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03 契約社会の洗礼を受けるも、気にせず遊ぶ


 ナビゲーターさん曰く、しばらく他のゲームができないとな。どう言う事だ?


「それって、なぜだい? ナビゲーターさん。そこまで俺をメロメロにしちゃうって事かな?」

「いいえ、違います。お客様はAI開発特別プロジェクトへの参加を同意くださいましたので、契約により暫くは他のゲームがプレイできません」


 マジか。でも、そんな契約した覚えが無いぞ?


「ゲーム初回起動時の説明で同意なさり、契約の内容にも異存が無い事をお客様の意思で確認させて頂きました」


 マジか。冒頭の選択肢って、そんな重要な事だったのか。全部読んで無いから、一切気が付かなかったし、当然内容なんて覚えていないぞ。


「それじゃ、いったん終了して公式ページから問い合わせしてみるよ」


 そうナビゲーターさんに話しかけると、彼女は何だかニコニコしているだけで反応が無い。その笑顔にはお菓子をあげたくなってしまう。


 さてさて、ゲームを終了するにはっと……。……あれ? 終了の画面は? コマンドは?


「ナビゲーターさん、どうやって終了させるの?」

「できません。現在の契約では、少なくとも3年間の常時参加の義務があります」


 何てこった。でも、それだとご飯とかトイレとかはどうするんだ?


「それは心配に及びません。このゲームをご購入可能な国には、提携した病院内に専用の設備があります。そちらに搬送いたしまして、24時間体制で体調の管理をさせて頂きます」


 とても用意が良い事で。そのAI開発特別プロジェクトって相当な物なんだな。ナビゲーターさんの言い方だと、各国に設備が在るみたいだし。


「でも、家族が同意しないと思うんだけど……」

「そちらを含めまして、弊社の法務部の者が現在お客様のご家族へ説明に伺っております」


 すごい。行動が早い。しかも法務部って。ゲーム会社の法務部って聞くと、裁判で真っ黒でも純白にしちゃいそうなイメージがあって恐ろしい。そんな人達に俺の家族は説得されているって事なんだろうな。俺、戻れるのかな? 今夜のアニメの録画予約をして無いんだけどな。下手するとネットの配信期間もすぎちゃうよ。


「えっと、ナビゲーターさん? 契約ってクーリングオフ的な物は有るんですか?」

「ありません。契約の不履行となりますと、違約金として1千万円ほど発生したします」


 な!? 何ですと? いや、まて、未成年がそんな契約を結べるのか?


「問題ありません。この件に関しては、昨年中にこの国の国会でも特別法が承認されました。4月から施行されています。因みに、この違約金に対しては自己破産ができません」


 恐ろしい事を、さらっと言われたよ。可愛いロリっ子エルフに笑顔で恐ろしい事を言われたよ。……アリだな。

 恐れおののきながらも少し興奮していたら、またピンポンとチャイム的なSEが鳴る。


「お客様、先程ご家族からプロジェクトの参加と搬送の同意を頂戴しました。ご家族からのメッセージがございます。お聞きなさいますか?」


 家族は何て言ってるんだろうか? 再生を頼むと

父『バカ息子』、母『バカ息子』、妹『お兄ちゃんキモイ』、猫『うにゃ~』

とあった。

 皆酷かった。しかも飼い猫のマメハチの声は翻訳すると『腹減ったニャ~』となった。俺の事はどうでも良いらしい。そんなお猫様愛してる。とうぶん会えないみたいだけど。


「つ、つまりですよナビゲーターさん。こうなったら、グダグダ言わないでゲームをしろって事ですか?」

「はい、そうなります」


 ぺっかぁ~と眩しい笑顔でナビゲーターさんが微笑み同意してくれた。これを見たらやるしかないね。


「それではお客様。私の外見設定やお客様のプレイヤー登録を続けさせて頂いても宜しいですか?」

「おっけ。続けましょう。ナビゲーターさんの外見はもうそれで大丈夫だから、プレイヤー登録の方で」


 そう言うと、ナビゲーターさんの身体は太陽を見たかの様な光を放った後に、しゅ~んとそれを収束させた。たぶん、これで今後の変更ができないように固定されたのだろう。

 それを見届けると、視界にプレイヤー名の入力画面が現れた。俺の名前をローマ字にして反転するとイカイソト。更にもじって『イソカ』としておく。


「プレイヤー名『イソカ』様を確認。キャラクターメイキングへ移ります」


 ナビゲーターさんのその言葉で視界が一気に別の物になった。何か良い所のセレクトショップ? お高いブティック? そんなお店の中っぽくなる。

 落ち着かないわ。こんな空間は勘弁だわ。服を買いに行く服が無いからジャージで島村な俺なのに。

 ファッションビルとかに行って、お店的にノーサンキュな客が来たら『何をお探しですか? その服で?』って言われるのってマジですか? 服屋さん怖いです。


 それであたふたしていたけれど、気が付いた。今までは一人称視点だったけど、今は三人称視点になっている。


「あれ? ナビゲーターさん。このゲームって三人称視点でもできるの?」

「はい、可能です。しかし、推奨はいたしません」

「え? 何で?」

「三人称視点中は移動ができなくなります。高い視点で移動をして足元が疎かになり、転倒や思わぬ滑落を防ぐ為です」


 なるほど。そうなるとプレイヤー外見は拘らなくても良いかな。常に三人称視点だったら、可愛い女の子の外見にして、可愛い装備を眺めながらのまったりプレイが捗るんだけどね。ストーカープレイとか言わないでね。

 となれば、身長と体重は自分の身体のままで、他はランダム作成にしようかな。


 ポンポンと変えたく無い数値を入力して、後は運を天に任せると、なかなか良い顔になったのでこれで良しとする。たぶん、10人中6人は『悪く無い』って言ってくれる程度になかなかだ。


「服装の変更はなさいますか?」

「どんなのが有るの?」


 現在は身体にぴったりしたアンダーウェアって感じの上下だ。


「基本装備はポロシャツにチノパンで、予備に長袖のシャツが付きます。お色目はお好みで設定くださいませ」

「他の服は? ジャージとかスーツとか」

「基本装備以外ですと、スタート時に選べるのは課金装備となります。如何なさいますか?」


 そうかぁ、課金装備かぁ。買ってみたいけど、もうお金が無いからなぁ。でも個性を出す所だしなぁ。どうしようかなぁ。


「イソカ様。先ほども申し上げましたが、服は時間をかければ交易やクラフトで入手可能です」

「そうなんだ。じゃあ、迷う事無いな。その基本装備でポロシャツは緑、チノパンと長袖シャツはベージュでお願いします」


 すると緑ポロシャツでベージュチノパンの俺になった。足はスニーカーっぽい安全靴を履いている。丸太が落ちても潰れない、釘を踏んでも突き抜けないって感じの丈夫な物だ。

 手提げ袋も付いて、中には長袖シャツがある。そこから取り出して、一応長袖も着てみる事にした。


「そういや着替えって、メニューで一発変更とかできるの?」

「はい、可能です。ですが、イソカ様ご自身の手でお着換えくださる事も可能です」


 とりあず手を使って着換えてみる。やっぱりここも拘りが凄い。チノパンをまくり、アンダーウェアの中を覗いたらきちんと付いていた。そして触れた。モザイクも無い。

 何となくだけど、チンチン触ってると落ち着く事って無い? 俺は落ち着く。そして、触っている感触もあった。触覚のフィードバック凄い。


「……」


 あれ? ナビゲーターさんが眉根を寄せていぶかしんだ目でこっちを見ている。いわゆるジト目だ。赤い目が不快感を持って俺をにらむ。美少女からそんな目で見られるのは、とてもいけない気持ちになってしまう。

 って、そうか。これは少女を見ながら股座またぐらをいじるという、全く持って事案不可避な状況だ。おさわりまんこっちです。自重しないとだ。


「……ハラスメント規制等はありませんが、今はご遠慮ください」

「ナビゲーターさん、すみません。真面目に着換えます」

「はい、そうして下さい」


 いそいそと着換えてみると、長袖も問題が無かったし、着替えるのも生身の感覚と同じで全然違和感が無かった。すごいなフルダイブVR。あと、シャツを着換えるのにパンツの中を確認する必要も無かったね。気になったから仕方が無かったんだけど。


「ちなみに、ナビゲーターさん」

「はい、何でしょうか?」

「さっき俺の股間を見たらモザイクが無かったんだけど、大丈夫なの?」

「はい、描画基準やその他も国際規格ですので問題ありません」


 なるほど。確かうちの国での基準では痛みは軽く叩かれたって程度が最大って聞いたけど、今回の開幕落下死の時はめちゃくちゃ痛かった。まさに死ぬかと思った位だ。これが国際基準なんだろう。

 そして、モザイクが無い。って事はひょっとしてだ。


「ナビゲーターさんにも、無いの? モザイク」

「はい、ございませんよ」


 そ、それは、そうならば、見せてもらう事は可能でしょうか???





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