04
砂利道を手を引かれて歩いていく。右も左も暗闇が続いているだけで、歩いている道の砂利だけが淡い光を放っていた。
「…お兄さん、メグリオニって言うんですか?どう書くんです?」
答えてくれるかはわからないけど声をかけてみる。意外にも、立ち止まりはしなかったけど、私の問いに答えてくれた。
「巡回の巡に節分の鬼だ。」
例えが微妙だけど、つまり巡鬼ってことが。鬼…いや、それにしては角とか生えてないしパンツ一丁と言うこともない。和装の青年といった感じだ。
「…怖いか?」
「いえ、全く。」
巡鬼さんよりだったら、ここの祭りに来たときにぶつかった人の方が…顔が犬だったし。人間っぽい見た目で、怖がる要素が見当たらないのできっぱりと言えば、巡鬼さんは黙ってしまった。
しばらく歩くと目の前に大きな池が見えた。そこには何かが二つ浮かんでいた。目を凝らしても何かわからず、はっきりと捉えたときにはそれがお面であることがわかった。狐面と翁面がまるで人がそこにいてつけているのかというように、浮かんで話し合っていた。
「おお!巡鬼か。」
「これはこれは、又、人の子を連れているのですね。」
こちらに気がつくと面たちは巡鬼に話しかける。池に浮かぶ面たちはすすすっと近づいて来る。
「…あぁ、また頼む。」
「えぇ、えぇ、お安い御用ですよ」
「人の子、人の子。こちらに上がるんじゃ。」
こちらとは池の上だろうか?そっちにいくと濡れるし深いと溺れるけど…。困ったなと思って上がらないでいると翁面はくるくると私の周りを回った。
「大丈夫じゃ、人の子。こちらはお前の世界に繋がる池。」
「真っ直ぐ歩いた先の白い鳥居の向こうが貴女の世界。」
帰れるのなら、従おうと池の上に上がる。まるで氷の上にでもいるかのように私は沈むことも濡れることもなく、池の上に立つことができた。足元に波紋が浮かんで消える。そして、池の中で泳ぐ鯉たちは私のことなど気にせず自由に泳いでいた。
「うわ、すごい…。」
「人の子。もしまた来ることがあれば、緑地に黒文字の横幕がかかった屋台に帰りたいと言え。」
あれは安全だという巡鬼さん。よくわからないし、もうここに来ることなんてないだろうけど頷くと、満足げに口元が弧を描いた。一礼して、私はこの先にあるという白い鳥居を目指す。翁面も狐面もついてくることはなく、手を振って別れた。
広い池の先に白い鳥居はぽつんと、たっていた。何もなくて振り返っても巡鬼さんたちは見えない。何もなくて、鳥居の先にも池は続いていた。本当にこの鳥居であっているのかと不安になったけど、試してみないとわからない。
思い切ってくぐると、自分以外が黒に染まり、階段から落ちるような浮遊感が私を襲う。そして私は目を瞑った。