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ジャガイモの前はシクラメン、もしくは有毒植物の食べ方について

作者: 吉澤雅美

「イモ類はすべて暑い亜熱帯か熱帯産」との言説を見て腰を抜かした吉澤です。


 アホ抜かせ。


 ジャガイモの原産地は南米の高地、冬は氷点下が当たり前の地域です。


 暑い熱帯産なんて言う奴は閻魔様に舌抜いてもらえ。


──色々と抜けるエッセイだなぁ。


 まあ、論文じゃないので、抜けがあっても堪忍してくださいね。

 感想欄で教えてもらえると助かります。


 はい、話を戻してジャガイモの原産地の話でしたね。


 ジャガイモは元来有毒植物です。

 全草に毒を含んでいます。

 

 今でも時々ジャガイモの芽や緑に変色した部分を食べて食中毒が起きているでしょ。


 ジャガイモの芽はしっかり取るように家庭科で習ったでしょ。


 原産地のジャガイモは、イモ自体が有毒です。

 食べるには毒を抜かなくてはなりません。


 その前に、一般的に有毒植物から炭水化物を取る方法を紹介しておきましょう。


「細かく粉砕して繰り返し水にさらし、沈殿するデンプンを取る」


 これが基本です。


 南米の熱帯産、タピオカで有名になったキャッサバはこの方法で青酸系の毒を抜いてデンプンを取ります。

 

 日本で有名なのはヒガンバナでしょうか。

 これも叩き潰して水にさらし、底に残ったデンプンを取り出して水洗いを繰り返し、毒を抜いて食用とします。


 ソテツの幹や実からもこの方法でサイカシンという毒を抜いて食べました。

 「蘇鉄地獄」という悲しいお話がありますので、興味のある方は調べてくださいね。


 じつは毒がなくても植物の根からデンプンを取るには同じ方法を用います。


 ワラビ、クズなどです。


 ジャガイモデンプンから作ったまがい物ではなくて、本物の労力のかかったデンプンで作った方は、風味があって旨いそうですぞ。


 と、ここで博識な友人が「カタクリを忘れるな」と忠告してくれました。

 そう、片栗粉のカタクリです。

 しかも分布が広いのでヨーロッパにもある可能性が……



 ところで、では、ジャガイモはどうやって毒を抜いたのでしょうか?


 ヒントは寒暖差の激しい高山ならではの気候です。


 まず、冬場、ジャガイモを戸外に並べておきます。

 すると夜の寒さで、ジャガイモは凍ります。

 日中は暖かいので溶けます。

 これを何日か繰り返し、ブヨブヨになったジャガイモを足で踏んで水分を絞り出し、さらに乾燥させます。


 乾ききったジャガイモはチューニョと呼ばれ、数年は保つ保存食となります。


 毒抜きと保存を兼ねているのですね。


 これがインカ帝国を支える基本の食料となりました。


 茹でて戻して食べます。


 それだけの手間をかけてジャガイモは食されていたのです。


 暑いと無理ですね。


(実は暖かい地域でもジャガイモの保存食は作られていますが、茹でて干すだけ。毒への言及はありません)



 ヨーロッパに渡ったジャガイモは、たまたま弱毒性だったか、弱毒性のものが選抜されてきたようです。


「一番まずいものを渡してやったんだよ」


 と、博識な友人は笑います。


 加熱するだけで食べることができるヨーロッパのジャガイモ。

 まさに夢の食材です。


 ただ、ご用心、葉や茎には毒がありますからこちらを食べてはいけません。

 こういった中毒が「ジャガイモには毒がある」と認識され、普及の遅れにつながったという説があります。






 じゃあ、ジャガイモ以前にヨーロッパにイモは無かったか?


 例えば日本という温帯に分布しているヤマノイモ。

 調べてみましたが、ヨーロッパに自生していたという記録は見つかりませんでした。


 そもそもブラキストン線を超えられずに北海道に分布していないヤマノイモが、ヨーロッパ全土に生えるだろうか?


 調べが不十分なので、ここは疑問にとどめておきます。


 調べているうちに「ヨーロッパではジャガイモ以前には、カブやニンジンのように根を食べる植物はあっても、根茎(イモ)を食べる植物は無かった」という記述にお目にかかりました。


 本当に無かったのでしょうか?


 園芸に疎い私ですが根茎と聞いてとりあえず思い出したのがシクラメン。

 育てたことのある人なら知っていると思いますが、立派な根茎(イモ)がついています。


 思えばベルサイユ宮殿近くの森を散策したときに林床に群生するピンクのシクラメンに目を奪われたものでした。


 厳密にシクラメンの原産地を問うと地中海沿岸地方、ヨーロッパではギリシャあたりが含まれているようです。


 で、シクラメンの歴史をググって見るとドンピシャリ。ジャガイモ以前には食用として栽培されていたという記述が……。


 しかも大航海時代には鮮度が落ちにくい食料として船に積み込まれていたと……。


 え、苦いよ。

 しかも、シクラミンという毒あるよ。

 毒抜きの方法は見つかりませんでした。

 大量の水を利用する方法は船では無理です。

 鮮度を重視するなら、チューニョのような加工品でもないはずです。


 中世ヨーロッパ(から大航海時代)の人々のお腹が心配です。


 シクラメンを豚の餌にしたという記述は複数ヶ所で観測できたので、これは間違いないでしょう。


 しかし、人間が食べるか?

 

 残念ながら、食用シクラメンの一次資料はまだ見つけていません。


 だから、確信を持って言い切ることはできないのですが、中世ヨーロッパのスープにイモが入っていたら、それはシクラメンの可能性があります。

ちゃんちゃん。


まさかなものが、ジャガイモの前に出てきて、調べた私自身びっくりしました。


もし情報をお持ちの方がいらっしゃったら、感想欄におねがいします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 興味深いエッセイです。 シクラメンの根が芋だったとは知りませんでした~。
[一言] オイローパでこの手の「代用」食品と言ったら、豆類が定番だったような。 だから向こうの時代モノ小説なんかだと、 「また豆かよ、忌々しい」「こんなものしか無いんだよ」 みたいなやり取りがあったり…
[一言] いやなんとなく、なんですが。 シクラメンって、種から花咲かせるまで2年かかるんですよね(昔、発芽させて育てた事があります)。収穫(?)までにとても時間がかかるので、食用として栽培するにはあ…
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