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終章  それぞれの一歩目(2)

 月宮早織は病室のドアの前に立ったまま動けなくなっていた。

 彼女は既に学校に復帰していて、今日は学校があったため制服姿である。その手にはケーキの入った箱が握られていた。


「どどど、どうしよう。ここまで来たのはいいけど緊張してきた……」

「どうしたのお姉ちゃんっ。早く入ろうよっ」


 早織の隣には早苗がいた。彼女も早織と同じく制服姿である。

 あの戦闘以降、早苗は編入というかたちで学校に行くことを許可された。もちろん、早織も了承した。とはいえ、そんなに早く編入出来るわけもなく、彼女が制服を着ているのは早く学校に行きたいという感情の表れだ。


「でも、どうやって入ればいいのか」

「もー、面倒くさいなっ。普通に入ればいいんだよっ。そして黒神君を押し倒して既成事実を作っちゃえばっ」

「お、押し倒す!? しかも既成事実って何よ!」


 早織は顔を真っ赤にして言う。


「だってさ、そもそもの話、今のところ光ちゃんに負けてるんだよっ?」

「え」

「同棲っ。やっぱりこれ大きいと思うんだよねっ」


「…………」

「同棲してる人が相手なのに、ただのクラスメートじゃハンデが大きすぎるってっ」

「でも、同じ部活だもん!」


 最早、早織は泣きそうな表情である。


「いやあ、薄い薄いっ。このハンデを覆したいんだったら女を使わないとっ」


 早苗の主張に納得しかけた早織だったが、慌ててそれを否定する。


「いやいや、大体ここ病院だし、まだそういうのは早いっていうかとにかくダメ!!」

「はあ、まあこういうのはお姉ちゃんの気持ち次第だけどさっ。このままじゃ負けちゃうよっ」

「朝影さんがどう思ってるのかも分からないでしょ、そもそも」

「本人は自覚してないっぽいけどあれは……時間の問題、かなっ」


 さて、と早苗は言葉を継いだ。


「じゃあ、気を取り直してっ。まずは一歩目だねっ!」

「早苗?」

「突撃っ!!」


 そう言うと、早苗はいつまでも立ち尽くしている早織を遮って、病室のドアを元気良く開けた。大きな音と共に室内が見え、そこには驚いた表情でこちらを見る黒神と朝影がいた。

 早苗はそれでも中に入るのを躊躇っていた早織を強引に引き込むと、彼女を前に立たせた。


 恥ずかしがる早織を見て、早苗は笑っていた。

 その後、4人はしばらくの間会話をするのだった。

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