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08 ロリエルフは大人で合法


 クロ―シアの日焼け騒動の翌日。彼女はスッキリとした様子で起床し、問題が後に引く事も無い様子だった。

 けれど、油断はできない。日中はできるだけ日差しを避けてもらって、念の為に水薬ポーションも直接塗り込む必要があると思う。


 夜が明けきる前に食事を済ませて、早速木の伐採を行う。クロ―シアには寝袋のジッパーを開けて被ってもらい、ケープみたいにして日差しを避ける様にした。

 昨晩に取り出したのが夜半頃だったから、まだまだ猶予はあるはずだ。


 俺が木こっている際中に、クロ―シアはかたわらで、体育座りをしながら眺めていた。


「……イソカ様。私も何かお手伝いしたいのですが、よろしいしょうか?」


 コンッ! コンッ! と小気味良い音を森中に響かせながら、俺は答える。


「……今の所は休むのも仕事だと思ってくれよ。状況が落ち着くまでは、安全策を取ろう。それに、男がそれで良いって言ってるんだから、それに甘えるのも女の甲斐性じゃないかな? だから良い子にしていてよ」

「……納得しかねます。……生活の知識が偏重しているからといって、子供扱いはしないで下さい。私の設定年齢は21歳です。国際的に成人ですので、性描写コードにも抵触しません!」


 手から斧がすっぽ抜けて、検討違いな方向の木に刺さり。コ――――ンッ! という音を響かせた。

 何ですと? 性描写に規制がかからないですと!? 待って下さいクロ―シアさん。発言が大胆かつ爆弾的すぎますよ!


「クロ―シアさん。大人なんですね。……この場合、外見年齢と設定年齢ではどちらが重視されますか?」

「イソカ様。設定年齢の方です。外観設定時にグラマラスにもできたので」


 うむ、確かに開始時の声のイメージで外見をロリエルフにしたけれど、バインバインなお姉さんにも設定できたんだよな。……って、今は想像しちゃダメだ。思考が変な方向へ行ってしまう。


「では、クロ―シアさん。俺はまだ15歳の未成年です。成人女性でも結婚できない年齢の男子と性的な事をすると、保護条例とか何だとかでアウトの様ですが、いかがですか?」

「はい、イソカ様。私には肖像権が認められていますが、人格権までは認められていません。ですから、問題ありません」

「なるほどクロ―シアさん。もっと、砕けて言うと?」

「そうですね、イソカ様。本ゲーム内においては個人の行動を制限する規制はありません。なので、イソカ様が私に対して行う行為は如何なることであっても問題になりません。また逆に私がイソカ様に対して行う行為も同様です。しかし、それらの際の画像や映像を無断で外部に配信する事には制限が設けられています」


 そうかぁ。ゲームの中は色んな意味で自由だから、何をやっても良いのか。だから、一緒に気持ちい良い事した所で、問題が無いのかぁ。とっても魅力的な悪魔の囁きに聞こえるぞ。

 かといって、一昨日の事を想えばクロ―シアは性的な事を出されると忌避感を覚えていたはずだ。だから、調子に乗って『クロ―シアちゃ~~ん』と脱衣ダイブを決めたら、関係がギスギスしてしまうかもしれない。2人っきりしか居ないのに、それは避けたいな。


 あ、逆に俺が襲われたとしても問題にならないって事は、クロ―シアと険悪になって殺し合いにまで発展しても問題にならないって事か。あくまでゲームの中ですよって事だから。

 実際に、モンスターとかが居れば攻撃を受けるんだから、それを『傷害罪だ』とか言って通る訳は無いよな。

 だったら、慎重にいかなくちゃだ。クロ―シアがどんな展開を望んでいるかわからないし、今は踏み込む場面じゃ無い。この事は棚上げして強引に話題をそらそう。そうしよう。


「子供扱いしているつもりは無いし、問題無いとかそういうのは分かったよ。あ、問題っていうか気になる程度なんだけどさ、クロ―シアってかなり固いよね。もっと柔らかい感じで対応してくれると、俺は有り難いかな」

「んなっ! それは失礼です! 私は成人した大人の女性なので、体つきは相応の柔らかさがありますよ。ロウティーンの様な固い感じではありません。それは、その、昨日に直接触れて感じられたのでは無いですか?」


「違うよ! そういう事言ってんじゃ無いぞ! 言葉遣いの事を言ってるの。それに、昨日の事は治療の一環なんだから、そんな気持ちで触って無い! 俺を見くびるなよ」


「……申し訳ありません。イソカ様」

「まだ、固いよ。ここは『ごめんなさい、イソカ』だ。はい、もう一度」

「ご、ごめんなさい。イソカさ……ん」


 何そのイソカさーんって。もっと簡潔に!


「『さん』は要らないよ。なるべく慣れてね」

「はい、分かりまし……分かったわ……の」


 凄くぎこちないけれど、はにかんで頬を染めるクロ―シアはとっても可愛くて魅力的な女の子だった。話題も強引に転換できて良かったよ。


 それからまた、一生懸命に森林伐採を行うと、昨晩の余剰分も合わせてお昼前には水薬を購入するだけの薪が集まった。もう2本切って、簡易野宿セットを2つ買う。1つはさばいて紐にして、もう一つはツェルトに充てる。

 頃良い時間になったので、昼食をとった。その後に念の為と、クロ―シアは水薬を体に塗る事にする。事にするのだが……。


「背中は手が届かないし、自分でやってムラになるのも避けたいです……の。だから、イソカさ……ん。イソカに塗って欲しいのです……わ」


 口調が混乱していて、かえってお嬢様ぶってないか? でも、これはこれでアリだな。ロリっ娘エルフなお嬢様。その尊さにご飯が何杯も進みそうだ。

 そして懇願されたので、俺はそれに応える事にした。


「昨日に比べたら全然良いね。まだちょっと赤くなってる気もするけど、痛くないか?」

「はい、大丈夫です……の。イソカさ……イソカの手がヒンヤリとして気持ち良いです……わ」


 俺の手は何故か夏冷たく冬暖かくなる。季節に合わせた便利ハンドだ。それがゲーム内でも再現されているとは凄いな。そういった事もアウトプットされるとなると、どこまで現実の俺がここで再現されるのかな? ちょっと興味もある。


「ちょっと腕上げてね……っと。そう言えばさ、この世界で俺ってどこまでの事ができるんだ?」

「凡そ現実とそん色ない行動をとれます……とれるわ。むしろ、更に高い運動能力を発揮できます……の。……次は背中ですね」

「うん、うつ伏せね。じゃあ、クロ―シアの身体能力はどうなんだ?」

「私の身体能力は、プレーヤーを基準に設定されている筈です。なので、イソカ様の身体能力を基準に体格による差異を加味されていると思われます」

「……へぇ、そうなんだ。あと、口調戻ってるよ」

「はっ!? 気を付けます……わ。砕けた口調は難しいですね……わね」

「うん、俺のしゃべる感じを真似ていれば、その内に慣れるでしょ?」

「はい、学習型AIですから……だからね?」

「うん、そんな感じ」

「少し慣れてきましたわ。……っひゃん!?」

「あ、ゴメン、くすぐったかったか?」

「……はい、今は大丈夫です……の」


 スキンシップをしているからか、なんだか穏やかな時間が流れている。クローシアの口調はまだまだぎこちないけれど、会話の雰囲気はだいぶ打ち解けてきたかな。ほんの少しだけれど、仲良くなれた気がするよ。

 水薬の半分を使って、入念にかつ全身の隅々まで手塗りをした。残りは日が暮れた後にすれば良いだろう。

 日焼けが寝ても回復しなかった原因はまだ分からいけれど、現在も新たにクロ―シアにダメージを与える状態異常を起こし続けていると考えた方が良いよな。


 その後は日が暮れてからも残業をして、翌日分の水薬を購入した。その最中に鉄の斧のストックが無くなってしまって、ちょいと難儀する。

 今日も交易ボックスには鉄の斧が並んでいなかった。もう少しだけ残業をして、翌日に並んでいたら直ぐに買える様に薪を準備する。


 決して豊かではないけれど、これはこれで、まったりとしたスローライフな感じかな。ハードだけどね。

 今夜は寝袋を別にして隣り合って寝る事にした。一緒の寝袋は昨日だけ。特別な時だけだ。


「イソカさ……ん。イソカ。お休みなさい」

「うん、今日も一日ありがとう。明日もよろしくね。それじゃお休み」


 彼女の髪を一撫でして、俺達は眠りについたのだった。





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