伝説のバンドの前奏曲
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「まずい、、、どうしよう?」
トラブルが起きたわけでもなく、屋台で買った揚げパンもどきが美味しくなかっただけだ。
エリサーナ様から『3ヶ月くらい生活できる』お金を頂いたので街に入るのは問題なかった。
ふと目についた屋台がサーターアンダギーみたいなものを売っていたので好奇心で購入してみたが、
質の悪い小麦粉で練ったものを揚げ焼きしただけ。
無駄遣いを激しく後悔した。
『お昼ご飯は その辺のコンビニで適当に』
そんな私のモットーは通じないらしい。
「これは食堂を出店して大繁盛の選択肢もあるかも」
私は布教の方法を考えながら異世界の街を練り歩き最初の目的地にたどり着いた。
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~寂れた教会~
「ごめんくださ~い!」
誰も居ないので、私は教会の入口で大声で叫んだ。
すると、奥からシスターらしき人物が小走りに出てきた。
「はい!『音楽と芸術の女神エリサーナ』様の教会へようこそお越しくださいました。どのようなご用件でしょうか?」
「あの、エリサーナ様に入信したいと言いますか、してると言いますか、布教させて頂きたいと言いますか、、、」
(ダメだ、私、完全に不審人物だ、これ)
でも、シスターはそんな私を怪しまずに
「まぁ!それは嬉しいですわ。是非ご一緒にエリサーナ様の素晴らしさを伝え広めましょう!」
と全力ウェルカムで受け入れてくれた。
「それで、ヒメカはどんな曲が弾けるのですか?良かったら聴かせてくれませんか?」
お互いに軽く自己紹介をした後、アネットはこんな提案をしてきた。
見かけによらずグイグイ来るなぁ。
獲物は逃がさないとばかりに両手を強くつかまれた。
先ほどのスキル画面を開いて楽器手配を押した。
(シンセサイザーを出しても未知の楽器でビックリするだろうな。いちおう一通り楽器は弾けるけど、エレキでテケテケなんて論外。無難にクラシックギターでいってみるか)
ウィンドウを操作してギターを検索してみる。
「???」
アネットは私の動きを不思議な目で見ている。
(EPも不安だし安いのでいいかな。ヤ◯ハのクラシックギター初心者8点セット、これならスタンドもケースも付いて必要EP280!あらやだお買い得ね)
「ポチっとね♪」
すると目の前にギターセットが現れた。
「まぁ!収納魔法ですね!とても羨ましいですわ。あの不思議な動きは魔法を発動するためのものだったのですね」
(違うけどまぁいいか。良い感じに勘違いしてくれたみたいだしね)
とりあえず出てきたばかりのギターをチューニングしながら何を演奏するか考えた。
(ロックやポップスは伝わるか分からないし無難にクラシックかな?
ここが教会だから聖歌も良いかもしれないけど)
私は徐にギターを構え、、、
(この世界で最初に弾く曲、、、最初はやっぱり)
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私の選曲は『エリーゼのために』
やっぱり最初はこれでしょ!
演奏が終わるとアネットは涙を流していた。
「なんて繊細で深みのある旋律。私は今までこのような演奏を聴いたことがありません。貴方はエリサーナ様の御使い様ですか?」
「みつかい、、、? いえ、私はただの、、、」
そこまで言ってから思い直した。私はエリサーナ様から布教を命じられた。それは女神の使徒と言えるのではないだろうか?
でも、そこまで崇められるのも動きづらくなるので困るかもしれない、
「私は御使いではありませんが、エリサーナ様から啓示を受けました。
『布教活動をして信徒を増やし、人々の心を豊かにせよ』と。
そしてこのような能力を与えてくださいました」
すかさず『偶像作成』をポチッとね♪
私の手にはエリサーナ様の木彫りの像が現れた。
そしてアネットは白目を向いて倒れた。
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