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アカウントBAN〜バグとチートでぶっ壊れた世界に放り込まれた時の攻略法〜  作者: アスク
「ここに呼ばれた理由はわかりますね?」
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01 誤BAN

この作品は、過度なパロディネタ、下品なネタが多分に含まれます。苦手な方はご了承ください。







「────555体のゴリラと喋るストライプ柄のパンティが睨み合っている」



 

 まずもって目の前の展開を理解するのは不可能で、唖然とするしかない。

 だが今言った状況は紛れもない事実だ。


 まず、ゴリラがいっぱいいる。


 その向かい側にストライプ柄のパンティがいる。


 で、そのパンティが喋っている。


 パンイチの人じゃない、パンティそのものが声を発しているのだ。

 それもゴリラに向かって。



「おれは『ゲリラゴリラ』1匹のゴリラを増殖バグで555体まで増やし、無敵の民兵(ゲリラ)を作り上げた結果アカウントBANされた男」


「俺は『袴パン一郎』、ガチガチの鎧装備にハマってしまった妹にシマパンを履かせようとテクスチャ変換チートを使用した結果、自分の身体そのものがシマパンになってアカウントBANされた男」



「……なんだこいつら」



 なんだこいつら。

 アカウントBANされたやつしかいないのか。



「ゲリラゴリラ、貴様もシマパンにならないか」


「ウホウホウホ!!」


「くっ、脳が退化したか」



 ここは所謂MMORPGの世界。されどイカれた世界。ファンタジックのかけらもなく。

 大闘技場の中、津波のように押し寄せるゴリラと、たった1人、いやたった1枚でそれに立ち向かうパンティの姿に歓声が上がる。



「どっちが勝つ!?」


「あれ見ろ、おパンティが増殖していく!?いや、ゴリラがストライプ柄のパンティに姿を変えられていくぞ!?」


「まさかまさかの『袴パン一郎』優勢か!?」


「パンティ鬼強え!!このままゴリラぶっ倒そうぜ!!」



 こんな奇天烈な状況を他のプレイヤーたちは娯楽のように見ている。


 


「この状況を誰か説明してくれ」



 このカオスな状況についていけず、俺はつい、そう呟いた。




◆◆◆◆



 【ワールドリミックス】



 ゲームの内容をざっくり言うと、オープンワールドで王道ファンタジー+クリエイティブ系のMMO。

 こんなものブレスオブザナントカやら、マインホニャララみたいなやつのパクリゲーにしか見えないが、ゲームの作りそのものはかなり質が高い。

 

 ……まあ、それは表向きに限った話なのだが。


 今のゲーム説明は正直言って、忘れていい。なぜなら。



「バグとチートが酷過ぎて、もう原型を留めてない……」



 不具合に不正行為。本来運営が修正して然るべき問題が当たり前のように放置されている。



「恐ろしいな。隔離サーバーというのは」



 そうここは正規サーバーではない。


【アジア】【ヨーロッパ】【アフリカ】【アメリカ】【オセアニア】そして発売元の【日本】のどれでもない。


 今俺が踏み締める大地は、7つ目、幻の隔離サーバー。



 ────その名を【アンダー】




◆◆◆◆◆◆



 【アンダー】では、本来許されない行為であるバグとチートが当たり前のように横行し、地獄絵図が広がっている。具体的にどんな光景か、それはいま見た通り。


 こういった迷惑行為、違反行為はアカウントbanで対処するのが普通だが、この運営はなにをトチ狂ったのか専用サーバーまで用意してそこに閉じ込めている。


 謂わばゲーマーたちの刑務所。興味本位でそこに向かえば、もう二度と帰ってくることはない。ゆえに、幻とされている……。



「そんな場所に、来てしまったわけだが」



 そう、俺はそんな場所に来てしまったわけなのだ。


 現在地点は闘技場。【アンダー】のマップに住民が作った決闘の地。ここでさっきのようなバグやチートを使うプレイヤー同士が対決する。

 どっちがより"迷惑プレイヤーとして名高いか"を。これが本当の不毛の大地。



「おいお前、物珍しい顔で試合を見てるが、もしやここは始めてか?」



 考えている様子が挙動不審に映ったか?隣にいる観客はまた話しかけてきた。

 ハゲ頭の男性アバター……あの、なんで頭の上にカツラだけが浮いてるのだろうか。座標バグってないか?



「新入りではないと言ったら、嘘になる」


「そうかぁ、新入りか。なんだ?お前さんなにやらかしたんだ?」


「やらかし?」


「白々しいぜ?ここにいるってぇことは、本サーバーでチートやグリッジ行為、規約違反でアカウントbanされたってことだ。そうだろ?」


「あぁ」



 そう、この【アンダー】サーバーに落ちる条件は、基本的に運営から迷惑プレイヤーと判断された問題児だけだ。

 違法なコードを使って本来できない挙動を実現させる"チート"。わざとバグを悪用して迷惑をかける"グリッジ行為"を筆頭に。


 ゴリラを増殖したり、自分の姿をパンティに変えたり、ヅラの座標がズレてたり。


 必ず、絶対に、なにかをやらかしてる。





 そのはず。だが。だがしかし。信じて欲しい。俺は、俺は。



「俺は、誤BAN(無実)だ」



◆◆◆◆◆



 申し遅れた気がする。申し遅れ過ぎたのかもしれない。俺のプレイヤーネームはアズマ。この世に生まれ落ちてはや16年。


 リアルの素性はごく普通の。何処にでもいる超普通な高校生だ。学校に行く板書をする、後は帰って全部ゲームするか動画見て楽しく消費する。


 悠々自適な生活、最高だ。


 そんな俺がめっぽうハマっていたゲームがあった。この【ワールドリミックス】がまさにそう。


 さあ、今日は休日、朝からやるぞ、とヘッドギアを起動して被ってすぐとのことだった。

 運営にお呼ばれしたのは。



 <ここに呼ばれた理由はわかりますね?



 冷や水をぶっかけられたかのように、俺のアバターは審問の詰所に問答無用に叩き込まれ、運営からのありがた〜いチャットを受け取った。

 朝のコーヒーが不味くなるって表現はこういう時のために使うんじゃなかろうか?



「呼ばれた理由、わからない。俺は何も」


 <貴方は昨夜、不正なアカウントでログインをし、違法なソースコードの使用を検出しました。心当たりは?


「……全くない」


 <わかりました。


「ああ。よかった。わかってくれるか?」


 <では貴方を今から【アンダー】サーバーへと転送します。お疲れ様でした。


「……」




◆◆◆◆◆





「……」



 で、今に至る。俺は、全くもって謂れのない違法行為を犯したことにされ、ここへとぶち込まれた。理不尽。あまりにも理不尽じゃないか?


 そうやって言ってみたら、隣にいたハゲが、品定めするように俺をじっとみた。目を細めて顎を触り、こくこくと頷く。



「お前さんも誤BANか。オレと同じだな」


「……っ!?まさか、あんたも誤BANか?」


「ああそうさ?というかここにいる奴は全員そう言うぜ。『俺は誤BAN』だってなぁ?」



 よかった、俺と同じ境遇のやつがいる!と希望を持ったがそれが違うというのがすぐわかる。

 ニヤニヤと笑ってる。ハゲが他の奴に同意を求めると、隣やそのさらに奥にいる人たちが同調する。みんな口を揃えて『俺も誤BAN』

 まあ、つまり、犯罪者が鉄格子の中で『俺は無実だぁぁぁ』と叫んだところで、誰も信じちゃくれない、という話だ。

 ここにいる連中はみんな嘘つきということ……俺は本当なのに。



「……」


「ん?おい、どこにいく?『ゲリラゴリラ』と『袴パン一郎』の試合終わってねえぞ新入りぃ」



 俺が徐に立ち上がるもんだから、隣の奴が少し不思議そうにしていた。なのでこう答える。



「探しに行く」


「探す?」


「ここを抜け出す方法を」



 そう、全ては。楽しかったゲームの日々を取り戻すために。

 するとハゲの男は口をへの字にした後、こう言った。その内容は主に忠告。



「だったら気をつけるんだぁな。ここにいる連中は……お前さんみてえな、ツンとした態度でノリの悪い(・・)奴が大好きだ」


「と、いうと?」


袋叩き(サンドバッグ)に、丁度いい」



 だそうだ。気をつけるとしよう。

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