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星に願いを~ものぐさ勇者の異世界冒険譚~  作者: 葉月幸村
第3章 いざ! ダンジョン!
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3-8 久々の訓練

 一時間後、ガロンに指定された訓練施設にパーティメンバー全員で向かう。

 愛姫は当然不参加だが、当然他のみんなが行くということでついてきた。


 俺が扉を開けて中に入ると、既に大半の生徒が集合していた。


「あっ」

「えっ」


 何人かが俺達を見て驚きの声を小さく上げる。

 まぁ予想通りの反応なのでスルーして適当な場所に佇むことにした。

 

 クラスメイト達は話しかけるでもなく、遠巻きにしているという感じだ。

 まぁ当然だろう。もともと俺との接点なんてほとんどなかったし、イメージも良くはないというのはこちらとしても十分理解している。

 

 何人かは俺に不快そうな視線を向けてくるが、もちろんそんな視線も織り込み済みなのでどこ吹く風とスルーだ。


 微妙な空気が立ち込めるが、エルザはお構いなしにテンションが高めだ。

 

「イオリ、やっぱりあなたってあんまり好かれてはないのね」

「なんで嬉しそうなんだよ」

「いえ、あまりに予想通りの反応だったものだからつい」


 エルザも俺が打ち解けていないというのは予想がついていたのだろう。

 それをからかうつもりがあってそんなことを言ったのでもなく、単純にこれからの訓練が楽しみでどうしても口調が楽しげになってしまうといったところか。


 いちいちそんなことに目くじらをたててもしょうがないので、適当に受け答えをしているうちに他のクラスメイトも揃い、最後にエリィと七聖天の面々が入ってきた。


「皆さんお揃いですね。今日は久しぶりに不二さん達も参加されるということで、よろしくお願いしますね」

「あぁ、よろしく」


 エリィがいつもの柔和な笑みで語りかけてきたので、一言返す。

 その後、ガロンが一歩進み出て、次いで語りだした。


「さて、今日は各パーティごとの模擬戦だよ。

 みんなはここ最近ダンジョンに潜るようになって、オドルの森とは比じゃない強さの魔獣と戦って着実に実力を伸ばしてる。

 今日はそれを対人戦で発揮してほしい。分かってると思うけど、魔獣相手に通じてたスタイルも、知能の高い相手には通じないというのはままあることだ。そして、高位の魔人は総じてかなりキレる。そういった連中を相手にするために、こうした対人戦の訓練は必須になってくるんだ」


 ガロンはここで一旦言葉を切り、俺達の方へ視線を向ける。


「今日はイオリ達も参加しての訓練だ。彼らも旅をする中で経験を積んで強くなってる。

 話に聞けば、イオリはなんと複数持ちだったそうだ。多彩な攻撃手段を持っている相手に対してどう立ち向かうか。そういった一瞬の判断とかを今日の訓練で感じてもらえると嬉しいな」


 ここで再びエリィが口を開く。


「ルールとしては、再起不能となる強度の攻撃は禁止です。審判として七聖天の方々がダメージ判定などを行いめます。攻撃の着弾、あたった箇所などから実戦の場合致命傷と判断したらその方は退場です。

 戦闘の続行が不可能もしくは趨勢が決したところで終了となります。よろしいですか?」


 俺達は一様に首肯を返す。


「それでは、これより組み合わせを発表したのち、10分ほどパーティで方針や作戦を協議してください。

 その後、順次訓練を開始します。終了するごとに七聖天の方々から講評してもらって、今後の糧としてください。もちろん、他のパーティの戦いから得ることも多いと思いますので、しっかりと全ての戦闘をご覧になってくださいね」


 俺達を入れると6組のパーティで、俺達は3戦目になった。

 組み合わせが発表されると、俺は露骨に嫌な顔をする。


「げっ」

「......」


 意図的なのか、はたまた偶然か。

 俺達が当たったのは朝倉のいるグループだった。

 眉間に深いしわを刻んだ俺を見て、朝倉も苦々しそうな顔をする。


 あちらさんからしても勘弁してくれと思うだろうと思っていたのだが、朝倉はむしろ闘争心を漲らせている感じだ。


「久しぶりだな。不二」

「そうだな」


 朝倉が近づいてきて俺に声をかけてくる。

 俺達の模擬戦を見ていたクラスメイトたちは黙って視線を俺達に集中させていた。 


「外では大活躍だったみたいだな。サボっていたわけじゃないみたいで安心したよ」

「そいつはどうも」

「恩寵を複数手に入れたって聞いたけど、どうやったんだ?」

「さぁ。勝手にポンポンと」

「隠してたのか?」

「とんでもない」

「......まぁいいさ。俺だって強くなったんだ。それを見せてやるよ」

「お手柔らかに」


 喧嘩を吹っかけてくるかと思ったが、案外普通のやり取りで終わった。

 まぁ、お互いに友好的な雰囲気は皆無だったが。

 そんな俺達のやり取りを見て白石はため息をこぼす。


 大方朝倉が怒り狂わなくて一安心したってところだろう。

 そんな白石に佐伯が近づいて話しかけていた。


「陽和! さっそく私たちとだね」

「そうね。いきなり攻撃をもらって退場にならないように気をつけないと」

「不二君の能力は怖いけど、負けないからね?」

「あいつばっかり気にしてると痛い目見るわよ?」

「あら怖い、ふふふ」

「ふふ」


 楽しげに会話する二人にまた周囲が驚いていた。

 白石に対してまだどう接していいか分からない様子の女子たちは顔を見合わせたりしている。

 まだギクシャクした感じは根強いものの、白石もそれを気にする様子はなく、堂々としているように見えた。


「さて、俺達も作戦会議といこうか」

「そうね」

「分かったわ」


 俺の呼びかけに一同が集まる。

 訓練施設の造りは元の世界の体育館に近いと言えば分りやすいだろうか。

 2階スペースが周囲に狭いがあり、座席も作られているので、移動して腰を降ろす。


「まず、あいつらはみんな恩寵は一級品だ。どれも系統最強と言われてる恩寵持ちがそろってるから、油断はなしだ。一瞬で退場判定を食らうからな」


 俺の言葉に他のみんなは真剣な顔でうなずいた。

 

「よし。じゃあ基本的なフォーメーションだけど、前衛はアルとエルザに任せる。白石はティナと遊撃。俺は後衛だ。テレパスで意思疎通しながら俺が攪乱して生まれた隙をついてくれ」

「えぇ」

「任せて」

「分かった」


 白石とエルザにとってはこれまで幾度となくやってきた連携だ。

 アルもそれを見ていたので、やるべきことは分かっているのだろう。

 

「みんな頑張れ~!」


 愛姫もそんな俺達を見て楽しそうに応援していた。


 それからもう少し細部を詰めたところで1戦目が始まった。

 対峙するパーティを除いて、他のメンツは2Fスペースに上がって観戦だ。

 俺も強力な恩寵持ち達がどのような戦いを見せるようになったのか、ここはサボらずにしっかりと見稽古に集中する。


「はじめ!!」


 七聖天筆頭のガイアスの開始の合図とともに、双方の前衛が飛び出した。

 お互いの武器が交錯して火花を散らす。

 後衛の魔法職たちに攻撃が通ると一気に戦況が不利に傾くので、お決まりといえばお決まりのスタートだ。


『多連斬!!』

『盾薙ぎ!!』


 ”剣聖”持ちと”イージス”という最強の矛と盾の恩寵同士のせめぎ合い。

 まさに矛盾というやつだ。

 剣聖側は高速の連続攻撃を発動し、盾役に対して攻勢に出る隙を与えないように立ち回っている。


 魔法を発動することはできないのだが、前衛戦闘系の恩寵を持つ者は、技の名前を言霊のように唱えることで、動作のアシストや追加効果を生み出すらしい。

 以前、朝倉が俺に斬撃を飛ばしてきたときのようなものだ。

 

 施設の中央ではお互いの剣聖とイージスがぶつかり合い、前衛は完全に膠着状態に入っていた。

 そして、華々しい前衛のやり取りの後ろでも、強力な恩寵を持つ魔法使い同士の魔法合戦が繰り広げられていた。

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