その工作、国家資格レベルです
「ーーー・・・・・さて、今後の対策を練りたい。皆少し時間をもらえるだろうか」
ずっと下げていた顔を上げた兄上の掠れた声にその場にいたみんなが頷く。
目元が赤いのはご愛嬌、だって全員そうだから・・・と思ったらサリナとメリーが冷やしたタオルとレモン水を配ってた、しかも人数分。いつの間に準備してたんですか、本当うちのねえさん達有能過ぎ!!
「ジーク、すまないが先に戻って時間稼ぎをしてもらえるかい?母上達が騒ぎ出したらで構わないから」
「うん、任せて・・・じゃぁまたね、テッド!!」
「お、おぅ、またなジーク」
兄上に言われて立ったジークムンドが俺の方を向いたかと思うと、ぎゅう〜ーーーっ!と抱きついてきた。
苦し、って思う前にパッと離されてニコッとエンジェルスマイル。そして何事もなかったように護衛のベルトとそれぞれの持ち場に戻るザック達を連れて部屋から出て行った。
ーーえ?なんだったの?
「・・・何でハグされたんだ俺?」
「ふふ、何故でしょうね」
頭にハテナマークを乱舞させてる俺にみんな微笑ましいとばかりににこにこ顔。リディアナにいたってはまるで引き継ぐかのように腕に抱きついてくるし・・・ま、可愛いから良いか!
そうして俺がへらっと笑ったのを見届けてから、兄上が姿勢を正して空気を変えた。
「とりあえず今1番に警戒しなきゃいけないのはもちろんの事ながら父上達だ。特にテッド、今回君が献上した『ベアリング』と『サスペンション』で問題を起こさせようと考える可能性がある」
え〜なにそれ。例えば、似たものを作らせてワザと事故を起こすとか?それで反逆罪だ〜とか言ってくるって事?
ヤダァ父上コワイィ・・・なーんて、なりませんよ。
「無駄なこと考えますね〜」
「おや?反応からして既に対策済みだね?」
俺はそれにニヤッと笑って答える。
兄上の言う通り、母さんとガーディア侯爵に助言をもらってバッチリ対策済みなのです!
まず金属の配合から金型、その他作り方全てを商人ギルドに特許登録して守ってもらっている(良かったこの世界にも特許制度があって!と思ったら母さんが技術者を守る為に作ったものでしたよ!ありがとう母さん!!)。
更に部品一つ一つにシリアルナンバーを施し、更に更に最後の仕上げとして完成品には工房の親方の魔術印をつけてある。
魔術印とは自分だけの魔法の印。
指紋と一緒で1人1人違っていて、同じ物は絶対に存在しない。契約書とかによく使われていて、偽装はもちろん違法。
それを完成品に施したから、一つでも部品が違ったり欠けていたりしたら魔術印が完成しない仕組み。つまり勝手な改造等は出来ないし、すぐバレるってこと。
「さすがだ。それだけやっておけば、とりあえずは問題ないだろう」
兄上からもお墨付きが貰えて一安心、かな?
実際めちゃくちゃ手間がかかるんだけど、それくらいやっておかないとね。別で偽物作られたり改造されて難癖つけられたらたまったもんじゃない。
「それから現在商人ギルドを通してガリオ工房と繋がりのある工房にも作り方を伝授していっております」
「みんな新しい物作れる!!って大張り切りでしたよ!だから、兄上が外交から帰ってくる頃にはいくつかの工房でも親方レベルの物が作れるようになってるんじゃないかな?」
「!!?ははは、良いね!ここ近年新しい輸出品がなかったんだ。バッチリ宣伝してくるよ!!」
「よろしくおねがいしまーす!」
「ガーディア侯爵、後で金額や納期の詳細を送ってくれ」
「かしこまりました」
「どこまで宣伝で周知させるかも話し合わねばね」
「はい、詳細をお持ちした時にでも」
他国からの注文を貰ってくるのは王太子である兄上だ。さすがの親父達も兄上の功績の邪魔は出来ないだろう。
とりあえず話しがまとまってやれやれだ。あとは兄上達に任せれば問題ない・・・あ、そうだ。
「ガーディア侯爵、兄上にあげたやつは魔道具だから他とは金額も納期も変わりますよ」
「・・・え?」
「・・・はぃ?」
ーーあれ?みんな固まっちゃったけど、どしたの?
「テッド・・・今なんて?」
「兄上のベアリングは魔道具だよ、って。まぁ後輪だけですけど」
「んーーーー、ジークごめん時間稼ぎ確定だ。テッド、詳しく聞こうか」
「私も初耳です」
あれぇなんで詰め寄られてるの俺?
とりあえずみんな(特に兄上と侯爵)の顔が怖いから俺はすぐさま説明を始めた。
そうは言っても難しいことは何もしてない、後輪のベアリング内部に風の魔力を持つ魔石を組み込んだだけだ。
仕様としては一定のスピードが出ると魔石が反応して風を起こし、車輪の回転を後押しすると言う物。これでスピードが上がるのは勿論、勝手に車輪が回ってくれるおかげで馬車を引く馬の負担が軽減される。つまり馬替えの頻度を抑えられるし、ちょっと荷物を多くなっても馬車の荷重範囲内なら馬の負担にならないって事。
スピードの感知や魔法の発動は魔石に直接魔力で書き込んだ回路図で行う、ようはプログラミングと電子回路だ。俺が正に高校で習ってた事ですよ、考えるの超楽しかった!書き込みにはちょっとコツがいったけど、はんだごての要領を思い出せばどうにかなった。
ちなみに魔石は現代で言うところの充電式電池に近い。その魔石が宿す魔力が何の属性か分かっていたら、例え空になっても同じ属性の魔力を注ぎ込めばもう一度使う事が出来る。エコだね〜。
「ーーベアリングに着けた魔石は1日10時間使った上で1週間持ちました、だから70時間ですね。日にどれくらい馬車移動するか分からないから3、4日毎に兄上が風属性の魔力を込めれば多分だいじょう・・・みんなどしたの?」
頭抱えてたり、苦笑いしてたり、首を傾げてたり。あ、リディアナはキラキラした目で見てくれてる。可愛い!!
「と、とりあえず仕様は分かった。分かったが・・・え、魔道具の魔術回路を、組んだの?テッドが?1人で?」
「基本はぺスターさんに教わったけど回路を組んだのも書き込んだのも俺ですね。あ、ちゃんとぺスターさんに問題ないか確認はしてもらったし、監修の元で稼働実験もしましたよ!?」
「それは疑ってないよ。で、ぺスターさんと言うのは?」
「ガリオ工房の隣でお店やってる魔道具師さん」
「私が紹介した優秀な職人の1人ですが・・・いつの間にそんなことを」
「えっと、工房に遊びに行った時に?」
「「はぁぁぁぁ〜ーーー・・・・」」
「なんでそんなどデカいため息つくんですか!!?」
俺なんかおかしな事しちゃった!?
「お、お母様、お父様・・・魔道具師って確か・・・」
「国家資格よ」
「裁判官や弁護士ほどでは無いが、難関資格の一つですな」
「ですよね・・・え、それをオルステッド殿下は理解していらっしゃると!?工房に行き始めてからまだ2年ほどですよ!?」
「それどころか新しい回路の組み上げまでなさっているわね」
「えぇ〜・・・」
「末恐ろしいとは、まさにこの事だわ」
「全くだ。ソフィアお嬢様は、ご自身を超える天才をこの世に生み出されたようですな」
今回の事でみんながもっと『常識』を教えよう、と決意した事を俺は知らない。
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