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第四章  そして完全体へ(2)

 跳躍、と表現するべきか定かではない。そう思わされるほど高く、早苗は飛んだ。コンテナなど軽く超えてしまうほど高く。

 そして、狙い通り黒神の背後に着地する。


「白いオーラ、しかも全身に纏ってるだなんてっ。ねえねえ、それ本当にどんな能力なのっ?」


 慌てて振り返りながら黒神は答える。


「『氣』を操る能力……らしい。実は俺もよく分かってないんだよ」

「へー……それって、肉弾戦向きっ? それとも遠距離っ?」

「……どちらも、だ!!」


 先手必勝と言わんばかりに、黒神は駆け出す。そしてオーラを纏った右手を振り回し、それに続く形で回し蹴りをした。


「当たったら痛そうだねっ。だから避けるっ」


 転がって攻撃をかわしながら、早苗は小さな黒球を数発発射した。


「――っ!?」


 黒神の体に痛みが走る。『氣』が盾になっているのか、激痛とまではいかないが、それでも戦闘に慣れていない彼にとってはかなりの痛みだ。


「まだ、終わらないよっ」


 ひるんだ黒神の懐に潜り込み、パンチと蹴りを数発叩き込む。最後は、左の拳を振りぬいた。


「がはっ!!」


 見た目は華奢な腕なのに、黒神の体はいとも簡単に吹き飛ばされてしまう。


「んー、確かに『英雄』って呼ばれるだけのことはあるかもっ。その能力に関してはねっ」


 要するに、黒神の戦闘能力(バトルセンス)はそれに足らないものである、ということだ。


「そんなこと、分かってるさ……」


 痛みを我慢しながら、黒神はゆっくりと立ち上がる。


「それでも俺は、早織を助ける。いや、『お前たち』を助けてみせる!!」

「何を言ってるのか分からないけど、まだまだ遊べるってことだよねっ!!」


 嬉しそうに言うと、早苗は再び大きな黒球を出現させ、そこから無数の小さな黒球を放出する。


(逃げたところでどうにもならない……コンテナは吹き飛ばされるし、何より俺から向こうの姿が見えない。だったら、正面から向かっていくしかないか!)


 決心した黒神は早苗に向かって一直線に走り出した。

 これだけの数の黒球を前に正面突破を仕掛けるなど無謀。

 早苗はそう思っていた。実際、早織でさえもこの『包闇連弾』に対しては逃げることしかしてこなかった。黒神も、最初はそうだった。

 だが、だからこそ。

 本当に相手が突進してきたときのシミュレーションなど出来ていない。


「おぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」


 黒神は両手に意識を集中させていた。そして、そのオーラを纏った手で向かってくる黒球を片っ端から殴っている。


「――っ、まさかそんな手を使ってくるなんてっ!」


 切り替える。

 『包闇連弾』から、『超包闇』へと。

 大きな黒球は収縮し、そして早苗の手から光線として放たれた。


「これでどうだっ!!」

「……待ってたぜ」


 ゴバッ!! という爆発音が響き、辺りには砂塵が舞う。

 思わず目を覆った早苗は『超包闇』が消えていることに気付いた。そして、砂塵の中に人の気配がしないことにも。


「まさかっ」


 後ろを振り向くが、砂塵の影響で上手く目が開かない。薄っすらと見えた視界には、拳を振り下ろそうとしている少年の姿があった。

 直後、原始的な音が響き、早苗の体はコンクリートの上に叩きつけられた。

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