第三章 死力の再戦(7)
『永遠の炎』。
それが赤城焔の能力の名前である。火属性能力の中でも上位クラスに属する。
彼が得意とする戦法は、中距離での戦闘だ。
「燃えろ」
何の言葉も交わさない。赤城は右手を前に突き出し、纏っていた炎を神原に向かって放出する。
「あのなァ……」
だが、その炎は神原に触れた瞬間に消えてしまった。
「……やっぱり、能力を打ち消す能力か」
「分かッてんなら無駄なことすんじゃねェよ!」
神原が赤城に向かって駆け出したのと同時に、赤城も駆け出す。
(接近戦……苦手なんだよな)
神原が振り回した右手を潜り抜け、赤城は部屋の奥へと走っていく。黒神と朝影の場所を出来るだけ安全にするためだ。
(この部屋が広くて助かったよ)
「逃げてんじゃねェよ能力者ァ!!」
ここで、赤城を追うのを諦めて、神原が黒神を攻撃していたら元も子も無かった。これも、賭けだったのだがどうやら赤城はその賭けに勝ったらしい。
「ふー、さてどうするか……な!!」
赤城は再び炎を放出する。だが、今度は神原を狙ったものではない。狙ったのは、天井だ。
「ッ!! おいおい、生き埋めにでもする気かァ!?」
能力が通じないのなら、能力ではないものでダメージを与える必要がある。だから彼は天井を破壊し、降ってくる瓦礫を利用しようとしたのだ。
「甘いんだよ」
だが、神原はそれをものともせずに突っ込んでくる。
「――マジかよ。どんだけ鍛えてるんだ!?」
瓦礫は当たっているものの、多少顔から血が出ているだけで、特にダメージは与えられていないようだ。
神原との距離が縮まる。
「その手の戦い方は何回も見てきた。俺に勝つためにはそれしかねェからな。だから、見飽きたんだよ」
「くっ、畜生!!」
神原は自分に向かって降ってきた瓦礫を1つ握り、赤城の顔を目掛けて投げた。当然、赤城は炎の放出でそれを止めたが、神原の狙いは別だ。
赤城が気づいたときには、神原は後ろにいた。
「なっ!? いつの間に!!」
「気づかなかったのかァ? 炎で視界が塞がッてたもんな、仕方ねェかァッ!!」
振り返った時にはもう遅い。
赤城が纏っていた炎は打ち消され、神原の拳が赤城の顔面にめり込む。
「が……あぁぁぁぁぁぁ!?」
赤城の体は瓦礫が落ちている場所へと叩きつけられた。その衝撃で、いくつかの瓦礫が背中に突き刺さる。
「来いよ能力者ァ……そのために来たんだろォ!!」
(くそっ、痛い……こいつ想像以上に強い。どうすれば良いんだ!?)
立ち上がった赤城の膝に、神原の蹴りが刺さる。
「ぐ、あ……っ!!」
体勢を崩した赤城の頭を片手で掴むと、神原は彼の体を軽々と持ち上げ、背面へと投げ飛ばす。
「こんなもんかよ。まァ、あいつよりはタフかもしんねェけどよォ……能力者としては失格じゃねェの?」
「……畜生、へっ、カッコ悪いな」
先ほどの蹴りで膝の辺りの骨が折れてしまったらしい。もう左足はほぼ使い物にならない。
だが。
「この距離は、俺の距離だ」
赤城はもう一度炎を纏うと、それを左手に集中させる。
「消えない炎、それが俺の売り文句なもんでね」
「だが、その炎も消えるさ。俺の能力でな。それとも、またどこかを破壊するかァ?」
「これでも、打ち消せるのか……よ!!」
そして、炎を放つ。今度はさっきのものとは比べ物にならない威力だ。
軸である左足が機能しないため、威力は本来よりも減少しているがそれでも放たれた炎の大きさは桁違い。下手をすれば、このビルごと破壊しかねないほどに。
「そう来たかァ……無駄だッてのに」
巨大な炎を、神原は当然のように打ち消してみせた。だが、赤城の狙いはそれではない。
「余裕こいてんじゃねえよ!」
瓦礫。
背中に刺さっていた瓦礫を抜き、炎に続く形で投げていたのだ。
「あ――ッ!?」
鈍い音が響いた。そして、左目に激痛が走ると共に神原の視界が狭まった。
「あァァァァァァァッ!?」
神原は即座に目に突き刺さった瓦礫を抜き、床に叩きつける。その表情からは余裕が消えた。
「テメェ……ふざけやがッて!!」
「さあて、勝負はここからだぜ神原!!」




