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第三章  最終実験(3)

 早織をベッドに寝せ、黒神と朝影はテーブルを挟んで座り、会議をしていた。


「これで、2人の女の子を貴方のベッドで寝せたわけだけど」

「誤解を招くような言い方をするなよ。しかも、何か深刻そうな顔で言うんじゃねぇ」


 朝影は両肘をついて顎を両手の上に乗せながら会話を続ける。


「貴方って、天然のタラシなの? なんか、バトルものの主人公というよりはラブコメの主人公みたいな感じだけど……」

「お前は一体何の話をしてるんだよ。それよりも、実験の話だよ」

「そうね、貴方が天然なのか確信犯なのかの実験を……」

「あれぇ、話が通じてない気がするなぁ!?」


 黒神がツッコミを入れたところで、朝影は話題を早織のことに変える。


「あの状況から見て、『二重能力』の発現のために、戦闘を行ってるみたいね」


 破れた制服、埃塗れの体。傷が回復させられたと考えれば、辻褄は合う。彼女は、否、彼女たちは戦闘を繰り返しているのだろう。


「9672回……あれは、これまでに行われた実験の回数ってことか」

「でしょうね……だとしたら、あまりにも酷すぎる。その回数から考えて、かなり幼い頃から実験が行われてたはずよ」


 黒神が早織と出会ったきっかけは、部活が同じだったことだ。1年の時は同じクラスでは無かったし、黒神は能力者の授業に参加していなかったため、それ以外に出会う場所は無かった。

 その時には既に、何千回という実験を経験していたことになる。


「それでも、月宮は笑ってたのか……あの部室で、俺たちの前で。誰にも頼れずに?」

「逆よ。貴方の部活がどうこうは知らないけど、彼女にとってはその時間こそが支えだったのよ。そこで誰かに実験のことを打ち明ければ、必ず部活は崩壊する。だから、黙ってた」

「今日の朝、言われたんだよ。助けてって言ったら助けてくれるかって」


 朝影の予想が正しければ、絶対に壊したくないと思っていた心の支え、そこに属する黒神に助けを乞うたことになる。つまり、巻き込みたくなかった人間に実験のことを話してしまいそうになったということだ。


「そこまで、追い詰められてたのか」

「それも、逆よ」


 朝影は再び黒神の言葉を否定する。


「貴方になら打ち明けてもいい。そう思ったんじゃない?」

「……能力者になったばかりの俺に?」

「貴方、自分が周囲にどう認識されてるか覚えてる?」


 『英雄』。

 神原との戦いに勝利した彼を、メディアはそう呼んだ。


「だとしても、能力者としては月宮のほうがキャリアはある。俺はまだ経験が少ないんだぞ!」

「……まあ、そこは多分……」


 朝影には何かしらの予想があるようだが、決してそれを言おうとはしなかった。ニヤニヤしてるのが少し気にはなったが、黒神はそれ以上は聞かなかった。


「とにかく、彼女は貴方に助けを求めた。それは事実だし、今後どう動くかは貴方の自由。助けるも助けないも貴方が――」

「助けるさ」


 黒神は即答した。


「私のときも、そうやって即決してくれたのかな……」


 朝影の呟きはあまりにも小さな声だったので、黒神には聞こえていなかった。

 そして、件の少女が目を覚ます。

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