学食会議
ユカリちゃんと食事を決める。
ユカリ「タクト君はどれにする?」
笑顔で話しかけてくる。おお、尊い。ニートの頃の俺なら絶対見ることのない、屈託のない微笑みだった。
俺「えっと…じゃあ、カレーンとサラダンのセットにしようかな」
ユカリ「いいね!ナイスチョイス!栄養バランス分かってるぅ〜♪」
どうしたんだろう。さっきと打って変わってなんか彼女は今、ハイテンションみたいだ。
俺「ユカリちゃんは何にする?」
ユカリ「私はもちろん魚月見うどーん」
ほうほう、あっさり+こってりのうどんだな。
ユカリ「タクト君、君は進化論を信じるかな?」
俺「まあ。もう常識みたいに浸透してるし」
ユカリ「魚肉とにんじんとほうれん草と塩昆布ダシとでっかいいくらとうどーんから構成される、海から出てきた生物に優しい食べ物だよ。食べた瞬間、私は海から出てきたんだという確信を得ることができるんだぜぃ!」
俺「はあ。なるほど」
う〜ん、掴みづらい。
俺「なんていうか…ユカリちゃんは魚介類が好きなんだな」
ユカリ「そーゆうことさっ!」
おばちゃん「ハイ、次の方」
ユカリ「魚月見うどんを一つください。ほら、タクト君も」
俺「カレーンとサラダンを一つずつ」
おばちゃん「月見一丁、カレーンサラダン一丁」
厨房「へい!」
おばちゃん、魔法使いか。十秒くらいで水だったものが沸騰し始める。
よく見ると角刈りの料理長っぽいおっちゃんもつゆを温めるのに使っている。
こういうの見ると異世界のキターって感じるよな!
みるみる内に出来上がっていく。
おばちゃん「はいよ」
早い。手際がいいのもあるだろうけど。
ユカリ「あっちに友達がいるの。行こうよ」
俺「お、おう」
ユカリに付いていくと、向かう先のテーブルに長い金髪の女の子がいた。やったぜ!大当たり!前の世界だったら彼ピッピ紹介されて撃沈するのが当たり前だったもんなあ?
ユカリ「コ・コア・ちゃん♪」
ココア「あ、ユカリ。一緒に食べよう?」
ユカリ「もちろん!ほら、タクト君も向かい側座って」
タクト「あ、ああ」
僕がココアちゃんの向かい側に座ると彼女は怪訝そうな顔でこちらを見た。
ユカリ「とりあえず食べよ?手を合わせマース」
3人「いただきます」
いただきますをした後、ココアちゃんから聞かれた。
ココア「あなたは?」
ユカリ「紹介するね。彼はタクト君。で、こちらがココア。ココアと私は中学以来の友達で、タクト君とはついさっきそこら辺で会った」
俺「はじめまして、ココアちゃん。よろしくね。」
ココア「よろしく」
あまり感情が表情にでないタイプなのだろうか。少し素っ気なく感じてしまう。
ココア「ねぇ、さっきそこで会ったってどういうこと?」
ユカリ「実はね」
ユカリが俺と会った時の事を話し始める。
ユカリ「私上級生になる予定の変な男たちに絡まれて困ってたの。その時ちょうどタクト君が横を通ってたんだ。で、そこのグループは受験者を誘って王様ゲームやってて、王様が耳たぶ噛む命令を出してさ、ププッ。間髪入れずにタクト君が『耳たぶを噛むだとー!』って叫んじゃって、あっはっは!その瞬間周りがシーンってなっちゃったんだよね」
ココア「あー、さっきなんか時間が止まったように静かになったのってタクト君が原因だったんだね」
納得されてしまった。恥ずかしい。
俺「うん、、そうだったんだよ…」
ユカリ「でなんかその後ごちゃごちゃなっちゃってグループが解散する時に私たち2人同時に追い出されちゃったんだよね。それで境遇生かして仲良くなったってわけ」
ココア「ふーん、ユカリちゃんをよろしくね」
よろしくされてしまった。何をよろしくなんだ…
ユカリ「あっ、そうそう、この前一緒に行こうって言ってたメカの展示場、あそこに新メカ登場したの知ってる?」
ココア「知らない。聞きたい」
メカの話になってしまった。2人で盛り上がっているようだ。まあ、邪魔しないでおきましょうかね。
それにしても尊い!こんな美少女2人が俺と会話をしてくれる上にこんな笑顔で話し合っている所を見せてくれるなんて!ああ、絵になってる、絵になってるよこの2人。見つめ合うだけで薔薇の花が百合の花に求愛しているようだ。これぞ芸術!異世界サイコー!
ユカリ「ねえねえ、タクト君は新メカに興味ある?」
ココア「まさか機動隊学校に入学希望しといて興味ないわけないよね?」
しまった…全然聞いてなかった…それになぜ挑発気味…?
俺「まあ興味あるっちゃあるかな。でも俺田舎出だからあんまりメカのこと分からないし見たことないんだよね。仕組みとか、種類とか、後操縦方法とかも」
正直に話す。
ユカリ「えー!それはもったいないぞ、君は人生なんだと思ってるんだい?ま、私はメカのために生きているようなもんだがな」
ココア「うんうん、それはもったいないよ。それで私たち今度新メカ見に行こうって話になってるんだけど、タクト君も来る?そんなに種類がまだあるわけじゃないけど、仕組みとか面白いと思うよ」
キター、美少女2人とお出かけ!異世界補正イベント発火!あと単純にメカにも興味がある。魔力で動かすメカってどんなのなんだろう?
俺「じゃあお願いしてもいい?」
ユカリ「もちろん!じゃあ決まりね!」
ココア「チケットはないから当日券になるね。確か1500ブロベリーだったかな」
俺「げっ…俺お金ない…」
ココア「あらら」
ユカリ「まさか無一文で田舎から飛び出してきたの!?」
俺はこっくりと頷く。
ココアとユカリは顔を見合わせる。その後ユカリがしょうがないわねーと切り出した。
ユカリ「貸しよ。貸しで良ければ1500ブロベリー貸すけど?」
ココア「えー、ケッチー。ユカリ伯爵家の娘なんだからそんくらいあげればいいのにー。ちょっとお高いディナー1食分くらいじゃん」
ユカリ「うるさいわねー。私自身はそんなにお小遣い貰ってないのよ。貸してもらえるだけでもありがたいと思いなさい」
ココア「え〜、この前新しい馬自慢してたじゃん」
ユカリ「あれは誕プレでそもそも私のお金で買ったんじゃないわ。もう、これ以上追求するならトイチにするから」
俺「是非貸してください!」
俺は頭を下げた。これ以上やりとりさせるとトイチになってしまう。
ユカリ「いいよ。じゃあいつくらいに行こう」
ココア「でも一応明日からも試験のための訓練があるから、それらが優先だよね」
ユカリ「そうね。少なくともそれが終わって……次の日は荷物の移動があるし、2日後はなんとなく休みたいかも。その3日後とかはどう?」
ココア「いいね。タクト君はどう?」
タクト「いいと思うよ。じゃあそのために試験まずは受かるようにしておかないとね」
ココア「そうだね。まずは受かる事を目標にしよう」
ユカリ「じゃあさ、3日後からは模擬戦も交えて練習するらしいから、3人で一緒に実練しない?」
ココア「それ良さそう。タクト君もいいよね?」
俺「あ、うん」
少し言い淀んでしまった。副校長とのことが頭にちらついたからだ。振り払おうと俺は頭を横に振った。今はメカに慣れることが先決だ。
ユカリ「よし、決まり!じゃ、行こっか、ってうわ、結構話し込んじゃったね、ごめん。確かそれぞれ部屋が決まってるんだよね」
ココア「そうみたいだね。これが無料ってすごいよね。王立魔法学校とかだったらありえない待遇だよね」
ユカリ「それだけ今はメカが期待されてるってことでしょ。今はまだ戦士とか魔道士が前線で活躍してるけどこれからは絶対メカがどんどんその場所に取り変わっていくよね。耐久性からスピードから対効果MP効率とか空中戦闘とか。ありとあらゆる面で往来の戦闘法を上回ってるよね。」
ココア「それわかる!って、ここでまた話し込んだらまた時間食っちゃう」
ユカリ「ゴメーン。じゃあ、これにて解散!またね!タクト君」
ココア「タクト君、また明日〜」
俺「うん、じゃあまた明日ね〜」
ユカリとココアは立ち去っていった。
ユカリ「ココアちゃん、この後一緒にお風呂入ろうよ〜。浴場でっかいらしいよ」
ココア「いいね。じゃあ私一式取ってくる」
ふぅ〜、久しぶり、てか、人生初?の女子との会話緊張した〜。でも明日から2人と一緒に……ふふふ、今度の学園生活は楽しくなりそうだ。まあ、取り敢えず試験突破しないとな。さて、俺も風呂入って疲れを癒しますかね。いやー、今日は色んなことがあったな。
俺は食堂を後にして風呂場へ向かった。