1-8 七聖天
上手くことが運んでほっと胸を撫で下ろすと、愛姫が袖をクイクイと引っ張ってくる。
振り向くと、
「んっ」
と言いながら手を出している。どうやら見せてということらしいので、プレートを渡してやると、興味津々といった様子でしげしげと眺めている。
そしてガバっと顔を上げると、
「愛姫もほしい!!」
とねだり始めた。とはいったものの、俺が素材のプレートを持っているわけでもない。
仕方なくエリィに話しかけて交渉してみることにする。
「ちょっといいか」
「はい、いかがなされましたか?」
「実は妹もプレートが欲しいらしいんだけど、予備のプレートとかをもらうことってできないかな」
「えっと、妹さんはまだ恩寵も発現していないでしょうし、プレートには特になんの情報も記載されませんが......」
「あ~、なんていうか、別に内容どうこうってより、これまで見たことないもので、俺ももらったからお揃いがほしいだけだと思うんだ。高価なものなら無理にとは言わないんだけど、どうかな」
事情を説明すると、エリィは可笑しそうにクスクスと笑い、
「お優しいんですのね」
「まぁ、叶えられる範囲のことなら、家族として手助けはしてやりたいさ」
「そうですか。プレート自体はいくらでも予備がありますし、高価なわけでもありません。どうぞ妹さんに差し上げてください」
「悪いな。ありがとう」
戻って愛姫に渡してやると、目をキラキラさせて喜んでエリィのところにお礼を言っていた。
そして列に並んでまっさらなプレートにステータスを転写させて戻ってくる。
見てみると、恩寵などの項目は空欄になっており、基本プロフィールが記載されているだけだったが、それでも俺と同じ物が手に入っただけで満足したようで、飽きることなく嬉しそうな表情で自分のプレートを眺めている。
そうこうしている内に全員のプレートの転写が完了し、他の生徒の恩寵の全容が明らかになった。傾向としては、
前衛戦闘系の剣聖
前衛防御系のイージス
攻撃魔法系のアークロード
支援魔法系のスペルマスター
この5つの恩寵のどれかが発現している者が多いようだ。
あの土壇場の状況下で、自分の願いを言えといったところで、戦闘職か魔法職、近距離か遠距離かを願うくらいで精一杯だろうから、これらに偏るのは妥当だろう。
そんな風に考えていたが、エリィは驚天動地といった表情で全員を見つめている。
朝倉に剣聖が発現した際に、これまで3人しか発現しなかったと言っていたが、他の恩寵も同じように伝説級の恩寵だったらしい。
ともあれ、それぞれの能力の把握も無事に終わり、この世界で生きていくための身分証を手に入れることができた。
「それではプレートの作成も終わりましたので、この後は、皆様の講師を務める者たちをご紹介いたします。こちらへどうぞ」
エリィについて城内を歩き、庭園に出ると、7人の男女がテラスで談笑していた。
彼らはエリィを見ると片膝をつく。
「皆様、こちらの方々が今後の指導を担当する、我が国が誇る”七聖天”でございます。
それぞれが金色のプレートを所有しており、実績・経験ともにこの国で最高の方々でございます」
エリィの紹介のあと、7人は立ち上がり、こちらに目をやる。
一目見た瞬間に、これまでに感じたことのないオーラのような気配を感じた気がした。
「やぁ、救世主たち。私は七聖天筆頭をつとめているガイアスという。これから君たちの戦闘の手ほどきを、我々が受け持つことになる。時に厳しいものになるかと思うが、戦闘で生き残るためのことなので乗り越えてほしい。
そのかわり、この7人で君たちに最高の教えを授けることを約束しよう。これからどうぞよろしくな」
年は30代くらいだろうか。身長190cmくらいの長身で、燃えるような炎髪をしている。最強クラスの戦士ということで身構えていたが、どうやら親しみやすい人柄のようだ。
「して、王女様、彼らの恩寵はいかなるものだったのですかな?」
「ふふふ、ガイアス殿もびっくりなさることでしょう。実は......」
エリィは先ほど把握した情報をそのままガイアスたちに伝えると、
「......文字通り救世主というわけか。いや、なんと嬉しいことだろう。これで魔族との戦いが一気にこちらに傾くことになるでしょうな」
そういって嬉しそうにカラカラと笑う。
「さて、簡単に紹介をしておこう。近接戦闘に関しては俺とレアルとロイスが。俺とレアルは前衛戦士系で、ロイスは前衛防御系だ。
続いて、攻撃魔法系を指導するのがティトとルリア。支援魔法はシャロが担当する。
残るガロンは我々の作戦参謀を担当しているので、接する機会はあまりないかもしれないな。以上、我々がこの国の最高戦闘部隊の七聖天だ。よろしくな」
ガイアスが礼をすると、残る6人もそれにならって頭を下げる。
最強の部隊ってことで、みんな屈強な見た目を想定してたけど、ルリアとシャロは女性
だったし、当然と言えば当然だが、魔法系の3人は戦闘系の3人よりも細い体型をしていた。
それから、親睦を深めるということで昼食を共にし、訓練は明日からということで、その日は終了となった。