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「くふ……そんなところ……くすぐらないでよ……お父さん…………あれ?」


 ふと、眩しさを感じ、目を開ける。

 俺はだだっ広い平原で寝ていた。

 時刻は昼間のようで、太陽がさんさんと降り注いでいる。


「どこだここ……あ!」


 そうだ、確か自室にいたら急に変な場所に呼び出されて、そこで神を名乗る変な人に異世界に飛ばされるみたいなことになったんだった。

 え……てことはここってまさか異世界……? いやいや、そんなことあり得ない。異世界なんて、この世にあるわけ……きっとここは地球上のどこか知らない場所だろう。きっと今この様子を監視カメラかなんかで観察されていて、それを複数人で囲んで賭け事なんかされて楽しまれているのだ。貴族の遊びというやつか。くそっ、気に食わないな。


「とにかく助けを求めよう。それが一番早いはず」


 こんなもの警察ざたレベルの大事件だ。訴えて絶対あいつに目にもの見せてやる。俺をここまで怒らせた罪は重いぞ。


 決意を固めた俺は周りをキョロキョロしてみた。

 すると近くに簡素な舗装の施された道のようなものがあった。

 とりあえず向かって右の方向へと辿って進んでみることにした。

 正直この道を進んだ先でどうなるなどという確証はなかったが、ここでじっとしていたとしても餓死するだけだ。それにこれが貴族の賭け事に使われているとしたら、まさかいきなり餓死してゲームエンドなどというつまらない展開は用意しないだろう。現に近くに道があるというのが救済措置で、これを辿ればきっとどこかに辿りついてくれるはず。そんな推理を元にした考えだった。


 そして十五分ほど歩いたところで、変化があった。

 どこか遠くから金属のガシャガシャいう音が鳴り響いてきたのだ。


「なんだこの音は……」


 よく分からなかったが、きっと近づいて見てみろというサインなのだろうと思った。

 音のなる方向は丁度道をさらに進んだ先にありそうだったので、そのまま進む。


 そしてやがて道上に動くものが見えてきた。


 まず目を引いたのは、武器を持つ生物の存在だった。

 中学生くらいの背丈ではあるのだが、武器を装備した複数人の集団が、同じく武器を持った女と戦っているのだ。

 それだけでも異常な光景だとは思うが、さらに驚くのが、その集団の方の容姿にあった。

 その生物たちはたしかに二足歩行をしてはいるが、その顔は人間のもとは程遠く、耳は頭から上に長く、鼻面は尖っていて、ケがうじゃっと生えている。明らかに獣の頭部のそれだった。

 獣人。そんな単語が脳裏をよぎる。

 ……あ、あれか、やけにリアルだが、結局そういう衣装ってことだよな。何をどう考えてもこんな生物が地球上にいるわけないもん。特殊メイクやらなんやらを駆使して時間を掛けて準備したに違いない。でもその割にはものすごくリアルだけどな。地面に倒れている獣やら人間やらから流れる血も本当にリアルだし、匂いなんかも臓物のもたれた匂いが凄く鼻について吐き気を催すくらいだし、これは本当に最先端の技術が使われている感じか。すごいな最近のスナップ映画というのは。ここまで忠実に再現できるとは、恐れいったぜ。


 そう思いながらもキンキンと武器を交える両者の攻防はかなり圧倒的なもので、思わう呆然と見入ってしまう。複数人の獣人に対し、少女はたったひとりで戦っている。少女の後ろに馬車のようなものが見えるので、それの所有者が少女ということだろうか。予想するに、馬車で移動中にこの獣人たちの襲撃にあり、泥沼の攻防に発展している……という設定なのだろう。さしずめ少女は護衛といったところか。

 もうすでに獣人も人間も何人か倒れているし、戦闘から少し時間が経っているのかもしれない。

 それでもその少女はたったひとりで可憐に獣人共の攻撃を捌き切っている。


 思わず感動してしまうが、いつまでもこうしているわけにはいかないと気づく。

 なかなか戦闘は終わりそうになく、長期化してしまいそうだ。

 となれば、その理由は俺を待っているからではないのかと、うっすら勘ぐってしまう。


 そうだ、これが貴族の賭け事であるならば、ただ俺にこれを見せるためだけに用意されたものだとはとてもではないが思えない。

 おそらく俺を巻き込んで、なんやかんやしたいはずだ。でなければ俺をここに呼んだ意味なんてまるでなくなる。こんな手間掛けてまでそんな無意味なことをするはずもないだろう。

 となると俺はこれに対してなんらかのアクションをしなけらばならないのではないだろうか。

 そこから新たな展開に進展し、賭け事も盛り上がっていくということになるのかもしれない。


 ああ、なんだよもう、こんなもの無視してどっかいってやろうかな。

 いや、でも結局俺はもう貴族どもの手の平の上で踊るしかないのか。

 俺に選択権はないよな。

 もういいや、貴族たちのいいように行動してやろう。

 それが俺の生きる唯一の術だろう。

 いいように乗っていったところで、ふと隙をついて、大逆転してやる。

 そうだ、それが俺のやり方、唯一の生き筋。


 そうと決まればさっそく行動だ!


「おーい! こっちを向けよ!!!」


 俺はやけくそで叫ぶのだった。

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