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第一章  運命の邂逅(6)

 朝影が出て行ってから数分後、赤城も黒神の部屋を出て行った。最後まで彼は恐怖の表情を崩さず、いつもならヘラヘラと黒神を弄りながら帰っていくのに、今日は無言だった。


「何が起ころうとしてるんだ……?」


 考えてはみるものの、黒神には能力者の世界など分かりはしない。結局は蚊帳の外なのだろう。


「さて、今日はなにをしようかな。んと、今日はクリスマスだから……あっ、結局昨日ケーキ食べるの忘れてた!! 朝っぱらからケーキってのもどうかと思うが、まあいい、ケーキ食べてから外に出るか」


 冷蔵庫から苺のショートケーキを取り出し、黒神は美味しそうに頬張る。


「んー! やっぱりケーキは苺だな!! カップル見るのはムカつくけど、ケーキが特価で買えるのはありがたいな」


 今日も買いに行くか、と黒神は思う。


「それにしても、まさか焔があそこまで取り乱すとはな。デバイスを使わずに発動できる能力……か。もしかしたら、俺も能力が使えたりしてな」


 だが、そんなことはないと彼は知っている。そんな都合よく世界は回らない。それでも、少しは期待してしまうのだ。

 もしも、能力が使えたら。叶わぬ望みだとしても、持ち続けることは罪ではなかろう。




 黒神が外へ出たのは午後1時頃だった。

 外はやはり寒かったが、日光のおかげで少しは寒さが和らいでいる。夏には忌まわしく感じる太陽も、冬場には頼りになる味方に大変身だ。


「それでも寒いモンは寒いがな」


 今日の彼の服装は、藍色のジーパンに白と青のストライプシャツ、その上に青いジャンパーを着ている。そして、寒さ対策に黒のマフラーを首に巻いた。ファッションセンスで言うと微妙なのだが、寒さはかなり防げる服装だろう。


「いっそのこと、四六時中制服で過ごそうかな」


 実際、校則で校外での制服着用を義務付けている学校もある。故に、制服姿でうろついても不振には思われないのである。


「うむ、今日は天気もいいし少し遠出してみるかな」


 隔離されている都市とはいえ、エデンはかなり広い。人口は約10万人。その中でも学生は8割を占める。そして、最大都市ホープには5万人の人間が集まっている。


「そうだな、ホープを出てコルンに行くのも有りかな」


 コルンとは、隣町のことだ。こちらは小都市であり、人口は5000人ほど。露店が建ち並ぶ町だが、少々治安に問題がある。


「まあ、こんな日だしさすがにコルンもおとなしくなってるだろ」


 そう呟き、黒神は歩き出す。その先に待っているものが何なのかも知らずに。

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