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平成が終わる前に  作者: 書常時雨
3月が終わる前に
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3月が終わる前に⑥

 彼と別れて3日後のこと、彼から1通のLINEが来ていた。「一緒に目指すって言っていた大学から本当にやりたかったけど距離が離れていて親にもなかなか話せなかった大学へ志望校を変えたんだ。そんな気持ちにさせてくれたのは……」と、彼らしくダラダラとした内容が送られてきた。そのLINEを見て私はあの選択は間違ってなかったんだと胸を撫で下ろすと同時に心にすきま風が吹いてきた。私の思い描いていた未来は彼と私が一緒の大学へ通って授業やバイト、サークルをして毎日が過ぎてゆく合間に美味しいものを一緒に食べたり何処か遠出をしたり必修科目で分からない教科を教え合ったり…。それが私のあの「ひとこと」で半分約束されていた近い将来が音を立てて崩れ落ちてしまったのだ。これは彼が悪いとか私が悪いとか関係ない。そうなる運命だったのだ。楽器を演奏し教室の窓から空を覗くと笑っちゃうぐらい青く、快晴だった。もう彼と私が一緒にいた夏には戻れないと暗示しているのだと思ってしまうほど夏の暑さはどこかへ消えてしまった。


 プラスチックの箪笥にはほとんど物はなくなっていている物いらない物にだいたい分けられていた。その選別が済んだ頃、私は母に呼ばれ、久しぶりの外食へ行くことになった。 そこで私はいる物に分けた中からあの髪留めを取り出した。それは親友からもらった私に勇気を与えてくれた髪留めだ。


 彼とは特に付き合っていて問題はなかった。そろそろ1年が経過しそうなとき、彼と付き合っていて問題が発生した。それは部活内で私が僻まれていたことだった。確かに彼は私にはもったいないほどのイケメンで性格も良くて馬鹿だけど愛嬌があってイケメンな彼だった。彼は鈍感オブ鈍感で全く意識してないみたいだったがかなり女子の中では人気だった。恐らく彼のことが好きな人は私の他にもいたのだろう。それが吹奏楽部内にもいたという単純な話であった。

 昼になると1時間の休憩が入る。運動部並みの体力を使う部活だからこそ昼の休憩を心待ちにしていた。談笑していたときのこと、私が言葉を発したら誰も反応をしてくれなかった。最初は「気まぐれ」程度だと思っていたがそれが長期間続いた。

私は耐えきれずに親友に相談した。

「まあ、女子の間ではよくあることだよね。私も何回か遭ったことあるし」

「うん」

「そんな落ち込まないでって」

「落ち込んでないって」

「顔に書いてあるよ〜。ヤバい、どうしようって」

「どうして私って嘘つけないのかな〜」

「でも、今更幼稚なことをする人もいるんだね。なんも意味のないのにさ」

「確かにね。それで彼が振り向いてくれるわけじゃないしさ」

「そりゃそうよ。1年経っても彼、アズサにベタ惚れでしょ?」

「うん。自分で言っちゃしょうもないけどそうだよ」

「やっぱ彼いい人だね」

「うん、本当にいい人だよ」

「でも、というか、だから傷つけたくなくて大学生になったらまたって思ってるし信用しているから一旦別れたいなんて考えているんでしょ?」

「え?」

「何となくそんなニュアンスが取れたの。親友なめてもらっちゃ困るよ」

「間違ってないけど……」

「まだ大丈夫なんじゃない?今のところ私は反対だけどね」

「私もまだ別れる気はないかな」

「でも少しだけ考えていると」

「いちいち心読むの止めてよ」

  親友はイタズラがバレた小さい子供のようにニヤリとして上目遣いをしていた。

「あ、そうだ。これあげる」

「何それ?」

「髪留め。沖縄行ったときのお土産」

 鮮やかな青色がベースになっていて貝殻の形をしたピン状の髪留めだった。見た目からしてこの近くでも売ってそうだったがそんな事をお構いなしに買ってくるのが私の親友だ。

「ありがとう!すごくカワイイ」

「大切に使わなかったら殴るよ?」

「もちろん!大切に使うよ」

 何となくだったがこれを付けたら親友から勇気を貰えそうな気がした。今は部内で疎外感を感じるけれどもこれを付ければ何とかなりそうな気がした。

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