表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/50

迷子のケット・シー

※家を建て、安全地帯を増やしまくった俺達は、他の土地へと旅にでた。

 その先での出来事。

 

 

 ▽▼▽

 


「ねえ、イソカ。罠は外されてしまいましたね」


 クローシアが俺に声をかける。

 俺達は今、幻獣を捕獲しようとしている所だ。


「だったら、真っすぐ飛び込んで行ってぶん殴りましょう。簡単で良いわ」

「魔法で吹き飛ばすのはどうでありますか?」

「却下だよ。討伐じゃ無くて捕獲だって何度も言っただろ!」

「3人とも静かにしてください。逃げられちゃいます」


 脳筋メンバー2人に乗せられて、つい大きな声を出してしまった。

 俺達4人が捕獲しようとしているのは、猫型の幻獣。黒い毛並みに白い胸。2足歩行をする猫。ケット・シーだ。


 捕獲用の罠から餌を器用に外し、美味しそうにムシャムシャ齧っている。

 因みに、餌の方に薬等を仕込んでも無駄らしい。察知して食べないのだとか。


「やっぱり『捕獲用罠キット』とか市販品はダメだな」

「そうですね。別の方法を取らないといけませんね」


 ケット・シーは、丁寧にも罠に砂をかけて無効化していた。トイレの処理をする猫の習性みたいだ。


「ケット・シーは喋れるのでありますよね? だったら話せば分かるのでは?」

「そうなのね。良し!」

「『良し!』じゃねぇよ。肉体言語で語り掛けようとすんな」

「何よ。否定ばかりしないで、良い案の1つも言ってごらんなさいな」


 うむ、確かに意見を却下するなら対案を出さなければダメだね。正規の方法が失敗したなら、オリジナルな方法だ。


 俺は、こんな事もあろうかと以前から用意していた、猫ちぐらの様な物を取り出す。かまくらを草で作った感じの形で、猫の興味を惹く『猫ホイホイ』だ。

 ただ、この猫ホイホイを持っているからと言って、無造作に近寄ってはいけない。猫には猫の間合いがある。現実世界での飼い猫との付き合いで、俺はそれを学んだ。


 この世界はゲームの仮想世界だけれど、妙に現実的な部分が多い。猫の習性だってリアリティに溢れていると思うんだ。


 そっぽを向きながら俺は、ゆっくりとケット・シーに近づく。見つめてはいけない。猫とヤンキーは目を見合ったら喧嘩の合図なのだから。

 ある程度近づくと、猫の耳があっちこっちへ忙しなく動いた。気づかれたし、警戒されている。


 次の段階だ。俺はハトの鳴き真似の様に声を発する。


「クルックルルル~。クルックルルル~。クルル~、クルル~」


 仲間たちが残念な人を見る目になっているが、待って欲しい。このハト真似をすると、何故か猫と仲良くなれる。現実世界で何度も実証済みだ。

 ケット・シーは耳をピンと立ててこちらへ向けてきた。興味深々みたいだね。


「にゃっ、にゃっ! にゃっ、にゃっ!」


 短い声で挨拶をしてきてくれた。これは期待がもてそうだ。

 暫く立ち止まってチラ見しつつ、ハト真似を繰り返す。すると、ケット・シーから近寄ってきた。尻尾はゆっくりと大きく左右に振っている。好奇心を刺激されている様子だ。


「お兄さんのソレ、良さそうでにゃんすね」


 喋った! って、ケット・シーだから当たり前なのか。猫ホイホイを見ながら語り掛けてきた。

 俺はゆっくりと猫ホイホイを地面に置く。


「ああ、良い物だぞ。そこはかとなく、包まれる感じがする」

「そこはかとにゃく……。ニャンが試しても良いでにゃんす?」

「ああ、昼寝しても良いぞ」

「昼寝まで!? それじゃあ、失礼するでにゃんす」


 ケット・シーはもぞもぞと身体を動かし、猫ホイホイへと入ってゆく。

 

「包まれる心地よさでにゃんす~。極楽だにゃ~」


 はい、確保。

 

「やりましたね、イソカ」

「意外と簡単だったな」

「そうね、それなら躾けるのは私に任せなさいな」

「魔女の! 魔女の使い魔には猫が必要でありますよ!」


 脳筋ズは今回役に立ってないんだから、ちょっと落ち着け。

 さて、目標の幻獣を捕獲できたので、帰るとしようか。

 

「イソカ! 敵性反応です!」

「何処からだ?」

「西から、数は1!」


 クローシアの注意に警戒を高めていると、熊が現れた。

 デカい。説明不要に大きく、体長は10mを超しそうだ。

 

「イソカ! これは私にやらせなさいな!」

「私も加勢するでありますよ」

「そう? なら、アレで行くわ」

「はい! 了解であります」


 アレとは何か?

 

 ウィンディが、杖を持って回転をし始めた。ジャイアントスイングのように、ブンブンと振り回している。

 その様子を見て、イルメスは助走をとるためなのか、歩幅を数えて距離をとる。

 

「風よ、その細やかなそよぎよ。届かない声を諦めないで。風がそよがなければ悲しい歌も響かない――」


 ウィンディの謎ポエムが始まった。これは、そうとうに気合を入れて魔法|(物理)を放つつもりだ。

 回っているのに、声が振るえていないとか、かなり強い声帯だろう。

 

「ほら、小さな歌が集まるなら、貴女の心も飛び立てる。恐れないで、その空を――トルネードバースト!!!」


 ウィンディは掛け声とともに、杖を大きくアッパースイングをする。すると、竜巻が発生して巨大熊にぶつかった。

 巨大熊は、ぶわっと持ち上がり、手足をばたつかせてもがくも、体勢を維持できずグルグルと回って更に上空へと持ち上げらえる。

 

 このタイミングで、イルメスが駆けだした。音を置き去りにする勢いで、距離を詰め、上空の熊を目掛けてジャンプする。

 回転する巨大熊の背中に乗り、その後頭部をがっしりと掴んだ。すると、その場所がパキリと凍る。

 やがて回転の威力が弱まると、ゆったり巨体も落ちてくる。

 それに合わせて、イルメスは巨大熊の腹部に回り、顎を突き上げるようにのど輪攻撃をした。

 そして、巨大熊は後頭部から地面へと落下する。バコンと硬くて大きい物が割れる音がした。

 巨大熊は、ぐるんと大きく目を剥いて、息絶える。

 

「ざっとこんなものね」

「やりましたね!」


 イルメスとウィンディはハイタッチで喜んでいた。

 

「に゛ゃー! で、デストロイドベアーが……。ニャンを食べないで欲しいでにゃんす……」


 猫ホイホイの中で、ケット・シーは更に丸くなって怯えていた。

 だが、それも束の間で、俺が巨大熊の解体を済ませると、興味津々で寄って来る。

 

「お兄さん、胆はありにゃすか? ニャンは熊の胆を探しているのでにゃんす」

「あるぞ。欲しいのか?」

「そうにゃす。何でもするから、譲ってほしいでにゃんす!」

「それじゃあ、俺と一緒に来てもらおうか」


 有無を言わさず、俺達はケット・シーを街へと連行した。

 

「猫ちゃん!」

「マリーちゃん!」


 今回のケット・シー捕獲の依頼主の元に届ける為にだ。

 街の大工の娘のマリーちゃん6歳から、仲良くしている猫を探して欲しいという依頼だった。その猫がケット・シーだ。

 報酬は、ドングリ3つ。

 とてもしょっぱい報酬だけど、これで木を充実される事ができるのだ。俺にとっては価値ある報酬だ。

 

「猫ちゃん、心配したよ! 居なくならないでよ、バカバカ!」

「マリーちゃん許してにゃ。ニャンは熊の胆を探して来たんでにゃんす」


 ケット・シーとマリーちゃんは抱き合って再開を喜んでいる。


「猫ちゃんのほうが大事なの!」

「でも、これでマリーちゃんのお父さんの薬が作れるのにゃす」

「ほんとうに? お父さんの病気が治るの?」

「そうにゃす。あと、黄金カボチャの輝き種があると、材料がそろうんでにゃんす。

 けど、それのある場所が問題でにゃんす……」


 そう言って、ケット・シーは俺の事をチラチラと見てきた。

 とても露骨なアピールだ。

 けど、乗りかかった舟だから、そっちも探してやるか、仕方が無い。

 訊くと、この地を治める子爵の荘園の中にあるそうだ。

 

「イソカ、顔がにやけてますよ」

「そうか? 仏頂面な気がするけどな」

「次はカボチャね。割り甲斐があるわ」

「魔法の馬車なんかどうでしょうか?」


「ちょっと、2人とも、貴族さんを相手にしたら、また面倒になりますよ」

「平気ね」

「大丈夫であります」

「よし、乗り込んでみるか」

「もう、イソカまで。また街を追い出されても知りませんから」


 やれやれと言った表情だが、クローシアは先頭に立って歩き始めた。

 俺達の感性に毒されてきたかな?


 そんな感じで、俺達の冒険は続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ