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パパは心配性(ガーディア侯爵視点)



「リディアナーーっ!リディーーーっ!!」


 なんと言う事だ・・・リディアナが、我が家の天使が、居ない!!!


 ああぁぁ、なんだって私はあの子から目を離してしまったんだ!!あんなに可愛いんだ、もしかしたら不埒な輩に攫われてしまったのかもぉぉうぉぉおぉぉっ!!?


「が、ガーディア侯爵?あの、大丈夫かい?」

「え、あ、これはルーカス王太子殿下!お騒がせいたしまして申し訳ございません」

「あぁそんな構えないで。先程からご息女の名前を呼んでいるようだが、もしかして居ないのかい?」

「ぁ・・・はい、実は商談の話をしている間に何処かへ行ってしまったようで・・・。勝手に遠くへ行くような子ではないのですが」

「それは大変だ。カール、すぐに見回りの騎士達が見ていないか聞いてきてくれ」

「かしこまりました」

「は、いえ!殿下のお手を煩わせる訳には!!」

「動くのは部下だから気にしないでくれ。それより私は今から末の弟の様子を見に離れのガゼボに行くので、侯爵も一緒にどうかな?幼子とはいえ立派なレディだ、もしかしたら蝶のように花に誘われてしまったのかもしれないよ?」


 確かにリディアナは花がとても好きだ、ここの薔薇は見事だしそれもあり得るか。それに私が1人で闇雲に探すよりも、警備の者達に探してもらう方がきっと早く見つかるだろう。


「ご配慮いただき、感謝申し上げます」

「ふふ、本当に気にしないで。では行こうか」


 ーーどうやらルーカス王太子殿下は移動のついでに人目が無いところで話しがしたいようだしな。




「・・・貴殿から見て、末の弟はどうだったかな?」

「そう、ですね・・・ソフィア様に生き写しで驚きました。我々への挨拶もこういった場が初めてとは思えぬしっかりとした態度で応対しておりましたし。故に・・・少々、危険かと」

「あぁ、一部の過激派が担ぎ上げてくるかも、と?」

「はい」

「それならそれで、僕は王位を譲っても全然構わないんだけど」

「ルーカス殿下!」

「ふふふ、冗談さ。・・・オルステッドもジークムンドも、王家のいざこざになんて絶対巻き込ませないよ」


 冗談交じりで言っているが、その瞳には断固とした強い意志を宿している。

 血が繋がっていないと言うのに彼はこう言ったところがソフィア様に良く似ている。この眼とソフィア様から学んだ知識と行動力があるからこそ、『前王妃派(わたしたち)』は彼について行こうと決めたのだ。

 



「あーーーんッダメ!ダメですわ!!」


 ルーカス殿下と話している最中、リディアナの悲鳴が奥のガゼボから木霊した。

 あんな大きな声、聞いた事がない!もしや悪漢に襲われているのか!!?


「リディアナ!?!ーー・・・あれ?」


「よし、角とーった!!」

「あーんもう!テッドさまずるいですわ!!そこねらってましたのに〜っ!!」

「ふっふっふ、勝負の世界は厳しいんだよ」

「むぅっ!あ、ではわたくしはこちらを!」

「え、うそ!!そこ気付いてたの!?」

「ふふん、とうぜんですわ」

「うわぁこれもう挽回出来ないよっ!リディ強すぎじゃない?本当に初めて?」

「テッドさまがおつくりになったゲームでしてよ?はじめてにきまってますわ」

「うぅ〜悔しいぃ!もう一回!!」

「うけてたちましてよ!」


 慌てて駆け込んだ私とルーカス殿下の目の前ではしゃぐ子ども2人・・・。どう見ても悪漢に襲われたとかではない、な。


「な、なんだか、随分楽しそうだね?」

「はい・・・本当に・・・」

「あ、おとうさま!!」

「リディ!急に居なくなったから心配したよ。オルステッド殿下と一緒に居たのかい?」


 安心して近付くとリディアナが気付いて抱きついて来た。あぁ本当に無事で良かった。

 ところで2人は何をしていたんだろう。声を聞く限りだと遊んでいたようだが・・・。テーブルには小さな正方形がたくさん書かれた四角い盆と二色の丸いタイルが並んでいるが。なんだコレは?遊具、なのか?


「まいごになっていたところをテッドさまがみつけてくださったの。そうだ、おとうさまこれみて!!」

「ぬいぐるみ?・・・っ!?」


 お気に入りのぬいぐるみを見せられて私は驚きを隠せなかった。

 腕が自在に動く、だと!?


「テッドさまがブルーベリーのとれたてをなおしてくださったの!しかもうごけるようにしてくださったのよ!!あとこのゲームもテッドさまがおつくりになったんですって!」


 どういう仕掛けだ?いや待て、これはカフスボタンか?そうかそれを軸にしているのか!

 柔らかい布で作る人形は手足が固定されているのが基本だ。それをこんな既存の物を利用して・・・素晴らしいアイディアだ!!これは絶対売れる!

 しかもあの盆も手製だと!?まさか、5歳児が!?


「兄上ごめんなさい。あげる予定だったカフスボタンとゲーム、リディアナにあげちゃいました・・・」

「え、プレゼント用意してくれてたの?!でもあげちゃったの?そっかぁ・・・可愛い女の子には勝てないかぁ・・・」

「本当ごめんなさいっ!材料あるからすぐ作ってきますから!あ、そうだ、今度一緒に作りましょう?簡単だし俺教えますから!!」


 教えるって、え、本当にオルステッド殿下の手作り?

 いや、気になるが先ずはお礼を言わねば。


「オルステッド殿下、娘の相手をしてくださり、誠に有り難う御座います」

「あ、頭を上げてくださいガーディア侯爵!お礼を言うのは俺の方です!」

「?娘が、何か?」

「リディアナ嬢のおかげで、俺は初めて母の姿を見ることが、いつも傍で見守ってくれているのを知ることが出来ました。本当に・・・嬉しかった」


 これは・・・今日1番の驚きかもしれない。

 リディアナが魔法を使ったのか?あんなに冥属性を怖がっていたのに?


「テッド・・・ソフィア様と会えたの・・・?」

「うん、とっても優しそうでしたよ」

「そうか・・・そう、か・・」


 ルーカス殿下が涙を浮かべてオルステッド殿下を抱きしめている。どちらも嬉しそうだ、特にルーカス殿下はそうだろう。


 巷では産後の肥立ちが悪くて亡くなったと言われているソフィア様だが、本当は過労死だ。産後すぐに馬鹿陛下が起こした問題を解決する為に無理をされ、その無理が祟って亡くなられた。王家の汚点だと秘されているが、ルーカス殿下はそれをずっと気にされていたのだ。

 父親が馬鹿でなければソフィア様はもっと自由で、何よりオルステッド殿下と思い出をたくさん作れたであろう、と。


 自然な形ではないが親子が触れ合えた、それを我が娘が自ら進んで助力したとは・・・。

 妻に良い土産話が出来たな、うんうん。


「失礼致しますガーディア侯爵様。こちら、我が主オルステッド殿下からでございます」


 ・・・なんて、美しい兄弟愛と娘の成長に感動していたら侍女がスッと近付いて来て、折り畳まれた紙を渡して来た。

 紙には茶会に来ている同じ年頃の子息の名前が数名分と、冥属性使いを貶める言葉がいくつも書かれている。

 まさか、まさかこれは・・・。


「あ、メリー渡してくれたんだね。ガーディア侯爵、それはリディアナが聞かされた罵詈雑言とブルーベリーの腕を千切った人間もどきの名前です」


 やっぱりか〜ーっ!!おのれよくも我が家の天使に!!


「テッドさま!?いつのまにそんなメモをおとりに!?」

「メリーにこっそりパパッとね!俺のメリーねえさんマジ優秀!!大体は爵位が下ですし、リディアナを泣かせたんだから思いっきりやっちゃってください。兄上も良かったらこの辺りとか手伝ってあげて」

「どれどれ・・・あ〜、ちょうど切ろうかどうか悩んでた家だ、任せて」

「殿下方、ご助力に感謝申し上げます」

「え、おとうさま?みなさま?あのわたくしだいじょうぶですわ!だっていつものことで、ぁ!!」


 リディアナが慌てて下を向いて口を隠したが出てしまった声はバッチリ私達に聞こえてしまった。


 いつものこと・・・いつものことだと!?


 ずっと、言われていたと言うのか。この子の魔法属性が分かる前から・・・我が家が『冥属性が出やすい家系』だから!!


「リディ、俺言ったよね?冥属性は素敵な魔法だって。母さんに会えた魔法を、会わせてくれたリディをこんな風に馬鹿にされるなんて君が許しても俺が許せない」

「テッドさま・・・」

「だから・・・」


 口を滑らせた事に慌てているリディアナの肩にオルステッド殿下が優しく手を置く。

 真剣な表情で訴える姿に感動していた私達だったが、


「ーーぴぇっ!?」

「覚えてる事ぜぇんぶ話そうか、ね?」

「は、はぃぃぃぃっ!」


殿下のそれはそれは黒い笑顔にリディアナだけでなくその場に居た全員が怯え、


「「「「(絶対怒らせないようにしよう!!)」」」」


と固く誓ったのだった。





ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字ありましたら、知らせていただけると大変助かります。


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