伝説のバンドの前奏曲
♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪
私のギターに彼女のピアノが重なり合う。まるで長い間ユニットを組んでいたみたいにしっくりとハマる。
目が離せない。
彼女の一挙手一投足、呼吸や視線までも見逃さないよう、頭をフル回転させる。
でもギターは本業ではないので指が付いてこない。
(私は!そこまで!)
この異世界の定番曲を現代風にアレンジしているのに彼女は合わせてくる。
レパートリーが少ないのがもどかしい。
(ギターは!得意じゃ!!)
私はこれまでにない集中力の高まりを感じた。
そしてそれは彼女も同じようだ。私だけを見つめ続けてる。
(ないんだよぉ!!!)
小節の隙をついてギターを置き、彼女の右隣に座る。
連弾だ。
(私は高音で遊ぶから貴女はベースを支えてなさい!)
私は水を得た魚のように激しく指を動かし彼女を攻め立てる。
すると彼女も負けじと、右手を私の左腕と交差して中音域で激しく暴れだす。
前を横切り、後ろから覆い被さり、
入れ替わり、立ち替わり、激しくピアノを叩いていく。
徐々に『歌姫』を圧倒していく。
(あれ?彼女はピアニストじゃなくて、『歌姫』?)
アレンジによる長い前奏を終え、ついに彼女の歌声がついに私の耳に入ってきた。
(なに!これ?!!!)
♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪
驚愕した。耳だけじゃなく脳に直接響くような歌声。
私のピアノの音色が単調になった瞬間、彼女はニヤリとした。
(なんて歌声なの!でも負けられない!今日は私のデビューなの。このままじゃ終わらない、終われないわ!)
私は空気に飲まれないよう必死に演奏した。
それでも彼女の心を揺さぶる声色に敗北を認めたくなってしまう。
(ダメ!私の心が感動して前に出られなくなる。何か、何か方法は無いの?助けてエリサーナ様ぁ!)
現代人の必須スキル『困ったときだけ神頼み』
偶然か必然か、ふと私の視界にウィンドウが浮かび上がった。
スキル
ロック
・楽器手配・鑑定
・収納
・音響効果
エリサーナの加護
・偶像作成
・無病息災
・言語理解
・聖なる歌声
(これだ!)
私は演奏を続けながら必死に操作する。
曲はサビの部分に差し掛かろうとしていた。
(お願いっ!ポチっとね♪)
そして私は、彼女の歌声に私の声を重ね合わせた。
「!!!」
『歌姫』パメラが大きく目を見開いた。
私はスキルの「聖なる歌声」を「音響効果」で調整して彼女の歌声に纏わせたのだ。
二つの歌声は相乗効果を生み出し、更なる次元に昇華される。
お互いに力を引き出し合い 出し尽くし 曲が終わった時、会場が万雷の拍手に包まれる。
それは後に『伝説のバンドの前奏曲』と呼ばれる夜の出来事だった。
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ありがとうございました。
次章の投稿は未定ですが、何故か終章を投稿してます。
お時間が御座いましたら是非読んでみてください。
終章↓
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