3月が終わる前に⑦
次の日から親友からもらった髪留めを付けて行った。「盆明けから暑さは消えて秋に近づくいていく」とお盆におばあちゃん家へ行ったときに聞かされたが実際そんなことはなかった。おばあちゃんの話が嘘とかじゃなくて単純に気候が変わってしまってこうなっているのだ。登校だけでへばってしまいそうだ。
部活中はクーラーの効いた涼しい部屋で部活ができるためとても快適に過ごせた。廊下と音楽室は例外だが。そんな灼熱のような夏にも関わらずお盆前と同じように疎外感を感じた。しかもより強く。その意味を何となく汲み取っていたが私は気持ちを強く持てた。
私は彼と一緒にお盆前に花火を見に行った。1年前に彼に告白された記憶が蘇り、話すこともないくらい一緒にいたのにたくさん彼といろんな話をすることができた。それと同時に私たちは付き合って1年が経ったのだ。彼も私もろくな恋愛してこなかったからここまで続くとは思っていなかった。改めて本当の事を言えるいい関係だということも感じて目の前には彼しか見えなかった。だから同じ部活のみんなが近くを通り過ぎても気付かなかったかもしれない。それが彼女たちが私に対して行っている「仲間はずれ」の原因だろう。私はそれでもいいと言い聞かせ、無機質な金属でできた楽器を手に持ってあと1ヶ月を切った地方大会に向けてひたすら練習をした。
しかし、あの髪留めをしていても焦燥感は増すばかりだった。ある日の部活のこと、彼女たちは私を話の輪に入れてくれたのだ。私はホッとした。やはりここで仲間はずれは不協和音を生み出すことを悟って止めてくれたのかと思っていた。しかし、彼女たちの会話は遠回しに「彼と別れろ」と言っていた。私は彼女たちに絶望という奈落の底へ突き落とされてしまった。その日の午後からの部活では全く力が入らなかった。何を演奏しても間違えてばかりで心ここに在らずの状態になってしまった。
「うわ出たか。嫉妬攻撃」
親友はスマホ越しにケラケラと笑っていた。
「こっちは笑い事じゃないからね?」
「分かってるって」
「どうすればいいの?私トオルと別れたくないよ」
「これは正直私には決められないな。あんた自身で決めなきゃじゃない?」
「そうだよね……」
「彼を優先して部活を捨てるか、部活を優先して彼を捨てるか。2つとも取る事は正直無理だよ。二兎追うものは何とかってあるじゃん、なんだっけ?」
「二兎追うものは一兎も得ずね」
「そうそう、それそれ。さすが進学校生」
「自称だけどね」
「まあ、そこは私が決められないとだけ伝える。あとはどんな選択をしても責任は負いかねないからね」
「うん、ありがとう。また考えてみるね」
私はLINE通話を切って勉強机の上にスマホを置いた。今私はどんな選択をすれば良いのか、後悔しない道を探していた。久しぶりに降った雨が部屋に入ってきそうだったので窓を閉めてクーラーを着けた。冷え症の私には寒い風が少し気にしている二の腕に当たっていた。私は横になりタオルケットを肩まで掛けて白い天井の一点を見つめていた。