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31 村人に小屋の作り方を教える


 寝袋がぐっしょりと濡れている。明け方から雨になった様だ。目覚めは最悪だったけど、それは嬉しい物だった。これで森林火災が収まってくれる。そうだと良いな。野宿的にはきつかったけどね。


 起きて気が付いたんだけど、視界の左下にまたメッセージアイコンが出てた。


実績:一人前木こり 1万本の樹木を伐採しました。これで貴方も一人前の木こりです。森を育てる事ができる様になります。植樹系スキルが解放されます。


 イルメスがなぎ倒した分も伐採数にカウントされているから、いささかチートかなって思うけど、貰えるものはありがたく頂戴するさ。

 この『植樹系スキル』ってのは精神力を消費して杉やその他の木、更にはキノコや山菜なんかも植えられる様になるみたいだ。


 けど覚えるのに必要なPが高い。杉だけを植えられる様になる『初心者植樹』でも1千Pもかかる。昨日は実績Pをガンガン消費して立木を消していたから、全然足りない。現在は500P程度だ。

 必要Pが高いかなって思うけど、このスキルを解放するまでに合計で1万Pを獲得しているはずだから、無茶な設定って訳じゃ無いのかな。時間をかければ実績Pは手に入るんだから、気長にやるか。


「イソカ、おはようございます」


 考え事をしながらもぞもぞしていたら、クロ―シアを起こしちゃったみたいだ。


「おはよう、クロ―シア。雨だけど、辛い事無い?」

「……そうですね。イソカと一緒だから大丈夫ですよ。でも、テント位あると有り難いですよね」

「そうだな。簡易野宿セットって、寝袋とたき火しか無いもんな。テント付きって物もあるの?」

「ありますよ。けど、交易ボックスには全然並ばないんですよね。これもディープモードだからかもしれませんね。村の人達の野宿セットにもテントは無いみたいですし」

「そうか。ひょっとしたら、何か必要なフラグが有るのかもな」

「案外、この森林火災を収めるのが、そうかもしれませんね」


 このまま濡れて病気になっちゃうのも嫌だから、そろそろ動くかな。ビレスト村の人達も、雨に打たれながら寝袋に包まったままの人ばかりだ。けれどその多くには、安堵の表情を見て取れた。


 俺は寝袋から出ると、広場の東側に行って伐採を始めた。枝を落して皮を剥いで、木材は角材に加工する。ロープで組んで粗末な東屋を作った。取りあえずの雨が凌げれば良いから、急ごしらえで充分だ。

 その作業の最中に、村の人達も興味があるのか不思議そうにこちらを見ていた。


「お! あんちゃん、作業台を持ってるのかい?」


 完成した頃になって、昨日治療した木こりのおっちゃんがやって来る。


「いや、自分で作ったんだよ」

「何だって!? 作業台が無くて、建物が作れんのか?」


 物凄くビックリされた。そうか。ゲーム的には作業台からクラフトメニューを出して物を作るのが一般的なんだ。だから、1から手作りってのは思いつきようが無かったんだろう。

 作業台を使った建築は、必要な材料を納品して暫く待つと自動的に完成する物らしい。イメージ的には、目に見えない大工さんが、いつの間にか仕事してくれていたって感じなのかな?


「教えてやるから、おっちゃんも作ってみる?」

「良いのか? 有りがてぇ。俺はファルゴってんだ。あんちゃんの、いや先生の名前は?」

「俺はイソカだけど、先生はやめてくれ。変な気がするからさ」

「そうか? 治療もできるし、不思議な方法で建物も作っちまうしで、凄いじゃ無いか。まあ、なら、イソカさんって呼ばせてもらうよ。よろしくな」

「ああ、よろしく。ファルゴ」


 『さん』付け位ならいいかな。俺はファルゴと握手をすると、もう1人の木こりも呼んで東屋の作り方を教えてやった。

 何棟か作るうちに村の男達が集まっての作業になって、かなりの大がかりになった。子供達は運搬のお手伝いをして、女達は足りなくなった蔦を取りに行く。こっちはイルメスに護衛をたのんだ。

 何だかお祭り騒ぎみたいになって、お昼頃には村人全員が雨を凌げる数の東屋が完成した。これで1段落ついたと俺たちは休憩を取る事にする。


「イソカ様、イソカ様! 今回はご助力を悼み入ります。おかげで村人は救われました」


 ウィンディが改まって挨拶してきた。『様』付けはマジで勘弁してもらいたい。俺としてはやれるだけの事をしただけだし、目的があってした事だ。感謝してくれるのは嬉しいけれど、それ以上に尊敬されると居心地が悪い。

 それに、心なしか俺を見る目つきがやたらとキラキラしてる気がする。嬉ションしそうな犬の目っぽい輝きだ。


「『様』は要らないよ。そんなに改まらないでよ」

「そ、それでは、イソカ殿。貴方のおかげで村は救われたであります。人の被害も出ずに困難をのりきれました。改めて感謝の意を」


 う~ん、『殿どの』かぁ。敬称的にどうなんだろう? 形骸化しちゃってる気もするんだけど、収まりの良い物では無い感じだなぁ。


「『殿どの』も固くない?」

「いや、イソカ殿は治療魔法を扱える高位魔法使いであります。私の様な泡沫魔法使いは到底及ばない術をお持ちではありませんか。ぞんさいな扱いをしてしまっては、ビレスト村の名折れでありますから、そんな不敬はできません……」


 成る程、よく分からんが面倒くさい理由でそうしているっていう事は理解できた。そもそも『癒し手』は魔法なのか? 効果をみれば魔法的だけれど、使っても精神力は減らない。より魔法的で攻撃的なイルメスの酸手は精神力を消費する。そういう分類ってどうなんだろう? やっぱり分からん。


「難しい事は取りあえず保留ね。それで村長と話しをしたいんだけれど、呼んできてもらって良いかな?」

「お安い御用であります。早速呼んでまいります!」


 ウィンディは軽やかな足取りで村の衆の元へと向かった。雨の降る中走るから、黒いローブが身体にぴったりと張り付いて、動きずらそうなのに、全然苦にした様子もない。

 村人に何やら指示を出していた村長に声をかけ、こちらへと連れて来る。


「いやはや、イソカ殿。この度は私どもを救う為にご尽力頂けただけでなく、小屋の建て方までご指導くださり、大変いたみいります。して、お話しとはどんなご用件じゃろうか」

「火事の件はその内に俺の拠点まで広がる可能性もあったから、お互い様だよ。それに、東屋だってついでの事だ。話っていうのはビレスト村の作業台を使わせてもらいたいって事なんだ」


 この提案を聞いて村長の長い眉毛がぴくんと跳ね上がる。


「ええ、ええ。それは構いません。どんどん使って頂きたいくらいです。しかしイソカ殿は木こりのはずでは? じゃったら、作業台なら簡単に手に入るはずと思うのじゃが……」

「それがね、何故だか交易ボックスに並ばないんだよ。さすがに0から作るのは無理みたいだからさ、困ってたんだ。後から言うのは厭らしいけどさ、俺の方も助けてくれたら嬉しいな」


「ふむ、そういえば、ここ最近はこちらの交易ボックスでも見ませんなんだな。これは、何やら事情がありそうですな。ワシらにできる事なら全霊をかけてお力になりたいと思う所ですじゃ。しかし、今回の火事で作業台は焼失しているかもしれません。無事なら良いのじゃが……」

「元々は何台くらいあったの?」

「村には5台ありました。建築の盛んな時期には要所に置いて活用していたんじゃが、ここ最近はそれも落ち着いて倉庫の奥に仕舞ったきりになっておりました。避難するにも皆で慌ててしまい、肝心の作業台まで頭が回りませなんだ……」


 そうだな。こういうのって定期的に訓練しておかないと、いざって時に体が動かないって聞くな。物の優先順位も咄嗟に判断つかないだろうし。

 それに、ファルゴ達が大火傷を負う位に火が回っていたんだから、ひょっとしたら村は焼け野原になっている可能性もあるのか。どうなっているか分からないけど、取りあえず一度村に行って確認する必要があるって事だな。


 俺たちだけで村に行ったら火事場泥棒みたいな感じになりそうだ。だから、村人にも案内してもらう事にして、いつ頃確認に行けるか村長と話す。それは、雨が上がり次第にという事に決まった。


 この日はずっと雨で、結局は行けなかった。でも、これは悪い事じゃ無い。雨の量が多ければ、それだけ森林火災をしっかりと鎮火してくれるのだから。

 ただ、たき火ができないから夜の闇が濃くて、何だか寂しい雰囲気を纏っていた。





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