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平成が終わる前に  作者: 書常時雨
3月が終わる前に
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3月が終わる前に⑧

 私は結局部活を選んだ。彼なら私を選んで同じ大学を目指してくれるかと思っていた。そんな彼にも裏切られてしまった。そして部活は結局仲直りはしたが、部活が終わってからはまた疎外感を感じた。結局裏切られてしまったんだ。それなら彼を選べばよかったと何度も後悔をした。でもこれが私が選んだ道だから。


 外食から帰ってきて私はこの家を離れる前にスマホに保存されていた写真を見て思い出を振り返っていた。地方大会、県大会、体育祭、修学旅行、文化祭……。どれも大切な写真で優劣なんて付けられなかった。その中には何枚も彼との写真が出てきていた。花火大会やデート、体育祭や修学旅行でも一緒に写真を撮っていた。その中で何故か知らないが彼との最後の「会話」になったスクリーンショットが残されていた。1番上の私から「数学が全然分からん!全く手が出せない」「それな!俺も難しいって感じたわ笑」「お互いがんばろう」「そだな!!頑張ろう!」最後は私のスタンプで締めくくられていた。一二週間も付かなかった既読はいつの間にか付いていた。私的に大事件が起きたのはこの後だったかな。やり取りが終わった9月30日の2週間後、私はなりふり構わず教室で泣いた放課後を思い出していた。


  別れた後も私は彼に会いたくて彼の教室の前を事ある毎に通った。明日は止めようと思いながらもやはり通ってしまった。彼からLINEの続きが来て欲しかっただけだった。朝、すれ違った時に「おはよう」 と言って欲しかった。彼が私の目を見て欲しかっただけだった。それなのに彼から感じるのは冷たい視線だけだった。彼が友達と一緒にいるときに彼を見ると無邪気に笑っている姿だったが私にはその後ろ姿しか見せてくれなかった。冷静で冷血の彼が私に嫌われたと勘違いしているのではないだろうか?彼を見ていつもの彼が生き返って欲しいと願うばかりだった。

 LINEも私から振ってしまって故に申し訳なさで自分から話を持ち込むことも出来なかった。散々話した2人の個チャは9月の最後で止まっている。まるで動いていた時計が寒さによって氷づけにされているようだった。


 ある秋が深まった日のこと、私は彼が掃除をしていたトイレを通りかかった。これから始まる彼も出ている英語の講習の準備をしようと教室に戻ろうとした頃、男子トイレからは賑やかな声が聞こえていた。

「おい!この近くに電車がいたぞ!」

「声うるせぇよ馬鹿」

「これバヤチャンスじゃね?行ってこいよ!廊下に!」

「ダルいダルい、そういうのダリいよ。行きたくねぇよ。しかも行って話すことなんてねーし」

 最初の声は私のクラスに来ては大声で彼のことを話す野球部の人で2番目3番目は分からないが4番目は確かに彼の声だった。私は彼らの中で「電車」という中学生の頃に馬鹿にされた名前で呼んでいたこと、彼の発言に対して私は悲しくなった。そして鼻がツンと痛くなって私の何かが体内からブワッと涙に変換されて目から溢れてきた。私はすぐに教室へ向かい、講習の準備をしなきゃと思っていたが目から溢れ出してくるものは壊れた水道管のように止まることを知らなかった。同じクラスの友達が「どうしたの?」「大丈夫?」と私に声をかけてくれた。私は「大丈夫」と答えるしかなかった。

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