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44 臭い対策


 無事にプレーリーウルフの群れを討伐できて、さあご飯だーって一息ついたら気が付いた。外が血生臭い。


「クロ―シア。魔法陣って臭いをカットできないの? なんか攻撃的だよ。鼻に刺さる」

「……ダメージ判定が無いとカットできません。否な臭いですね」

「そう? 私は平気よ」

「この臭い、私はダメであります」


 臭いダメ派が多数になったのでどうにかする事になった。


 案① 死体を片付ける


 数えたらプレーリーウルフが48。そして巨大な狼が1。穴掘って埋めるのも手間だ。

 そもそも、そのまま捨てちゃうのも勿体ないよな。毛皮とか牙とか色々使えそうだし。それなら剥ぎ取りか。意識を集中させたら、腰に剥ぎ取りナイフが現れた。これで解体をしてゆく。

 でも、動物の解体ってどうやるんだ?


 何処から手を出したら良い物かと悩んでいたら、メッセージアイコンが光っているのに気が付いた。


実績:獣ハンター 獣を仕留めました。解体ナビゲーションを解放します。


 こんな実績を獲得していた。


「あ、あれ? イソカ。私の知らないナビゲーション情報が発生しました」

「うん、なんか俺の方に解体ナビってのが解放されたみたい」

「はい。その様ですね。私の領域を経由して視覚的に解体方法をナビゲートするみたいです」


 そういう事なので、早速試してみた。剥ぎ取りナイフを構えると、どの位置に刃を入れたら良いかのガイドラインが出る。スーッと刃を滑らせると、スパスパ切れた。

 深さや角度もガイドにそって作業を進める。毛皮、肉、内臓、爪、骨。そして核の様な物。色んな部位に別れた。サクサクできて面白い。


「へぇ。イソカ殿は手際が良いのでありますね」

「これはナビのおかげだよ。そういえば、ウィンディは剥ぎ取りができるのか?」

「どうなんでしょう? 試した事が無いので分かりません。なので、やってみたいのであります!」


 拳をぐっと握って気合いをいれるウィンディ。気合いを入れたままで時は過ぎ、変化が無い。


「……ナイフが出ないのであります」


 一気にテンションがダウンした。


「気に病む事無いのよ、ウィンディ。こういう細かい事はイソカに任せれば良いの」

「うう、何だか申し訳無いのであります……」

「私もできませんし、こればかりは仕方がありません。木こりが特殊なんです」


 女達3人は慰め合っていた。特殊な種族である俺は、黙々と解体作業を進める。

 その結果、獲得できたのが――


プレーリーウルフの皮:41

    同    肉(可食):48

    同    心臓:48

    同    肝:48

    同    爪:187

    同    牙:174

    同    骨(大):91

    同    骨(小):364

    同    腱:163

    同    核:48


と、なった。そして巨大狼。こちらはクロ―シアも知らないモンスターで、メガロコヨーテという名前だった。獲得できたのが――


メガロコヨーテの皮:1

    同   肉(可食):5

    同   心臓:1

    同   肝:1

    同   爪:8

    同   牙:4

    同   骨(大):3

    同   骨(小):7

    同   腱:3

    同   核:1


と、なった。数の方は当然プレーリーウルフの方が多いけれど、1つ1つの大きさは、流石はボスのメガロコヨーテの方が大きい。どちらも使いでがありそうだ。何に利用しようか、ワクワクする。


 解体が済んだら、沸き立つ様な臭いは消失する。けれど、まだ辺りに残留している臭いは漂っている。これもどうにかしたい。


 案② 消臭剤を使う


 消臭剤と言っても、そんなアイテムはまだ存在しない。けれど、その糸口がある。

 それは、ビレスト村に行っている間に獲得した『上級植樹』のスキルだ。これは様々な山菜やキノコも植えられるスキルになっている。その中で『消臭茸』というのがある。効能は名前のままだろう。これに望みを託す。


 ぐぐぐ~っと気合いを入れて、スキルが発動。ポンと光って可愛らしいキノコが生えた。お部屋の片隅にあっても違和感が無いようなインテリア性のあるキノコだ。これは期待できる。


 拠点の周りを消臭茸でいっぱいにした。これで臭いは消えたかな? 鼻が慣れてしまっているかもしれないから、鼻の記憶をリセットする。こんな時は、他の匂いをたっぷり嗅いだら良い。落ち着ける香りだと尚良しだ。

 クロ―シアを抱っこして髪の香りを嗅ぐ。


「い、イソカ!? ちょっと、嗅いじゃダメですょ……」

「大丈夫。必要な事だから。大切な事だから!」


 何分かそうして、外の空気を嗅いでみたら、臭いは全くしなかった。

 むしろ、森っぽい匂いも消えている。消臭茸はかなり優秀だ。


「むぅ、恥ずかしかったです。でも、これなら大丈夫ですね」

「これで落ち着けるであります」

「このキノコは食べられるのかしら? パンに挟むと美味しそうね」


 クロ―シアとウィンディも大丈夫な様だ。そしてイルメスは殴るのと喰うのからはちょっと離れろ。後で食べさせてやるから。


 一応、植樹スキルで植えられる山菜キノコ類は全部可食な様だ。だから消臭茸だって食べても大丈夫だろう。けれど、生は避けたいよね。もっと調理器具を整えてからチャレンジしてみたい。


 血生臭い匂いが無くなったから、皆で美味しく食事をした。


 食事が終わって一息ついたら、さて次は何をしようかな。やりたい事は沢山あるけれど、もう暗くなっているから限られる。

 ……とりあえず、建物拡張ができるかどうかの確認をするか。


 現時点の拠点は、三角柱のシェルターを大きくした物だ。その中に『コ』の字に床を作って、中心は土を剥きだしにしたままで火が熾せる様になっている。

 改修の作業台を設置して、改善案を見る。


 まず必要なのは床面積を広くする事かな。今の広さで4人が寝るには少し狭い。

 どれくらいまで広げられるかなって見ると、直ぐに魔法陣からはみ出してしまった。さっきみたいなモンスターの襲来は、今後もあるだろうから安全地帯の中に収めたいとダメだね。


 色々と模索すると、2階を作る案が出た。1階部分をそのま上に拡張する感じだ。そうか、横がダメなら上に広げたら良いね。

 必要な薪は500束。意外と安いな。帰って来る途中に沢山確保したから、問題無いね。


 皆に一旦外に出てもらって、拠点の改築。無事に2階建てになった。

 今までの建物がそのまま上に持ち上がって2階になり、同じ床面積で1階が新たに出来た形になる。まるで作図アプリでコピー&ペーストした感じだ。

 1階の天井までは2mくらいかな。圧迫感はあるけれど、息苦しくなる程でも無い。


「わぁ。大きくなりましたね」

「広くなったわね。大きい事は良い事だわ」

「はい、立派であります!」

「それで、イソカ。2階にはどうやって上がるんですか?」


 あ! クロ―シアの指摘で気が付いた。階段が無い。さて、どうしよう。これは改修の作業台でも作れないみたいだ。他の手段も出ない。

 ……階段がダメなら梯子で良いか。


 急いで木を伐ってきて、角材にする。それを何本か細かく切って棒にして釘で打ったら梯子の完成だ。シンプルで良い。ぐにゃぐにゃしない様に筋交いも止めた。

 これを建物内で焚き火の邪魔にならない位置に取り付けた。

 試しに上り下りしてみたけれど、大丈夫だ。問題無い。


 梯子が出来たら、更に気になる点が出た。壁が欲しいね。今は吹きっさらしで何とも物悲しい。


 さてさて、壁の拡張は……と操作しても、メニューに出てこなかった。さっきの梯子もそうだけれど、無い物は作れないって事か。

 ビレスト村の民家程立派な建物なら拡張の余地があるけれど、掘っ立て小屋未満なウチの拠点ではまだ無理みたいだね。


 となると、明日は壁を作ってみよう。


 その他に今できそうな事はっと……。お、床を板張りに出来るぞ。今は角材を並べただけの、ゴツゴツした床だ。武骨過ぎるからどうにかしたかったんだよね。

 こちらの費用は200束。さくっと改善しちゃおう。


 床を板張り・フローリングにする。滑らかでかつ、しっかりとした固さのある板だ。ササクレが無いから触っても棘が刺さったりしない。安全で良いね。


「わははっ。ゴロゴロ転がっても引っ掛からないぞ。たーのしぃ~」

「もう、イソカったら。私もやりますね~」

「待ちなさい。女神の転がり方ってモノを伝授してあげるわ!」

「それなら私はでんぐり返しをするであります!」


 良い年をした俺たちは、暫くゴロゴロ楽しんだ。

 拠点がみるみる良くなって、いよいよ家と言える展望が見えたから、テンションがおかしくなったんだ。それに付き合ってくれる皆は良い仲間だと思う。


 次の目標も決まったし、皆が寝るスペースも確保したから、今日はもう休む事になった。





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