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第三章  死力の再戦(10)

「今のは、何をしやがッたんだ」

「俺も自分の能力は使いこなしてる方でね。炎のコントロールなんか結構得意なわけよ」


 ちょうど、Uの字を描くように赤城は炎を放出した。だから、下の階から炎が噴出してきたのだ。もっとも、本当は神原の体に直撃するはずだったが、計算通りにはいかなかったらしい。


「そォか……ま、もォ関係ねェよな。これ以上は撃たせねェ」


(万策尽きた、か。そろそろ終夜も回復した頃だろ。カッコつけた割にはって感じだな)


 だが彼は、黒神のいる方を見て力を抜いた拳を、もう一度握り締めた。


「死ね、能力者」







 赤城が下の階に炎を放つ直前、黒神は『氣』を右手に集中させていた。


「結構反動が大きいからな、頼むぞ」

「それ、ボロボロの女の子に言うこと?」


 黒神の背中を朝影はボロボロの両手で抑えていた。彼らの目的は、『氣』の光線を放つことだ。

 神原嵐の『無効化』の弱点、それを突くために。


「チャンスは一度しかないわ。隊長が、貴方の親友との戦いに集中してる今しかない」

「……行くぞ」


 光線を放つ体勢になった直後、下の階から突き抜けてきた炎が神原の背中をかすめていった。それを見て、朝影は自分の仮説に確信を持つ。


(やっぱりそうなんだ。隊長の弱点は――不意打ちだ!!)


 厳密に言えば、神原の認識外からの攻撃。それだけは能力の攻撃であったとしても打ち消せないのだ。

 逆に言えば、彼が認識している(平たく言えば、視界に捉えている)能力攻撃はすべて打ち消される。

 だから、公園での戦いの時、黒神が放った光線の1発目は当たった。あの時、神原は黒神に背を向けていたし、勝利を確信していた。だから油断が生まれ、光線に気づかなかったのだ。



(確かに、隊長は黒神の親友に対して殆ど油断してない。しかも、今の1発で余計に集中してる。でも……私たちには完全に隙を見せてる!!)


 今しかない。このタイミングを逃せば、二度とチャンスは巡ってこないだろう。

 神原は赤城との戦いに集中していて、尚且つ黒神たちに対して背を向けている。

 赤城もさきほどの一撃で神原の弱点に気づいたらしい。そして、黒神の方を見てその意図も察したようだ。彼は一度は力を抜いたように見えたが、迫り来る神原の攻撃を寸でのところで避けた。


「焔……ありがとう」


 今回は、外さない。

 掌を神原に向け、そして『氣』を――




 ――放つ。

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