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平成が終わる前に  作者: 書常時雨
予備校へ通う前に
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予備校へ通う前に⑤

 朝はいつも通りの生活を送った。受験を経験したせいか、良くも悪くも規則正しく玄関の扉が閉まって鍵をかける音を聞くと目が覚めて階段を下り、パンと水を取ってシャワーを浴びてまた8畳間に戻った。そしてYouTubeを見てから昼寝をし、起きると日が暮れている。それからあのアプリで来たメッセージを返信し、夜の街を歩き、2時か3時で眠りにつく。自分でも馬鹿だと思うが生きる希望もなく時間の浪費を勿体ないと感じないようなゴミだ。別にどうだってもよい。家は3人兄弟で放任主義だから、親から予備校へ行けだとか、専門学校へ行けだとか、説明会の誘いはされたものの強制的には言われなかった。それだけが安心材料だったかもしれない。もし言われていたら俺は嫌になって自ら死を選んだかもしれない。進路を決めるための時間が欲しかったのかもしれない。


 昼寝をして日が暮れた後、俺は少し暗い街をいつも通り歩いていた。その時に昨日通話したヨルノポルノが何か呟いていた。

『どっかの誰かさんが韓国っぽくて嫌だって言ったからトプ画変えた』

 どっかの誰かさんは間違えなくカシワだろう。

昨日、ヨルノポルノをフォローしてダイレクトメールをしたが返ってこなかった。事務所に所属しているんだし忙しいだけなんだろうと思ったが、カシワとは後で個人的に通話をしてダイレクトメールもしているんだろう。結局世の中全て顔かよ。

 俺が自分の顔を晒さないのは身バレ防止と顔だけで判断されたくないからだ。自分の中身を認めて欲しい、そんな願いが自分の中にはあったのだろう。それがこのアプリを入れたきっかけかもしれない。中身を認めてくれた彼女も友達も失い、俺は1人になったと感じた。自分を認めて欲しい。その気持ちは徐々に加速していったが「そんなことをしても意味がない」とブレーキをしている自分もいる。何が何だか分からない。自分の気持ちを考えれば考えるほど見えてこなくなる。

 そんなとき、カサから『今日の夜、あのメンツで通話しません?』とメッセージが来た。俺は『はい、もちろん!』と送った。単純に嬉しかった。画面と画面の繋がりなんて希薄なものであるのにまたこうして誘ってくれた。大袈裟に考えすぎかもしれないが自分を認めてもらえた気がした。


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