第四章 そして完全体へ(6)
基本的に、早苗の技は早織の技を模倣したものである。言い換えれば、早苗が繰り出す技の殆どを早織も使えるということだ。
『闇創剣』も例外ではない。早織の場合は、『水創剣』である。
「お姉ちゃんっ?」
「私も戦う」
「……ふふっ。いいよ、その方が楽しいしっ」
黒神の前で、同じ顔の2人の少女が剣を振り合う。片方は水の剣、片方は闇の剣。
「黒神君、こっちは任せて!!」
黒神は早織の言葉の意味をすぐに理解した。
先ほど蹴飛ばした分身が、まだ消えていなかったのだ。
(分身って、攻撃受けたら消えるのがセオリーなんだがな。まだ、足りないってのか?)
早織に背を向け、『包闇連弾』を放とうとしている分身に光線を放つ。それにひるんだ分身に向かって黒神は走り出した。
分身は本体ほどの力が無いらしく、突進してきた黒神に為す術も無く吹き飛ばされてしまう。
「一気に決める!!」
黒神は両手に意識を集中させ、『氣』を集めた。そして、倒れた分身の胸倉を掴んで持ち上げる。
「なんだか、神原になった気分だ……」
そう言いながらも、黒神は分身の顔に向かって右手を振りぬいた。地面に叩きつけられた分身は『包闇連弾』を繰り出してくる。
「まだ、消えないのか……!?」
転がるようにして避けるが、どうやらそれこそが分身の狙いだったらしい。分身は急いで立ち上がると、『超包闇』を連射してきた。
早苗ほどの威力ではないが、それでも闇の光線は地面を抉っていく。
「コントロールが定まっていないのか……? いや、違う――!?」
連射された光線は黒神には当たらなかった。しかし、それはあくまで牽制であり分身の狙いは、連射に混じって発射された一筋の光線であった。
そもそも、『超包闇』のオリジナルである『超水流』は1つの水流に集中するからこそ、最大の威力が出る。連射で地面を抉るほどの威力ならば、その力を1つに集中させた場合の威力はどうなるだろうか。
答えは簡単だ。
「ま、じ、かぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」
連射された『超包闇』のせいで、逃げ場が無い。つまり、黒神は『超包闇』を喰らうか、真っ向から立ち向かうしかない。となれば、選択肢は1つに絞られる。
轟音が響いた。
分身が放った『超包闇』と黒神が放った白い光線がぶつかりあった音だ。
「く、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
光線を放っている右手にすべての意識を集中させる。すると、黒神の光線が少しずつだが大きくなっていった。同時に、威力も増していく。
「行けぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!」
そして、黒神の光線は『超包闇』ごと分身を飲み込んだ。その先には、何も残っていない。




