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俺の恋愛話

俺には好きな奴がいる。

でも叶わない恋だって事は知っている。

何故言い切れるのかって?

それは、俺が神社に住んでて普通の人には俺が見えないからだ。

俺はこの町の人々から、マモリガミとして祀られている。

苦労したぜ。人間っていうのは弱っちいから沢山助けた記憶がある。

きっと俺の功績を認めたんだろうな、たちまち俺は・・・いや、いつの間にか小さな妖怪からマモリガミとして称えられた。


それでマモリガミになって数十年経った後、俺は神社で今日も静かに見守ってきた。

でも徐々に社会が発展していき、次第に人間だけで解決していくようになり

俺の存在は薄くなっていった。

神社も今じゃ誰も来ない。だからもうボロボロだ。

でも人間達を恨んではいない。こんな俺を見てくれたんだ。一瞬だけでも良い夢が見れたからな。


それからまた数年経った後、珍しく二人の人間が現れた。

一人の方は歳は高校生ぐらいの女でもう一人は大分歳をとった老人だった。

二人は楽しそうに何か話しながら、神社に近づいて来る。

「ねぇ、おじいちゃん。どうしてこんなにボロボロなの?」

「ここはのぉ、些細なことでも見捨てずに見守る優しい神様がおるのじゃ。懐かしいのぉ。昔は綺麗じゃったんだがのぉ」

老人は神社を見上げる。

「じゃあさ、私達で綺麗にしてあげようよ!おじいちゃん」

「ふぉふぉふぉ、良い提案じゃ。それじゃ早速始めようか」

近くにあったボロボロなホウキを手に取り二人は夕暮れまで、俺の家を掃除してくれた。まぁ、外から見える所だけだったけど。

そして二人はお賽銭を入れて、お参りして帰って行った。


次の日もまた人々を見守っていた。

今日はさすがに来ないだろうと思いながら。

ザッザッと土を踏む音が聞こえてきた、足音的に一人だろう。

視線を神社の外に合わす。

やっぱり昨日の彼女だ。今度は一人で来たらしい。

彼女は神社の前に立って、目から涙を落としながら呟いた。

「あのね・・・きょうね・・・・おじいちゃん亡くなった」

俺はただ聞くことしかできない。

「昨日わたし・・・が無理な事をいったからかな・・・・」

無理なことおそらく、夕暮れまで神社を掃除した事だろう。

急に心が重々しくなる。

もし俺が人間だったら、何か力になれたのだろうか。

女は泣き崩れてしまった。

そして女は散々泣いて

「もう帰らなきゃ、お母さんが心配する。」

と言って階段を二段降りて、こっちを振り向いた。

「でも、もし出来るなら・・・生き返らせて欲しい・・・です」

そう言い残し去って行った。

俺はさすがに死者を蘇生はできない。

仮に出来ても、それはそれで色々問題だろう。

俺は初めてなんともいえない気持ちになったのを覚えている。


それから彼女はたまに、時間はバラバラだが現れる様になった。

掃除をしに来たり、お供え物を捧げてくれたり、時には色々な話を置いていったり。

彼女が来てくれる日は、不思議と暇をしなかった。

そんな日々がとても良いと感じてしまい。

来る日も来る日も、そうやって一人で話していった。

「何故あの人間はそう独り言を言っていくのだ?暇なのか?勉学とか青春とかするべきでは無いのか?」

不思議に思った。なぜって、女子高生位の奴だぞ?

受験や恋愛とか何かするべき物はいくらでもあるだろう。なんて偉そうに俺は言うが

心の底で嬉しいと感じている自分がいる。


─冬─

白い雪がふわふわと空から降ってくる。

俺は寒さは感じないが、見てて心が寒くなってくる。

そして今日も彼女は現れた。

寒いのに・・・本当に変わった女だ。

本当は俺の事見えているのではないかと、思ってくる。

徐々に彼女(常連)に親しみを感じてくる。


「私ね・・・。ここ落ち着くんだ。悲しい思い出の場所だけど、もう一つの私の家みたいに」

彼女は、ふふっと笑った。

「それに何故か安心するの。誰かに話を聞いて貰ってるみたいでさ!」

「って、私何を言っているのかな・・・。()()()()()()()()()()

「そろそろ帰らなきゃ・・・」

そう言って、白い雪が積もった階段を下りて行った。

一時の沈黙。

「・・・なんなら、いつでも帰って来いよ」

誰も聞こえないような声で、言った。


冬から春に変わる、季節の変わり目を最後に彼女が来なくなった。

俺は不思議と落ち着かなかった。

マモリガミとしての嫌な勘が、頭の中で叫ぶ様に訴えるが、俺はそれに対して知らない振りをした。

きっと来てくれる、とだけを信じて。


─それから数ヶ月後─

あれから一度も来ていない。

俺はどこか彼女が恋しいと思った。

そう思った直後俺は、ハッと我に返り

ありえない。こんな気持ち・・・今は廃れたが、れっきとしたマモリガミなんだぞ。

大勢の人間を助けてきた俺が、一人の女の事ばかり考えて。許せない。

俺はこの事実をもみ消したくて、その気持ちを怒りに変えていく・・・。

が結論から言うと無理だった。

はぁーとでかいため息を吐いて、いつもの日課の人々の見守りを再開する。

ちなみに俺は、信仰対象だった街位なら見渡せる能力を使っている。

勿論個人を見ることも、範囲内なら探せる。そうそこなのだ。

俺は彼女がまだこの街に居れば、探すことも可能。

でもそれはプライバシーと言うものが存在する限り、能力を私的で使うのも気が引ける気、でも見てみたい。

葛藤が続くこと5分。俺は己の欲求に負け

能力で彼女を探すことにした。

少しだけと自分に言い聞かせて探す。

そして探すこと30分が経過した所で、見覚えのある女がいた。

とうとう発見してしまった。

その気になる彼女はというと、彼女は学校の屋上に居て見知らぬ同い年位だろう男から告白されていた。

納得のいく形で終わる、と思っていた。けれどそれは、納得のいく形では無い。

それにこんな形で終わるのは納得がいかなかった。

悔しい。

もし俺の姿が見えていたら話せていたらと思うと、余計にその男に嫉妬してしまう。

「はぁ・・・・、いやでも、まだわからない」

告白を受けない・・・そんな希望も持った。しかし現実は非常なもので

彼女は照れながら、はいと頷いた。

俺は見るのをやめた。

これ以上は俺が持たない。

涙が出てくる。

こんな事一度も無かったのに・・・。

あぁ、俺は本当に彼女の事が好きだったんだなぁと最後に感じた。




これが俺の、好きだった奴の話。

「次も・・・良い出会いがあればいいな。まぁ、見えなきゃ意味が無いが」





































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