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第三章  死力の再戦(11)

 放たれた巨大な光線は、轟!! という音を響かせて標的に向かって真っ直ぐに進んでいく。

 既に黒神たちの行動を知っていた赤城は持てる力を全て使って、その場から飛ぶようにして離れる。それを追おうとした神原は後ろから迫る音に気づき、慌てて振り返った。

 だが、遅い。


(あ? 死……ぬ……?)


 認識は遅れた。よって、光線は打ち消されない!!

 直後、廃ビルの壁が粉砕され、ビル全体が揺れた。その衝撃と、赤城が天井と床に穴を空けたことそして神原が床を破壊したことが相俟っての揺れだ。


 幸い、床が崩れるところまではいかなかったもののさっきまで赤城が背にしていた壁は無くなり、神原が立っていたところには上から矢のように降ってきた瓦礫が堆積した。

 一気に風通しが良くなったビルで、数秒、静寂が流れた。


(勝った? 黒神の光線が直撃して、n勝った!?)


 舞っていた土ぼこりも消え去り、視界が確保される。

 だが、3人の視界の中に神原の姿は無かった。


「終夜……お前、なんつーか」

「た、確かに凄い反動ね。ちょっと吹き飛ばされたし」

「あ、ああ。これ、勝ったのか? 神原を、倒したのか!?」


 3人はそれぞれの都合で動くことが出来ていないので、近づくことは不可能だが、代わりに雄たけびをあげる。


「うお、おぉぉぉぉぉぉ!! 終夜、やったな!!」

「おお。おおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「…………」


 ビルの中は歓喜で包まれた。

 勝てるはずがないと思っていた相手に、勝つことができた。恐らく、神原は瓦礫の山の下に下敷きになっているのだろう。何にせよ、決着だ。


 『楽園解放』の隊長を倒した。

 その意味の大きさを一番よく知っているのは朝影だ。

 だからこそ、彼女だけは歓喜の中で僅かに残った疑問を払拭できないでいた。


(やった、のよね? でも、あの『楽園解放』の隊長が……?)


 しかし、ビルを破壊するほどの威力の光線をまともにくらって生きていられるとは思えない。なのに、


(消えない。疑問が、不安が、消えない)


「朝影、どうしたんだよ?」

「ねえ、あの瓦礫をどけて隊長の状態を確認しないと――」



 ガラッ、という音がした。



 まるで、『瓦礫をどけようとしている』音が。そして、その直後轟音と共に堆積していた瓦礫が四方八方に吹き飛んだ。


「――っ!!」


 土ぼこりが舞う。そして、その中にシルエットが浮かぶ。

 屈強な体。左腕は付け根から失われていて、大量の血が流れ出ている。

 土ぼこりの中から現れた彼の表情は、苦痛に歪んでいた。そして、その表情の中には激しい怒りが含まれている。


「そん、な……」


 その男は――神原嵐は立ち上がった。荒い息を吐きながら、咆哮する。


「テ、メェら……ふざけてんじゃ、ねェ、ぞォォォォォォォォォッ!!」


 彼は光線が当たる直前、能力による打消しは不可能だと悟り、体を捻って回避を試みた。そして、左腕を犠牲に直撃は免れ、命を落とさずに済んだ。

 神原は、真の意味で怪物だ。


「くそっ、もう動けないぞ!?」

「私も……もう……」


 赤城と朝影は共にボロボロである。故に、戦うことはできない。

 だとするならば。


「俺が止める。俺が、神原を倒す」

「誰でもいいんだよ……どォせ全員殺すんだからなァ!! 早く来いよォ、クソガキどもがァァァァ!!」


 片腕を失ってもまだ動き続ける怪物に、どこまで戦えるかは分からない。だが、ここまで来たのだ。赤城と朝影の努力を無駄にするわけにはいかない。


 黒神は、神原に向かって突進した。


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