第一章 似すぎる姉妹(4)
朝影光は、退屈していた。
彼女が通っている学校は外界にあるため、通いたくても通うことが出来ない。なので、黒神が学校に行ってる間は話相手もおらず、暇なのである。
ベッドの上でゴロゴロと寝転がったり、何を食べるわけでもないのに冷蔵庫のドアを開けたりとしてみるが、やはり暇は潰せない。女の子らしく掃除でもしてみるかと思うが、黒神の部屋は特に散らかっておらず、やる必要性が見出せない。
「……服、買いに行こうかな」
ずっと制服姿でいるわけにもいかない。それに、黒神に言われてつい怒ってしまったが、やはり下着も買っておきたい。
朝影は出かける準備を始める。といっても、黒神がいつも買い物に使っているバッグを取って、自分の所持金を確認して、多少身なりを整えるだけなのだが。
(……不可解なことが多い。どうしてエデンは『楽園解放』をすぐに受け入れたんだろう。いや、それどころか首相までもが受け入れてる。あんなに対立してたのに……それに)
もっと気になることが朝影の頭の中にあった。
それが、コルンでの出来事である。
(黒神が私を庇ったとき、どうしてあの場にいた人たちはあんなに簡単に引き下がったんだろう。あの人たちが良い人で、黒神に恩を感じてたから引き下がったとも考えられるけど、それにしてもあっさりしすぎてた……)
第三者があの場にいて、何かしらの能力(恐らくは精神操作系だろうが)を使ったという線も考えられる。何にせよ、どこかの段階でもう一度この疑問にぶつかることになるだろう。それまでは気にしないようにしよう、と朝影は思った。
「えっと、鍵は……あったあった。ふん、別に盗られるものなんてないのに。このマンション、防犯対策はばっちりみたいだし」
愚痴を言いながら、朝影は外に出る。鍵を閉めたことを確認して、買い物へと向かう。
「ついでに、食材も買ってこようかな。さっき見たときあんまり無かったし」
まだ黒神が学校に行ってから1時間ほどしか経っていない。朝日の眩しさに手で目を覆いながら、朝影は歩く。まだ冬休みの学校が多いからか、朝影が向かった大通りでは多数の人間が行き交っていた。




