俺謝る側だった・・・
「いいお天気ですわね、テッド様」
「本当、風も気持ちいいね。ピクニックとかするのにちょうど良さそう」
「そうおっしゃるのではと思って、我が家のシェフがサンドイッチとマカロンを持たせてくれましたわ」
「え、マジで!?やった!」
「ふふふ、あとでいただきましょうね」
「うん!」
「・・・」
「・・・」
「ー・・・静か、だね」
「いつもでしたら、ここぞとばかりにソフィア様の歴史講座がありますものね」
「うん、でも・・・今年からはこれが当たり前だ」
今日は母さんの命日だ。
墓参りには毎年行っていた。ぶっちゃけ5歳までは月命日も行っていて、それが俺にとって唯一の外出だった。
でもリディアナのおかげで母さん本人に会えて、命日以外は行かなくなって・・・。
多分、今日からまた、月に一度は必ず此処に来るようになるんだろう。
ちなみに今王家の墓所にいるのは俺とリディアナだけ、護衛は入り口で待機中。墓所を荒らされない様にする為、入れるのは王族とその伴侶や婚約者のみと言う決まりがあるんだ。
本当は兄上たちも一緒の予定だったんだけど、ルーカス兄上は外交準備で時間が合わず、ジークムンドはアルジュリーネ主催の茶会に強制連行されたって。
理由が理由だから仕方ない。でもなぁ、ルーカス兄上はこれから数ヶ月会えなくなるから会いたかったんだよぉ〜、残念。
なんて考えながら墓所の小さな小山、というか丘を登っていると並ぶ墓の前に誰か立っていた。まさか親父!?って思ったけど明らかにスタイルが違う。ぶよじゃない細マッチョだ。
その人は俺たちの足音に気づいたのか、こちらを振り向いて・・・って、ウソだろ、マジで!?
「あぁ、来たね。・・・はじめまして、オルステッド、リディアナ嬢」
イケメン叔父上きたーーーーーっ!!?
ちょっと青い花の花束似合い過ぎで男の俺でもドッキドキですーーっ!
「叔父上?!はぃっはじめまして!!」
「え、エドモンド大公閣下にご、ご挨拶申し上げます!」
予想してなかった人物に俺もリディアナも大慌て!おかげでちょっと挨拶がグダってしまったのに叔父上はにっこりと微笑みかけてくれた。
「ふふ、そんなに緊張しなくて良い。私もソフィア義姉上の墓参りに来たんだ。同行させてもらって良いかい?」
「は、はい!叔父上と一緒なんて嬉しいです!!」
「ありがとう、では行こうか」
「はい!今日天気が良いのはきっと叔父上が来てくれたからですね。母さんが喜んでいるんですよ!」
「・・・そう、思うかい?」
「勿論です!戦友のような間柄だったと聞きました。そんな人が来てくれて喜ばないわけないです!」
「ルーカスの言う通り、君は本当に良い子だね。なのに、私は・・・」
そう言ったあと黙り込んだ叔父上は足も止めてしまった。俺たちも揃って止まり、長身の彼を見上げる。
すると叔父上は急に、本当に急に、俺に向かって深く頭を下げてきた!
「お、叔父上!?」
「閣下!?」
うえぇ〜ーーーっ!?!!ちょっとなになになんで何してんだこの人!!?頭上げて〜ーっ!!!
現実でも心の中でもオタオタしている俺たちなんて気にせず、叔父上は頭を下げ続ける。いや本当なんでだ!?
「君が離宮に閉じ込められている間、私はなにもしてあげることが出来なかった。兄を諌めること、君を引き取ること、援助すること・・・私はそれをすべきだったのに、出来なかった。本当にすまない」
「叔父上・・・」
・・・いやいや、なんかすっごい申し訳なさそうにしてるけどさ、俺を引き取るとか無理だよね?何も出来なかったって、出来るわけないよね?
だってこの人、ついこの間まで隣国の戦争止めに行ってたじゃんか!?
確か母さんと一緒に友好条約を交わした国が他の国と戦争になりかけてて、それがこの国にも飛び火しそうになってたのを止めてたって。
両国の情勢がきな臭くなったのは母さんが亡くなった直後くらいで、それから何年もの間、三国を行ったり来たりして仲介役を続けて・・・。本来ならある筈の王都からの援助も一切ない状態で、それでもどうにかこうにかして三国での講和条約を結ぶことが出来たんだって。
兄上からはそう聞いている。
「叔父上、貴方が止めてくれたおかげで俺は戦争とは無縁の生活を送れていました。だから、何も出来なかったなんて言わないでください」
戦争を止めてくれた事自体が、俺にとっては1番ありがたい。
それこそ大きな戦争になっていたら、俺への生活費なんて真っ先に切られていただろう。そうなれば離宮のみんながもっともっと苦しい思いをしてたかもしれない。
ーー・・・ていうか、なんかイライラしてきた。
だって、なんで叔父上が謝るんだよ。謝る必要ないよね?むしろ俺と一緒に謝ってもらう側だよね?
王の責務も父親としての養育義務も放棄しちゃってるどっかの御馬鹿様が首差し出す覚悟で土下座して謝るべきだよね!?
「・・・んぐっ!ごほっゲホっ!」
ん?頭あげて急に咳き込んだと思ったらなんか叔父上、プルプルしてないか・・・もしかして、笑ってる?
「テッド様、多分お心内が全部声に出ちゃってますわ」
「え!?マジで!!?」
「ふふふ、あっはっはっはっはっ!!」
わぁ爆笑だぁ・・・なんか最近笑われ過ぎじゃ無い?
「ははは、ふふ、すまない。そうか、私は謝ってもらう側なのか・・・そんなこと、考えたことも無かったよ。オルステッド、私はねソフィア義姉上の死後すぐに君を迎える準備をしていたんだ。あの兄が君をまともに育てる訳がないって分かっていたからね」
おいおい、実の弟にすぐさまその判断をさせる兄貴ってどうよ。それまでどんだけ母さん嫌いとダメさを周知させ続けてたんだあのクソ親父は・・・。
「けれど両国の情勢が良くないという情報が直後に入って来て・・・そこからは、もう君の事を考える余裕すらなかった。仲介は上手くいかず、王都からの援護、いや、義姉上の援護が無いと自分はここまで無能だったのかって・・・情けなくなるぐらいだったよ」
「情けないって、そんなことありません!!」
「そうですわ!閣下のご尽力で講和条約は無事結ばれたではありませんか!」
「ありがとう、でもそれくらい追い詰められていたんだ。三国の講和条約締結も殆ど奇跡みたいなものなんだよ。そしてやっと君を迎えようと、どれだけ辛い思いをしてるだろうかと、調べさせた。そうしたら、・・・ふふふ」
あれ、さっきまで辛そうだったのにまた笑い出して・・・叔父上実は笑いの沸点低い?
「思った通り冷遇されているという報告書が来た。怒りに震えながら次のページを捲ったら、ガーディア侯爵を味方につけた上に遊具専門の商会まで起こしてるって書いていてね。二度見どころじゃ無い、三度見四度見したよ!もしかして私の助けはいらないのか?って」
「あー・・・」
「しかもこの間のルーカスの立太子パーティーで王位継承権を放棄しただろう?これで下手に私が手助けなんてしたらパーティーでの君の行動が無駄になっちゃうじゃないか!もう会いに行きたいのに行けなくて本当に困ったよ」
「ぁ〜えーぅ〜・・・なんか、すみません」
なんてこった、俺謝る側だったわ。叔父上ごめんなさい。
「あぁ謝らないでくれ。君を責めたい訳じゃないんだ。むしろ8歳でこれ程の事を成してるなんてすごいよ!さすが義姉上の息子だと思ったものだ」
「あー〜・・・いや、え〜っと・・・」
前半は殆どガーディア侯爵のおかげで後半は母さんのおかげです!詐欺なんです、すみません!!
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