第三章 死力の再戦(5)
ホープからカントリーまでは走って約30分ほどかかる。こんなことなら自転車で来るべきだったと後悔している黒神と赤城。
「戦う前に体力が無くなるぞ……」
「とにかく着いたからいいんだよ……終夜、デバイス」
少し息を整え、黒神はデバイスを取り出す。そこには、カントリーの地図が表示されていた。
「かなりの数の廃ビルがあるんだな」
「ああ、昔はホープ以上の大都市だったらしいからな」
「それで、どうやって探すんだ?」
圧倒的なビルの数。頂上が崩れて上からは内部が丸見えになっているものもあれば、根元から傾き今にも倒れてきそうなビルもある。
この町では過去に一体何があったのだろうか。
何があったにせよ、これだけのビルがあるならばピンポイントで朝影を探し出すのは難しい。
「片っ端から当たっていくしかないだろうな」
「は!? でも焔、確かここは……」
「ハズレを引いたら死ぬ、かもな」
ぶっそうなことを言っておきながら、赤城は高らかに笑った。
「焔お前……」
「冗談だよ、方法はある。確実とは言えないけど」
そう言うと、赤城は自分のデバイスを取り出した。彼はデバイスを操作して、あるアプリを起動する。
「これって、デバイスサーチングってやつか?」
「ああ、これがあれば建物の外からでも、その建物の中に何人デバイス持ちがいるかが分かるんだよ」
元々は警察や救助隊が使用するアプリなのだが、建物外からの通報の際に中にいる人数を報告できるというメリットから、一般にも配信されたアプリだ。
「でも、あの2人はデバイスを持ってないんだぞ?」
「だからこそ、だ。ここは能力者集団の基地。相手にのっとられないように見張りくらい残してるはずだ。つまり、逆に反応の無いビルが怪しいってことだ」
「そういうことか! よし、じゃあ……」
「おう、行くぞ!!」
結局のところ、1つ1つビルを当たっていくことに変わりは無いのだが、それでも中に入らなくていいぶん、安全である。
数分後、彼らは遂にデバイスの反応が無いビルを見つけた。
「ここに……?」
「多分な。単に人間がいないってだけかもしれないが、入るしかない」
黒神は、自分の体が震えるのを感じた。武者震いではなく、恐怖からくる震えだろう。
これから、あの神原と再び戦う。そのことがより現実味を増してきたのだ。
(勝てる可能性は低い。修行なんかしてないから、昨日戦ったままの実力差だ。でも、確かに昨日、一発は当たった……可能性は低いけど、勝てないと決まったわけじゃない!)
「終夜、行けるか?」
黒神は深呼吸をする。そして、自分の頬を両手で叩き、
「行こう! 朝影を助けるんだ!!」
2人の少年は、ビルの中へと足を踏み入れる。これで空振りだったら恥ずかしいわけだが、2人にはそんなことを考えている暇は無かった。




