気のショートケーキをお土産に持って来たんですよ」
「っ!?生クリームたっぷり?」
「生クリームも苺もたっぷりです」
「素晴らしい!じゃぁこの書類が終わったらみんなで食べようか」
兄弟3人が揃って笑い合える今。
もう大丈夫だと、思った。
この平和がずっとずっと続くんだと・・・信じていた。
卒業を半年後に控えたある晴れの日。
突然の死が、告げられるその時まで・・・。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
青年期編始まりました!まもなくプロローグのシーンと繋がりますのでお楽しみに♪
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