笑うことも泣くことも出来なかった叔父上
べた褒めしてくる叔父上に俺は申し訳なさと居心地の悪さでオタオタしてしまう。
すると今まで一歩後ろに居たリディアナが俺の前に出て来た。そして8歳とはとても思えない優雅な身のこなしで叔父上に向かって深く礼を取る。
「エドモンド大公閣下に改めてご挨拶致します。わたくしはリディアナ・ツィルツ・ガーディア。ガーディア侯爵家の嫡子にして、次代の『守護者』にございます」
正式な場でしかしない礼に叔父上は驚く。
だけどすぐにリディアナが何故もう一度名乗ったかの意味を理解したみたいで。僅かに思案してからハッとして顔を上げた。
「次代の『守護者』にと、その年齢でもう決まっているのか?つまり、既にそれだけレベルが高いとー・・・まさか、義姉上を!?」
「はい、つい先日来世の輪へとお送りいたしました」
「そうか。・・・お会いしたかったが、年数で考えれば良く保っていたものだ・・・それも君のおかげなんだろう。礼を言う」
この反応・・・そこらへんの奴らみたいに、ガーディア家が『冥属性が出やすい家』ってだけの認識じゃない。
ちゃんと知っているんだ、何故『出やすい』のかを。
「もったいないお言葉にございます」
「では、オルステッドのこれまでの動きは全て義姉上の入れ知恵があったから、ということかい?」
「まぁ、そういう事です」
「ご謙遜が過ぎますわテッド様」
「え、リディ?」
「玩具などの開発関係は全て貴方様お一人の物ですし、王位継承権放棄もご自身で言い出したことではありませんか」
「いやいやあのね〜、俺はいっつも考えるだけなの。おもちゃは侯爵が紹介してくれた職人さん達が居なきゃ形になってないし、兄上のパーティーの時だって完全に君と母さんにおんぶに抱っこ状態だったじゃないか?」
「あら、テッド様を抱っこ出来るだなんてわたくし幸せですわ!」
「いや物理的な話じゃなくてさ・・・」
「んンッ!・・ふ、ははっ!本当に面白いね君たちは」
まぁーた笑ってるよこの人、マジで笑いの沸点低いな。
あ、でももしかしたらこんな風に笑ってる余裕がなかったのかもしれない。優秀だけど根っからの苦労人気質みたいだもんな。
今度マッサージ器の魔道具でも作って送ろう。掌サイズの球体をたくさんクッションの中で動かす回路・・・うん、いけるな!
「はぁ、こんなに笑ったのは久々だ。・・・ところでオルステッドはガーディア家のことを知って・・・いや、無駄な質問だったね。あの堅実なガーディア侯爵が何の説明もせずに婚約を進める訳が無い」
「え?あぁそうですね。侯爵領のことも、リディアナの役目も話して頂きました」
回路図組みに集中してて一瞬反応が遅れた。
いかんいかん、まだ叔父上とお話中!聞かれるだろうと思ってた内容で良かった!!
この国の者なら幼少期にほぼ必ず読み聞かせられる絵本、『王様になった勇者の物語』。
この絵本は実話を元にしていて、此処クワンドゥルス王国の建国記。実はそれにガーディア家が深く関わっている。
ファンタジーあるあるだが、今から1000年以上前、この地にも人々を苦しめる魔王が存在した。
悪い魔王がいれば当然勇者が存在する訳で。その勇者は仲間たちと数々の試練を乗り越えて魔王を封印することに成功した。
討伐じゃない、『封印』だ。
たくさんの仲間達と挑んで尚、魔王を倒しきることが出来なかった。
だから最終手段として封印した。
勇者の仲間で聖属性と冥属性両方の魔法が使えたと言う神官が、仲間と連携して聖属性で魔力を抑え込み、冥属性で魂を眠りにつかせることで封印したらしい。
そうして平和になった世界で勇者は初代国王となって国を治め、神官は魔王を封印した場所を自領として貰い、生涯を魔王封印に捧げた。
その魔王が封印されている場所がガーディア領。
つまりガーディア家は封印に尽力した神官の子孫。そして常に魔王の魂が覚醒しないように封印を見張る『守護者』としての役割を持っている。
だからこれまでガーディア家は積極的に冥属性使いの者と結婚してきた。魔法属性は子に遺伝しやすいから。
結果、冥属性使いが『出やすい』家系になったと言う訳だ。
ちなみに今の魔王封印の守護者はリディアナのおばあさま。
まぁおばあさまと言っても、まだ50歳手前。現役バリバリで、本人も
『後20年はお役目果たすから、それよりひ孫よろ!』
なんて平気で言ってくる美魔女である。
頼もしいけど、8歳の孫に言うセリフじゃないよねおばあさま!!
「知った上で、君はあの家に婿入りするんだね?」
「知ってもリディへの気持ちは変わらなかったんで」
「おやおや、熱いね。・・・あ、すまない足止めしてしまったね。義姉上のところに行こうか」
先程までとは比べ物にならない程晴れやかな表情で微笑む叔父上はそう言って歩き出して、俺たちもついていった。
母さんの墓はここ最近では1番新しい墓になるから墓所の1番端っこ。白い石が半円に彫られ、小さな花の装飾が飾られている。
「母さん、来たよ」
「本日はエドモンド大公閣下も一緒ですわ」
「・・・・・・・お久しぶりです、義姉上。なかなか来られなくてすみません」
母さんが好きだった青い花の花束に、お酒が苦手だった母さんが唯一飲めた果実酒を一緒に供えて、みんなで祈る。
横をこっそり見ると、叔父上は祈らずにただじっと墓標を眺めていた。
そういえば、叔父上はずっと他国を行き来していて・・・母さんの墓参りは今日が初めてなんじゃないだろうか?
恐らく同じ考えに行き着いたリディアナと目が合って、無言で頷き合う。
そして
「叔父上、俺たちは先に帰ります」
「・・・え?あ、それなら私も」
「駄目ですよ、母さんに報告する事い〜〜っぱいあるんでしょ?」
「どうぞごゆっくりと語り合ってくださいませ」
「お手紙書きます。また今度、母さんの話を聞かせてくださいね」
有無を言わさず、ぽかんとする叔父上を残して俺たちはさっさと墓所を後にした。
ごめんね母さん、今度ゆっくりくるから。
今日は、叔父上の話を聞いてあげてね?
後日、俺はぺスターさんに相談して叔父上に送るマッサージ器を制作した。ぺスターさんもこれは面白い!って言って忙しい中、優先して監修をしてくれた。
出来上がった物は離宮のみんなに試して貰って一発クリア!めっちゃ大好評で取り合いになってたな。今度みんなの分も作ろ。
その他のテストも問題なくクリアしたから何とか叔父上が領地に帰る前に間に合って渡す事が出来た。もちろん俺が直接ではなく、ガーディア侯爵伝手でこっそりとね。
で、それを途中まで同じ馬車で移動していたルーカス兄上に見せたらしい。
兄上はお墓参りの話で涙し、笑い、マッサージ器で頭を抱えた。叔父上もてっきり魔道具師にお願いして作らせたのかと思ったら俺制作だと聞いてやっぱり頭を抱えたらしい。
実は前科がありまして・・・と、馬車の車輪の魔道具の話も聞いて更に頭を抱えたとか。
長旅で大変なのに
『凄い体が楽だ、ありがとう!でも軽々とこんな凄いもの作るな、気をつけなさい!』
と、言うお礼と説教の分厚い手紙が連名で届いた。
めっちゃ単純構造なんだけどなぁ。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回から青年期に入ります!いよいよ題名のシーンが近づいてきましたので、どうぞお楽しみに♪
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