勇者のおはなし [よみきり]
チュンチュンチュン
カーテンの隙間から差し込む暖かい光と小鳥の鳴き声で目が覚めた。カーテンを開け窓から外の様子を見ると、太陽が高く昇っていた。「もうこんな時間か。」こんなにぐっすり眠ることができたのは、いったいいつぶりなのだろうか。思えば、魔王を討伐するという使命を与えられてからは大変なこと、疲れることばかりであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜通し戦い続ける、そんなことは日常茶飯事だったし、街での滞在中には祝勝会やら歓迎会やら、いく先々の街で酒やら食べ物やらを食べさせられた。初めて会う女には「[勇者]さん、付き合ってください」とか「[勇者]、結婚してくれ」名前も知らない男に「[勇者]なんだろ俺を庇いながら冒険の一つ容易いだろ、一緒に冒険に連れていってくれよ」とか「[勇者]とやらの実力を知りたい!俺と戦ってみてくれよ」とか言われた。立場が立場だけに冷たくあしらうことは僕にはできなかったが。。。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
誰か一人でも僕自身を見てくれたことがあっただろうか。みんな[勇者]という肩書きしか見ていない。一度でも名前を聞かれたことがあっただろうか。肉体も精神も相当追い詰められていた、、、と思う。それでも動くことができたのは、魔王を倒すという目的に支えられていた、、、のかも知れないな。
パンとスープという簡単な食事を用意し口にする。「何をしようか。」もう眠ってしまおうか、、掃除をするのも悪くないな、、、。「、、、海でも見に行こうかな。」きっと崖の上から見る海は綺麗だろう。心も安らぐことだろう。服を着替え、外へ出た。
「、、、!」
海に着く頃には、日が沈み始めていた。オレンジ色に照らされて、吸い込まれそうなほどキラキラと輝いている。
「こんなにも綺麗なんだな。」この景色を守ることができたというだけで、いままで頑張ってきた価値があったのかも知れない。。。
きっとこのまま[勇者]という存在が美化され、みんなの思い出や記録、伝承として半永久的に残り続けていくんだろうな。忘れさられるなんてことはきっと起きないんだろう。「ずるい話だな。。。」そう呟きそっと目を瞑った。。。
〜おわり〜
読みづらい部分とかあったら教えていただけると幸いです。
初めて書いた文章なので、想像が難しい点とかもあったかも知れません。