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伝説のバンドの前奏曲

♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪


ショパンの前奏曲(プレリュード)15番「雨だれ」


本来はピアノのための曲だけど、ギターで弾いても哀愁漂う繊細な響きがある。


お客さんは「ほぅ」と息を漏らし聴き入ってくれてるようだ。

そして私の悪戯心(いたずらごころ)が牙を()く。


ミュージカル映画『雨に唄えば』より「Singin' in the Rain」


「雨だれ」の途中で転調をしてジーンケリーに思いを馳せ軽快なノリで演奏する。

できればタップダンスを踊りながら歌えば最高のパフォーマンスになっただろうけど私には無理だ。


弾き終わると会場に大きな拍手が響く。

食事を終えお酒も入ってるのだろうか、陽気な声も聞こえてくる。


「お姉ちゃんに一杯飲ませてやってくれ!」

近くのテーブルに座っていた青年がウェイターに声を掛ける。

そして私の前には大きな木製のジョッキになみなみと注がれたビールが置かれた。

「それで喉を潤したら次は歌付きの曲を頼むぜ!」


私は青年に向けてジョッキを掲げ、グッと煽る。

(あれ?こっちにきて若返ったから未成年なのかな?でも美味しいから飲んじゃえ!)


ジョッキを半分ほど空けるとご馳走してくれた青年にエリサーナ様の像をプレゼントする。

「貴方にエリサーナ様の御加護がありますように」


そして今度はピアノに座りリクエストされた弾き語り。


選曲は

『上を向いて〇こう』


英語版の『SUKIYAKI S〇NG』と悩んだが、やっぱり日本語の淡い表現の方がグッとくる。

そういえばスキルの『言語理解』があるからどんな風に訳されるんだろう?


「おい!姉ちゃん!俺にも奢らせてくれや!」

そして時間ギリギリまで「歌う→お酒を飲む→像を配る→歌う、、、」というループになっていた。


「ヒメカ、そろそろよ。飲み過ぎてるみたいだけど大丈夫かしら?」

インナがステージに上がり私に声を掛けてきた。

「何を言ってるの?やっとエンジンが温まってきたところじゃない♪でも残念だけど次が最後の曲ね」

私は立ち上がると会場に向けて深々と礼をした。

お客さんからは惜しみ無い拍手を頂き、そして頭を上げたときに予期しない事が起きた。



目の前には天使がいた。


「貴女、前座の癖にずいぶんと盛り上げてくれちゃったわね。お客様が満足して帰っちゃったらどうしてくれるのよ?」

言葉の内容とは裏腹にとても澄んだ心地良い声色だった。



♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪



「パメラちゃん!今日もかわいいよー!」

お客さんの声にを反応したのか彼女は客席を振り返り笑顔で手を振っている。


(この人はパメラ。ヒメカの後に演奏する人で『歌姫』って呼ばれてるわ)

インナは私にこっそり耳打ちする。

燃えるような赤髪に透き通るような白い肌、そしてルビーのような紅い眼。

更に耳が尖っていて背中には翼が生えていた。


(あらやだファンタジー!!)


私の感動を無視してインナは彼女に向かって話しかけた。

「パメラ、出番には少し早いのではありませんか?次が最後ですのでステージを降りてお待ちくださいませんか?マナー違反ですよ」

インナは毅然とした態度で『歌姫』パメラに物申した。

「あら?先にマナーを破ったのはそちらではなくて?盛り上がり過ぎて入れ替わりの時間にお客様が帰ってしまいますわ。流れを切らないように気を使ったのですよ?」


そしてお客様から野次が入る。


「俺はパメラちゃんの歌を聴きに来たんだから帰らねえぞ!」

「何言ってんだ?!俺は新人黒髪の姉ちゃんの曲をもっと聴きたい!」

「おめぇ耳腐ってんのか?」

「なんだとコラ?」

会場が混沌としてきた。


(私やり過ぎたのかな?元の世界でも対バンの時は乱入したりされたりは何度もあったなぁ。仲が良くてお互いの曲をコピーしてたからメッチャ楽しかったなぁ。また()りたいなぁ)

私は緊迫感の漂うステージ上で思い出に浸っていた。


「ヒメカ!貴女からも言って。邪魔しないでって!」

インナもそろそろ切れそうだな。しかたない。


「ストッーーーーープ!!!皆さん!落ち着いてください!」

私は声を張り上げて場を収めるとパメラに向き直った。


「歌姫さん!私の演奏に合わせて歌っていただくことはできますか?」

私はこのトラブルを全力で楽しもうとセッションを申し込んだ。


「ヒメカ、何を言ってるの?」

「いいでしょう、貴女の演奏は控室にも聴こえてきたわ。私の歌に合わせることを許しましょう」

私はそれほどまでに自信に満ち溢れている彼女の歌声に期待が止まらなかった。


♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪♪~♪~♪

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