第三章 最終実験(7)
「まず、戦わなきゃいけない相手は『二重能力試行実験』の研究者……といきたいところだけど、私たちが実際に戦うのは――」
「妹、か」
研究者が直接出てくるとは思えない。それならば、さっきもわざわざ早苗を迎えに寄越したりはしないはずだ。恐らく、戦闘を行うタイプではないのだろう。
だとすれば、実験を守るために早苗を戦わせると考えるのが妥当だ。
「私としても、気が引けるのだけど……止めるには仕方無いことね。それに倒す必要は無いわ。隊長たちが研究者たちの所――つまり研究所に突入するまでの時間を稼ぐことが私たちの役目よ」
実験は研究者がいなくなれば中止せざるをえない。そしてこの方法ならば、早苗を倒さずに済む。
もっとも。
「月宮妹がどれくらいの強さなのかは気になるところだな」
「隊長みたいなチート能力じゃないはずだから、今回は純粋な能力対決になるわね。そう考えると貴方にも多少の分はあるんだけど……」
朝影はテーブルに頬杖をついて、ベランダのほうを見ながら言葉を継ぐ。
「それでも、実験回数のことを考えると……多分、隊長よりも強いわよ」
「マジですか……今回は焔もいないし、今度こそ死ぬかもな」
結局、赤城の行方はつかめないままだ。ここまで来るとさすがに心配になるのだが、今は目の前のことで精一杯である。黒神はそこまで器用ではない。
「んで、さっき隊長に連絡したんだけど……」
どうやら連絡がとれなかったらしい。
神原も職務があるため文句は言えないのだが、こういうときは出てもらいたいものだ。
「明日の朝、もう一度連絡を入れてみるわ。そういえば、早織さんとは連絡とれるの?」
「ん、ああ。部活のメンバーとは全員連絡とれるからな」
「……そう」
「おい、なんでちょっと残念そうな顔してるんだよ」
「別に? ま、とりあえず今日は休みましょう」
その後、久しぶりにレトルトのカレーを食べた2人は各々風呂に入り、明日に備えて眠りに就いた。




