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第二次柳川の戦い【幕間】 餌

肩の力を抜いてご覧いただければと思います…

◇◇


 久留米の地から黒田如水の一軍が離脱した時から、少しだけ話を戻す。

 

 その久留米の地に、猛烈な速度で近づいている大軍があった。

 その兵の数、およそ一万。


 特に陣頭に躍り出て馬を飛ばしている大将の青年は、その目を血走らせて馬に鞭を打ち続けていた。


「急げ!急げ!とにかく急ぐのだぁぁぁ!!」


 と大声を張り上げて、久留米に向けて北へ、北へと軍を飛ばしていたのだった。


 その旗印は、丸に十字…


 すなわち島津軍。

 そしてその大軍を率いる大将は、当主である島津義弘の息子で、次期島津家当主、島津忠恒であった。


 しかしその軍は、久留米の地で田中吉政の軍を一蹴した島津義弘を助けにきたわけではない。


「あのバカ親父を絶対に止めるのだぁぁ!!」


 という真逆の目的を持っていたのであった。


………

……

 このわずか三日前のことである。


 完成が近づいていた鹿児島城を居城としていた島津忠恒は、相変わらず自室に引きこもっていた。

 そんな忠恒をたずねて、鹿児島城に一人の男がやって来たのを、忠恒の側近である喜入忠続が迎えたのである。


「ようこそいらっしゃいました。まさかご隠居様自らお越しになられるとは、思いもよりませんでした」


「ふふふ、お迎えご苦労様。

たまには外に出るのも悪くはないものです」


 その男の名は島津義久。穏やかな表情に、微笑を浮かべながら大手門の前までやってきたのであった。


「しかし今、忠恒様はいかなるお方も、お部屋に近づけるな…と」


「ふふ、この島津義久が自らやってきたのですよ。

それを門前で追い払う…と…

忠続も随分と偉くなったものですね…」


 その微笑は変わらない。


 しかし…


 その背後から発せられる紫色をした影が浮かんできたことに、忠続は思わず仰け反る。


「い…いえ…しかし…」


 と、その義久の発する空気にのまれながらも、忠続は、忠実に忠恒の「何人たりとも、俺の部屋に近づけるな」という命令を守ろうとしていた。


 そんな彼に対して、義久は抑揚のない穏やかな声で告げた。


「そう言えば…亡くなった島津豊久には嫡子がいなくて、その知行を継ぐ者がおらずに困っているのですが…

忠臣である忠続のお子に、その知行を継いでいただき、島津を名乗らせてあげてもよいと、われは考えていたのですよ。

しかし…

残念ですね…

そのわれを門前払いするほどに、もうわれの口添えなど必要ないと、忠続は思っているのですね…」


 その言葉に忠続は、血相を変えて、義久に頭を下げた。


「も、申し訳ございませんでした!!

忠恒様のお部屋までご案内させていただきますので、どうぞついてきてください!!」


 義久は、にこりと笑う。


「では、よろしくお願いしますよ」


 そして大股で先を進む忠続の背中を、義久は足音も立てずについていったのであった。



 しばらく城内を進んでいくと、大きな襖の前で、忠続は足を止めた。


「この中にございます」


 と、忠続は義久に頭を下げる。


「ふむ、ご苦労でしたね。もう、下がってよろしい」


「しかし…いくら義久様とは言え…この襖が開くことはないかと…」


 と、忠続は苦笑いを浮かべて言った。


「ふふふ、心配などいりませんよ…なぜなら…」


 と、義久はにこやかに答えると…


ーーバンッ!!!


 なんと中の忠恒に声をかけることもなく、勢いよくその襖を開けたのだった。


「だ、誰だ!!?俺の許しもなく!!この無礼者がぁ!!」


 と、襖の奥から喚き声が聞こえてきた。


 すると義久は、やはり足音を立てずに部屋の中へと消えていったのだった。


 襖の外に一人残された忠続は、さすがに部屋の中を覗くわけにもいかず、外から声だけを聞いていた。


 すると…


「も、も、申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!」


 という、忠恒の泣き声が聞こえてきたので、部屋で起こったであろうおぞましい出来事に、その身を震わせながら、


「触らぬ神に祟りなし…ですか…」


 と、泣き叫ぶ忠恒を助けにいくことなど、もちろん考えもせずに、忠続はその場を後にしたのだった。



………


 義久が忠恒の部屋に入ってからしばらくして、ようやく恐怖の呪縛から解けた忠恒は、義久に対して、拗ねるように言った。


「俺は兵を率いて親父を止めにいくなんて、まっぴらごめんだからな!いくら伯父殿が命じたとしても、俺は絶対に嫌だ!!」


「ふむ…どうしてそんなに拒むのだい?」


「へんっ!じゃあ、逆に聞くが、伯父殿はどうしてそんなに俺を戦場に向かわせたいのだ!?

まさか『事故』を期待してるんじゃねえだろうな!?

その手には乗らんぞ!!

俺は『事故』になどあうものか!」


 義久は、顔を背ける忠恒に対して、はぁとため息をついて答えた。


「お前しか義弘を止められる者がいないからに決まってるではないか…」


「へんっ!俺が、あの鬼島津を止められるとでも思っているんですかい!?

まさか…俺と親父が同士討ちして、共に刺し違えて死ねば、伯父殿に島津家の全てが手に入るって算段なんじゃないかい!?

ああー!!

絶対にそうだ!!

危ない、危ない!

危うく『お前しかいないのだ…』という言葉に、ぐらりときそうになってしまったではありませんか!

俺の馬鹿!」


 ますます意固地になる忠恒。


 その鬱陶しい様子にも、苛つくこともなく、義久は穏やかな口調で続けた。


「はぁ…では仕方ありませんね…もうこれ以上は、頼んでも無駄、ということですね」


 諦めた口調を怪しいと感じた忠恒は、背を向けながらも、ちらりと義久を見た。

 その瞬間を見逃さずに、義久は懐からなにかを出したと思いきや、すぐにそれを元に戻した。


「な、な、なんですか?それは?」


 と、忠恒は思わず問いかける。


 その時だった…


ーーかかったな…


 というとてつもなく低くておぞましい声が、忠恒の心に直接響くと、彼の全身に鳥肌が立った。


 しかしその声の持ち主である義久は、相変わらずの微笑みのまま、淡々と答えたのだった。


「おや…気付かれてしまいましたか…

しかし…これは、もはや無用なものなゆえ…」


「ちょっと!一体何ですか!!?そんなこと言われたら、余計に気になるじゃないですか!?」


「すまぬ、すまぬ。もうよいのだ。

これにてわれは立ち去ろう。

万が一、義弘が徳川殿の軍を攻撃しようものなら…

この書状で許しを得た『例の事』など…

もはや絶対にかなわぬことですから…」


 と、義久は『例の事』という部分を強調して言った。

 明らかに義久の術中の事と知りながらも、忠恒の好奇心が話を先へ先へと進ませていく。


「ちょっと!『例の事』ってなんですか!?

それに誰からその許しを得たのですか!?

もっとはっきりと言ってくれなくちゃ、全然伝わらないじゃありませんか!?」


 すると、その場を立ちかけた義久は、


「そうでしたね。これは申し訳ないことをした。

では、はっきりと申し上げておきましょう」


 と言うと、その場に再び腰を下ろした。

 そして、声を強めて続けたのだった。


「いつもお主には気苦労ばかりをかけてしまっていたからね…

せめてものお詫びと感謝を示したくて、われは『例の事』のお許しを、お主の為に取っておいたのだよ」


「だから、どなたから得たのですか?そのお許しとやらを…」


 その忠恒の問いかけに、義久の眼光が鋭くなった。


 その視線を見て、忠恒はその許しを得た相手が一体誰であるかに気づいたのだった…


「ま、まさか…」


 義久はニコリと笑うと、穏やかな口調で答えた。


「ふふふ、さすがは勘が良いですね。

そう、徳川家康殿ですよ」


「な、な、な、な、なにぃぃぃぃ!!!?」


 と、忠恒は泡を吹かんばかりに驚いたのである。


ーーまさか伯父殿が、犬猿の仲とも言える徳川家康と何かを交渉していたなんて…しかも俺の為に!?


 そうなると、その『例の事』というのが気になって仕方のない忠恒は、勢いよくたずねた。


「では『例の事』とは一体何なのですか!?」


 義久は少し頬を赤らめると、言いづらそうに答えた。


「それは…

お主が常日頃から欲していたことに決まっているではないか…

それ以上は言わせるでない…」


「俺が欲しているもの…」


 と、忠恒は考え込んだ…


 そんな彼が、最も欲しがっていたもの…


 そしてそれを常に公言していたもの…


 この時、忠恒の体にさながら雷のような衝撃が走ると、一つの事が頭の中に浮かび上がってきた。


ーーそう、それに違いない…


 そのように忠恒は根拠もなく確信したのである。


 その欲していたものとは…



ーー側室!!!!!!



 思わず彼は、義久に向けた顔を、隠すように背けた。そして、みるみるうちにその顔はにやけていったのである。


 なおこの頃、忠恒には正室の亀寿の他に側室はいない。なぜなら義久が厳しく禁じていたからである。

 しかし、忠恒は亀寿のことが苦手であった。

 理由は単純だ。

 顔も仕草も、彼女の全てが、彼女の父である島津義久と瓜二つであるからである。

 何を考えているのか全く分からない微笑、開いているかどうかも分からない細すぎる目、いつも忠恒の事を見透かしているような余裕の態度…

 彼女と共にいると、義久と共にいるような気がしてならないのだ。

 

 しかし、彼もいっぱしの男子である。


 人並みに女性のことが好きだ。


 いや、今まで抑え付けられてきた分、人並み以上に欲求が強いかもしれない。


 何かにつけて、側室が欲しいということは、公言してきたし、義久に対して懇願してきた。

 しかし義久からはついにその許しは得られなかったのだ。


ーー島津家当主として相応しい男になってから考えましょう…


 と…


 しかし…


 今それが…


 ついに許されたのだ。と、勝手に思い込んだ。


 ついに彼は島津家に相応しい『漢』と認められたのだ。と、忠恒は解釈している。


 彼は義久に背を向けたまま、思わず拳を固めると、心のうちで絶叫した。


ーーうおおおおおおお!!きたぁぁぁぁ!!


 そして、そんな興奮を知られまいと、背を向けたまま義久に問いかけた。


「そ、そ、そ、それは、『例の事』は、俺の好きにして構わない、ということでよろしいのですな?」


 興奮のあまりに声が震える。しかし、義久は全く変わらぬ穏やかな口調で答えた。


 「ふふふ、当たり前だろう。もし、義弘を止めることが出来たその時は、お主の好きなだけ『例の事』をすればよい」


ーー好きなだけ…するっ…!!


 その言葉に、忠恒は落ちた。


 彼はすくりと立ち上がると、座ったままの義久に話かけた。その顔は、凛々しく『漢』を感じさせるものだ。


「伯父殿…そこまでおっしゃるなら仕方ありませんな。

かつての諸葛孔明も、三顧の礼を持って心動かされたと言われております。

伯父殿のその熱意は、俺にとっては劉備の三顧の礼にも勝るものでした。

この島津忠恒、不肖の甥なれど、次期島津家当主に相応しい漢として、立派に親父の愚行を止めてまいりましょう。

そして『例の事』を…

いえ、今はかような事にかまけている場合ではありませんね。

では!いってまいります!!」


 と、彼は言い残すと、光のような早さでその場を去っていったのだった。



 そんな彼と入れ替わるようにして、亀寿がお茶を持ってやってきた。


「あらら。少しお茶をお持ちするのが遅かったようですね」


 そう言って残念がる亀寿に、義久は相変わらず座ったまま声をかけた。


「ちょうどよかった。亀寿、お前に話がある。

そこにかけなさい」


「はい…父上がわらわに何の御用でしょう」


 と、不思議そうに亀寿は問いかけながら、腰を下ろした。


「まあまあ、まずはそのお茶でも二人でいただこうではないか」


「しかしこれは父上と忠恒様にお持ちしたもので…」


「ふふふ、その忠恒はもう身も心も戦場のうちにあろう」


「あら…ではとうとうご決心されたのですね。しかしどうして…?」


 と、亀寿はお茶を義久に出しながら問いかける。すると義久は出されたお茶を一口すすって答えた。


「亀寿よ。こたびの一件が上手くいったそのあかつきには、忠恒にわれは一つのことを許した。

その事をお前には話しておきたかったのだ」


「まあ、何でございましょう。わらわに関係あることなのでしょうか?」


「ああ、関係のあることだ」


 と言うと、義久の顔が曇った。

 その顔を見た亀寿は、一つのことが閃いたのである。


「もしや、それは…忠恒殿が側室をもつことをお許しになられたということにございますか…?」


 その亀寿の言葉に、義久の表情はみるみる険しくなった。


「忠恒に側室だと!!?かようなことを許すわけがなかろう!!」


 と、一喝する義久の声は、さながら完成間近の城を震わせるほどに大きなものだった。

 思わず目を見開き、驚きのあまり言葉を失う亀寿。

 そんな彼女に対して、義久は元の穏やかな表情に戻した。


「すまん。つい怒鳴ってしまった。

亀寿よ…お主を悲しませるようなことを、この父が許すとでも思ったのか…」


 取り乱したことを謝罪した義久であったが、亀寿は未だ驚きの表情を崩さずに、それでも声は穏やかに問いかけた。


「では父上は、一体何をお許しになられたのですか?」


「徳川家康に会って謝罪することだ」


「まあ!そんなこと…」


「ふふふ、あの者は常に言っておったではないか。

徳川に謝らないと、島津の家が危ない…と。

だから徳川家康にわれが掛け合って、謝罪の機会を作ってやったのだ。

その結果、家康も『義弘を隠居させて、忠恒を当主としたなら、謝罪を受けよう』と返事をよこしてきたわけだ。

そこで忠恒が家康に謝罪をしにいくその折には、亀寿…お前に同行して欲しいのだよ」


 と言うと、義久は胸にしまった書状を取り出した。


「では、忠恒殿が望まれていらっしゃった徳川への謝罪を、忠恒殿自らが行い、島津のお家をお守りできるようお膳立てを、父上がされたということですね。

父上のお望みであれば、わらわは忠恒殿に同行いたしましょう。

久しぶりの京の街が今から楽しみにございます」


「ふふ、良い返事だ。それに、亀寿は飲み込みが早くてよろしい」


「その事を知った忠恒殿は、先ほどのように鼻息を荒くして、意気揚々とご出陣された…と」


 その亀寿の言葉に、義久は少し考え込むように、顎に手を当てて、天井を見た。


「そう言えば… 忠恒には『例の事』としか伝えてなかったかもしれぬ…これは『うっかり』してしまったな…」


 その父の様子に亀寿がくすりと笑った。


「ふふふ、父上でも『うっかり』されることがあるのですね」


 と、親子は意味ありげに笑いあうと、残ったお茶をゆっくりとすすっていたのだった。



………

……

「われは島津家次期当主、島津忠恒なり!!

父であり現島津家当主の島津義弘に申し上げたき儀があって参った!!

みなのもの!!武器をおろせ!!!」


 と、筑紫平野のど真ん中に単騎で進んできた島津忠恒は、川を挟んで睨みあっている、島津義弘の軍勢と、黒田、細川の軍勢に勇ましく大きな声で語りかけた。


 突然現れた島津の大軍と、その忠恒の言葉に、その場にいる全ての兵たちが戸惑い、先ほどまで筑紫平野を覆い尽くしていた殺気は解かれていた。


 そんな中、島津義弘が一万の軍勢の中から、こちらも単騎でゆっくりと、忠恒の前まで進んできた。その圧倒的な威圧感は、離れて様子をうかがっている黒田や細川の兵たちの腕に、思わず鳥肌を立てるほどだ。

 普段の忠恒であれば、その姿を目の前にしただけで、泡を吹いて逃げ出しているところだが、今回ばかりは違った。


 彼には絶対に負けられない理由があるからだ。


「俺に何の用だ?ここは貴様のような臆病者がくる場所ではない。その答えによっては、貴様の首からまずは刎ねねばならぬが…」


 と、馬に乗ったまま、義弘はぎらりとした鋭い視線を忠恒に浴びせる。


 だが、忠恒はその視線に対して怯むどころか、にらみ返すように目を見開いている。

 その様子に義弘は、心の内で感嘆の声をあげた。


――ほう…こやつに何があったのか知らんが、『漢』の顔してるじゃねえか…


「先ほど申し上げた通りだ!親父に話があってここまでやってきた。

親父の方こそ、その返答次第では、俺は容赦しないことを頭に入れておいてくだされ!」


「なんだと…?」


 と、義弘は、どすの利いた低い声で言うと、馬をぴたりと寄せて、顔がくっつくのではないかというほどに近づけて、忠恒を睨む。

 だが、忠恒も義弘に負けない。忠恒もまた兜をガツンと義弘にぶつけると、彼のことを睨み返していた。


 しばらくぴりぴりとした睨み合いが続く。


 気付けば、黒田長政も細川忠興も、陣頭に立ってその様子を見つめていた。


「面白えじゃねえか。貴様の言葉を聞いてやろう」


 と、兜と兜をぶつけたまま、義弘は言った。

 すると忠恒は、少し距離を取って、馬をおりる。そして、大きく息を吸い込むと、一気にそれを吐きだした。


 それは次の瞬間だった…


 バッっといきなり両手を高く上げた忠恒…


 両足を肩幅くらいまで広げると、ぐっと足に力を込める…



 そして…



「な…な…何をしておるのだ…!?」


 思わず言葉を失う義弘。その場にいる全員がその光景に目を疑った…



その光景とは…



島津忠恒が、その場で土下座をして頭を地面にこすりつけたのだ――



「おやじぃぃぃぃ!!!聞いてくれぇぇ!!」


 と、忠恒は、その状態で天まで届くほどの絶叫を上げた。

 義弘はあまりの事に、言葉を全て忘れてしまったかのように、まばたきするより他ない。


 そして、忠恒は、渾身の力を込めて言い放った。


「どうか… どうか軍を退いてくだされぇぇぇぇ!!!このとぉぉぉぉぉり!!!」


 まるで光を放ったかのように、土下座をした忠恒は、筑紫平野の中で輝いていた。



 そして…


 彼は伝説となった――


 なんと史実にはない言葉となって、後世に残ることになったのだ。


それは「薩摩殿の土下座願い」…


 いきり立つ「鬼島津」と呼ばれた男の心をも動かしたことから、例え敵対している相手であっても、その願いを聞き入れてしまうほどに熱意の籠った説得のことを差して言うようになったのだった…



 こうして、島津義弘の軍勢は、久留米の戦いにおいて完全に無力化された。


 そして、ただの一兵も減らすことなく、無敵を誇った島津義弘の軍勢を無力化したことは、「久留米の戦いにおける戦功第一」とされて、この後の島津忠恒に対する仕置きに大きな影響を与えることになるなど…


 この時、『例の事』で頭の中が埋め尽くされていた忠恒にとっては、どうでもよいことであった…






次回は…第二次柳川の戦いの終幕になります…


そして第一部は、いよいよ残り数回となりました。


読者様におきましては、長いお付き合いをいただき、誠にありがとうございます。

どうぞ最後までお付き合いいただけると幸いでございます。

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