24 新しい武器はお値段が高価
今まで並ばなかった新しい武器がやっと登場した。したのだが、高い。
『狩人の弓:(値段1千束)』
『狩人の矢筒:(値段1千束)』
『狩人の矢:(値段1束で10本)』
値段分の実用性があったら良いんだけれど……
「クロ―シア、弓矢が並んでるぞ! けど、高すぎる。性能はどうなんだ?」
「どれどれ、見せて下さい。……これは最弱の弓矢ですね。スキルにもよりますが、基本的には石の斧で殴った程度の攻撃力です。矢筒は20本収納できて、これを装備していないと、矢をつがえられません。ですが、打ち尽くすと自動的にリロードされます。その間、矢を打つ事はできませんが、その他の行動は可能です。また、弓の特性で稀にクリティカル判定があります」
最弱でこの値段か。1週間くらい頑張れば手が届くけど、その間の節約は厳しい物になるのは確実だ。
隠密が高いクロ―シアに持たせると有効そうなんだけどなぁ。クリティカルとか魅力的だし。けれど、そもそもクロ―シアが使えるのかな? 伐採の時みたくなったら目もあてられない。試すにしてもハードルが高すぎる。
それに、それだけの貯蓄があれば、もっと頑張って万能薬が欲しい。またイレギュラーな事で、クロ―シアが危なくなるかもしれないんだから。
「これは、かなりの余裕がないと無理だな」
「はい。私も遠距離攻撃ができれば、戦闘の役にたてると思ったのですが、これは高すぎですよね。……暫く戦闘は2人にお任せしますね!」
務めて明るく返すクロ―シア。少しだけ物悲しそうだ。索敵でも充分に役立ってくれているんだけどな。無いなら作るの精神でどうにかなるかな? 弓と矢なら何とかなりそうだけれど、矢筒が曲者だよな。
これも、作ったは良いけれど使えないってのも避けたいから、別の武器を考えた方が良いかな。アタッカーはイルメスが居るから、牽制できる様な方向で考えてみよう。
あと、考えるべき事がもう1つ。スライムの構造体の有効活用だ。交易ボックスに入れても値段はつかなかった。けれど、上手く加工したら意外と高値がつくかもしれない。サンダルだって、蔦のままでは無価値だったんだから。
構造体は表面はぶよぶよと弾力があって、固いゴム板みたいだ。そして少しだけ伸びる。中身はデロデロなゼリー状で、多くは直接手で触っても無害な感じだった。けれど、1部はちょっとピリッとして手の角質もテロンと剥がれた感じだった。これはきっと捕食体勢になった固体だと思う。スライムは主に肉を溶かしながら吸収するって話だからな。
どうするのが正解か分からないけど、取りあえず干してみる事にした。なめし革みたくなってくれたら良いなって感じだ。
角材を四角に組んで歪まないように筋交いもいれて、釘で張り付ける。その後は天日干しだ。
アイテムストレージの中は時間が止まるらしいから、構造物を仕舞ったままにしても腐ったり劣化したりは無いだろう。だから、これらは様子を見ながら少しずつ干してゆく。良い結果に繋がるといいな。
そういった事をしていたら、およそ15時になった。そろそろ今日も蔦の採集場所に行こうと思う。
「イルメス。昨日は革のサンダルがダメになってしまったみたいなので、これを履いてください」
クロ―シアが自分で作った蔦のサンダルをイルメスに渡す。
「ありがとうクロ―シア。こっちの方が滑らないわね! もし壊れたら、またお願いするわ!」
履き心地を試すイルメスはかなり気に入った様子だ。実際、皮のサンダルは底が平らでツルツルだったので、地面への喰いつきが悪かったそうだ。
対して蔦のサンダルは、底に凹凸があるので、比べると滑りにくくて踏み込みやすいとの事。この女神はとことんまで肉体派だ。
耐久力は革のサンダルの方が高いが、消耗品と割り切れば蔦のサンダルの方が良いのかもしれない。
今日はスライムが11体出た。9匹をイルメスに任せて、残りの2体は俺が同時に1人で挑戦する。昨日よりも更に足捌きを意識して動き回る。装備の効果で息切れが全然起こらない。妖精の洗礼は素晴らしい。
結局、2匹を相手どっても危なげなく討伐する事ができた。
このゲームはレベル制では無く、スキルと装備そしてプレイヤー自身の能力で強さが決まる。スキルも装備も新調しないで昨日よりも良い結果になったのは、自分の成長を感じられて嬉しかったな。
「すごいですイソカ! 昨日よりも動きが格段と良くなっています!」
クロ―シアがちょっと頬を染めて言う。ドンドン褒めてくれて良いのよ? 耳がピコピコしてるから、褒める事がまだ気恥ずかしいんだろうな。ちょい照れ可愛い。
実際に俺としても人を褒めるよりも皮肉を言ったりする方が、ポンポン言葉を出せるから、いざ褒める時って気恥ずかしい。だから分かる。褒められるととても嬉しいね。
「そうね、今日の所は合格点をあげるわ」
イルメスは腕を組んで仁王立ちしながらうなずいている。どこの師匠キャラだ。
彼女が居ないと、スライムに邪魔されちゃって蔦集めが捗らないから、用心棒として優秀だ。生産的な事ができなくても充分に役立ってくれる。
生産キャラの俺、サポートキャラのクロ―シア、戦闘キャラのイルメスと結構バランスの良いパーティになった。
そして、俺は生産キャラ宜しく、夜の生産活動をする。こう言うと何かエロいが、何て事は無く武器作りだ。とりあえず失敗しても、玩具として使えれば良いかな? ってのを模索中だ。完成までは日数がかかりそうだから、一気には作業しないで気長に作って行こう。
この武器が望む性能を発揮すれば、クロ―シアの戦力が大幅にアップすると思う。彼女が悦ぶ姿を想い浮かべると、やる気が漲るね。
無理の無い程度で切り上げて、この日は就寝した。
▽▼▽
深夜だと思う。何やらごそごそしている感じがして、ほわほわっと目が覚めた。何だか話し声がする。ヒソヒソ声だ。
「……ねえ? イソカにはしてあげたんでしょ? だったら私にもして頂戴な」
「……そんな。ここじゃ恥ずかしいですよ」
「私は恥ずかしくないわ。だからクロ―シアも恥ずかしがらないで良いのよ」
「しぃ! 声が大きいですよ、イルメス。イソカが起きちゃいます」
「だったら、外でやりましょう。それなら良いわよね」
2人の気配が動いてシェルターから出ていった。何だろう。ここでは恥ずかしくて、俺にはバレたく無い事を、2人でするのか……。
だんだん頭が冴えてきたぞ。え? 何? ナニなの!? これはNTRとかキマシの塔建築とかそういう方向なの? 許しませんよ。建築技能は俺のアイデンティティなんだから、2人で変な塔を建てちゃダメです。
慌てて2人を追いかけて外に出る。彼女たちは、緑魔法陣から出てちょっと離れた所にいた。
イルメスは全裸だ。堂々とした佇まいをしてる。見せつけているかの如くだ。
「……だったら、私も脱いだからお相子よね?」
「……もう、口だけで良いじゃないですか。しかた無いですから、あんまり見ないで下さいね」
するとクロ―シアはワンピースの裾に手を入れてスルリとめくり上げ、するするとパンツを下し始めた。
いや、ホント何やってんの???