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39 伐採パワー


 復興の為に大規模な森林伐採を開始しての3日目。作業中にメッセージアイコンが光った。確認すると――


実績:緑の手 1万本の植樹を行いました。貴方の手にかかれば、どんな植物も芽吹き繁茂します。伝説植樹のスキルが解放されます。


 ふむ、伝説植樹のスキルとな。こちらも確認してみよう。


伝説植樹:世界樹を植えられる。(5万P)


 うぉっ! 世界樹とか出た! マジで!? マジで世界樹を植えられるの? 習得に必要なPも5万Pとか、まさに伝説級だな。この前クロ―シアが思わせぶりに言っていたのはこれか。


「おーい、クロ―シア!」

「何ですイソカ?――きゃっ」


 俺はクロ―シアに駆け寄り抱き着いた。そして、彼女の身体を抱えてグルグルまわる。


「ちょっとイソカ、どうしたんですか?」

「やったぞ! 緑の手の実績を獲得したんだ!」

「っ! 凄いです! やりましたね! 流石はイソカです!」


 クロ―シアもぎゅっと抱きしめかえしてくれる。彼女の甘い良い香りがした。


「後はスキル習得に必要なPを貯めないといけませんね」

「ああ、こんな事なら他のスキルも取らないでおけばよかったよ」

「これはあくまでオマケですよ? 村の復興には役立ちませんし」

「そうだな。現状に役立つスキルは全部取ったから、これからは心置きなく貯められるな」

「はい、頑張ってください!」


 昨日までに、他の植樹系スキル(様々な木や山菜にキノコ等に対応)や伐採系スキル(上級まで揃えた)を取ったから、Pはすっからかんなのだ。こんなタイミングで実績の解除とか、何をおいても貯めるしかないね。

 だって世界樹なのだ。その樹は生命力に溢れまくり、葉っぱ1枚で霊薬の元となり、湧き落ちる雫は長寿を約束するとか何とか。その枝で作った武具は伝説級の逸品になり、木洩れ日に集まる動植物は生を謳歌しまくるという、そんな世界樹だ。


「俺の森、世界樹あるんだけど、来る?」


 こんな1言を言われたら、どんな木こりもイチコロだ。


「きゃーステキ! 木こらせて!」


ってなる。誰もが憧れる木こり界のトップランナー間違い無しだ。俺は覚悟を決めた。


 鞄の中には『力もりもり女神の癒されるサンダル』がある。元気と力と速さが10倍になる呪いのアイテムだ。これを使うのは正気じゃ無い。狂気の沙汰だろう。けれど、正気にては大業ならず。伝説の樹を植えるのだ。やるしか無い。

 一式装備になっている安全靴の下にサンダルを敷く。そして、余っているスライム革で強引に縛り付けた。具合を確かめる為に踏み込む。サンダルはずれる事は無く、盛大な土煙を上げた。

 昨日今日で、鋼の斧が大量に並んでいたので、村の人達が確保してくれている。ゆくぞ、世界樹。斧の貯蔵は充分だ。


 気合いを入れて斧を振るう。コンッと響く音と共に、ダンッとなる切断音。木は1振りで切り倒された。素晴らしい。


 上級者の伐採術まで習得した俺は、通常の2倍の速さで伐採ができる。本来なら、そこで力が10倍になったとしても、1振りで樹木を切断するには至らない。けれど、この呪いのサンダルは、速さも元気も10倍だ。

 スキルによって2倍になった伐採パワーが、力を増す事によって20伐採パワーに。そこからスピードが加速する事で200伐採パワーになり、元気が爆発する事で2千伐採パワーになる。


「木これるッ! 全てがッ!」


 俺はひたすらに斧を振り続ける。服の効果でスタミナは切れる事がない。伐採方向をミスし、自分の方に樹が倒れても物ともしない。怪我をしてもサンダルの効果で回復し、それでも足りなければ『心頭滅却』で回復させる。

 慣れてくれば1振りで2本3本と複数の樹を伐採できた。まるで草を刈るが如くスパスパ切れる。めちゃ木これる。

 この伐採パワーによる仕事率は1時間で5千本以上の樹木を薪にする程になった。サンダルの耐久値が無くなるまでこの勢いは続き、イルメスの分と合わせると今日1日で4万本に及ぶ樹木を伐採した事になる。



 ▽▼▽



「もう、イソカは無茶し過ぎです! いっつも無茶し過ぎです!」

「いや、だってさ――」

「だってじゃありません! こんな事をして身体を壊したらどうするんですか!」


 クロ―シアに怒られた。今は俺達用に割り当てられた集会所の個室に居る。だから回りに遠慮する事なく大きめの声だ。

 身体を壊したら死に戻りしたら良い。そう口に出かけたが、ぐっとこらえる。危ない。これは禁句だ。


「今の所は全然異常がないぞ。装備とスキルの効果で問題無しだ。危ないから、無茶だからって言って何もチャレンジしなかったら、物事は全然進展しないだろ」

「そうですけれど、限度があると思います」

「その限度っていうのは、クロ―シアが俺の事を心配してくれての限界値って事だよな? それは嬉しい。ありがとう。けれど、もう少し俺を信用してくれないか? 直感に近いけれど大丈夫だって思ったからチャレンジしたんだ。結果、大丈夫だったろ」


「それは、結果論です」

「結果論でも良いじゃないか。だってクロ―シアは1ヶ月前は日の下で活動なんかできなかっただろ。でも、今は検証して対策をとったから、1日中でも外に出られるじゃないか。これだって結果が良い方に転がっただけだろ。だから、結果論でも良いじゃないか」

「む~っ! 理屈ではわかっても、感情では納得できません!」


 ほっぺを膨らませてむくれるクロ―シアを抱きしめる。


「ほら、どこにも異常はないよ。クロ―シアも触って確かめてみるか?」

「……わかりました。全身くまなく確かめます」


 ベッド等の家具は無いので、床の上のゴロンと横になると、クローシアが手を伸ばして俺の身体を検める。


「どこか、痛い所とか無いですか?」

「うん、大丈夫だよ」

「うふふ、いつもとは立場が逆ですね」

「そうだな。クロ―シア先生、お願いします」

「はい、それじゃ脱いで下さい」

「え!? そこまではしなくて良くないか?」

「いいえ、確かめるのには必要です。見落としがあったらいけませんから」

「どうしても?」

「はい、大切な事ですから」


 うむ、仕方が無い。ぱぱっと装備を脱いで、大の字になった。うつ伏せだけど。こういうのは恥ずかしがったらダメだ。勢いが大切なんだぜ。


「イソカの身体はこの1か月で逞しくなりましたね」

「そりゃ、毎日斧を振ってるからね。重労働だよ」

「本来なら、そんな外見の変化は起こらないはずなのに、不思議ですね」

「ディープモードだからかもね」

「そうですね。毎日に変化があって、自分の中にも変化があって。これなら私の身体も大きくなるかもしれません」

「う~ん、クロ―シアは21歳なんだから、成長期は止まってるんじゃないか?」

「私は最後まで諦めません!」


 クロ―シアは鼻息を荒げてペシペシと俺の身体を叩く。止めて、直に叩かれると紅葉の手形が出来ちゃう。クロ―シアの手は身体に見合う小ささだから、とってもクリティカルだ。芋虫みたいに身をよじって逃げる。


「痛い、痛い。そんなに叩くなよ」

「あぁ! ごめんなさい。つい、やってしまいました。って、大変です! イソカの身体に異常発生です!」

「あ! ちがう、コレ大丈夫なやつだから。だから、もう終わりな!」


 叩かれた痛みで、鞭でシバかれた気持ち良さを思い出してしまったんだ。だから、仕方が無い生理現象ってやつなんだ。


「だって変ですよ? さっきまでそんなになっていませんでした。きちんと見せてください!」

「ダメ! これ以上はダメだから、クロ―シアは良い娘だから終わりね!」


 俺は必死に身をよじって隠す。それを暴こうと、クローシアは更に手を伸ばしてきた。


「子供扱いしないでください!」

「子供じゃないからダメなんだってば!」


 ここは何が何でも抑える所だ。ここを踏み越えてしまったら、後は下り坂一直線。朝どころか昼まで止まらない事、間違いない。村が復興の為に頑張っている時に何を頑張っているんだ? って話しになる。ナニですよとか答えたら絶対ダメだよね。理性ある人として!


「クロ―シア! 本気でストップ! 止めろ!」

「ひぅ! だって心配なんです! イソカの身体はどうなっちゃうんですか?」


 怒鳴ってやっとクロ―シアは手を止める。危ない所だった。あと少し遅かったら、もう、本当に理性が危ない所だった。

 急いで服を装備し直して、クローシアと向き合った。


「クローシア、これは正常な身体の反応だ。それは分かるだろ?」

「私はそんなになりません。だから、分かりません」

「ふざけた訳じゃ無いのか?」

「はい、ふざけてこんな事したりしません。本当に心配なんですから……」


 もう少し掘り下げて訊くと、どうやら本気で理解していなかったらしい。そういえば、この世界で生活し始めた当初、クロ―シアは知識に偏りがあるって言っていた。性的な知識もそれに当てはまるんだろう。

 身体に対してエッチな気分になるのは知っている。でも具体的にどうなるかは知らない。男と女が居れば子供を作れるのは知っている。でもその具体的な内容は知らない。


 つまり以前の子作り発言も、男女の仲が良くなったら結果として子供ができるらしいからそれくらい仲良くなりたいって意味で、具体的な行為をしたいって事ではなかったのか。

 これは危なかった。もし、それを確認しないでマイホーム入手にまで至ったら、俺はクロ―シアに酷い事をしてしまう所だった。無知に付け込んではいけない。


 いつも一緒にいるから色んな事を話してはいる。だからお互いの事を知った気になってしまう。でも、全然会話が足りていなかった。きっと足りるなんて事は無いのかもしれないけれど、だからもっと話してより理解しあわなければダメだと痛感した。


「――そういう訳でね、アレは男がエッチな気分になったらそうなる生理現象なんだ」

「えっ!? エッチな事だったんですか!? 私、てっきり……。わわっ、ごめんなさい!」

「知らなかった事は仕方がないよ。それは悪い事じゃ無いから。エッチな事だって、本当は悪い事じゃ無いからね」

「……はい。でも、私はイソカが他の人でエッチな事になっていたらイヤです。悪い事じゃ無いのに、そう思ってしまうのは、この気持ちがダメな気持ちなんですね……」


「それで普通だよ。俺だってクロ―シアが他の男に抱き着いたりしたらイヤだもの」

「私はそんな事しませんよ?」

「うん、そこは心配していないよ。ただ、好きな人の気持ちは独占したいって感情は普通に誰でもあるって事だよ」

「それじゃあ、私がイソカを独り占めしたいって思うのも普通で良いんですね」

「ああ、良いよ」

「えへへ~。それじゃあ、ギュってして下さい。それがイソカの義務ですよ」


 この日の夜は一緒の寝袋に包まって就寝した。





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